アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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※今回は流血表現などが多くなります苦手な方はブラウザバックです。
それでもO.K.と言う方はどうぞ。




第二十四星 見いだした物ーdiscoverー

 

 

フィアside

 

デューカリオン後部ハッチ…伊奈帆達がアセイラムを連れて去って行った後、カームは傷ついたフィアの手当てをしていた…するとフィアが。

 

「カーム…痛み止めを頼む…一番きついやつをな…」

 

「おい…まさかまだ出るつもりなのかよ…こんな体で…」

 

フィアの言葉にカームは無茶だ…そう言おうとした時、腕を強く掴まれた…これ以上ないと言っていいほど真剣な顔で…。

 

「頼む…私は後悔したくないんだ…」

 

「……分かったよ…待ってろ耶賀頼先生呼んでくるから」

 

カームはフィアを見て何を言っても無駄だと判断したのか耶賀頼先生を探すために立ち去る…それを見たフィアは体を動かす。

 

「う…グッ……」

 

指一つ動かすにも激痛が走る…数ヵ所に及ぶ被弾箇所はフィアの体を蝕みフィア自身もまともに歩くことすら出来ない事は分かっている…しかし彼女には守りたい者がいる…忠誠を誓った人が……。

 

「グッ…アッ……」

 

「おい!何してんだよ!」

 

「そんな怪我で!」

 

激痛の中、フィアはアセイラムの事を思い何とか立ち上がるとちょうどカームと耶賀頼がやって来て慌ててフィアを支える。

 

「こんな体で無茶ですよ…」

 

「無茶は承知…痛み止めを……」

 

フィアの有無も言わせない目に耶賀頼は冷や汗をかき、仕方が無いと…渡すとすぐに注射を打ち体を少し動かす。

 

「少し引き攣るが問題ない…」

 

「フィアさん…」

 

「フィア……」

 

苦しそうに顔を歪めながらも体を確認しユキの置いていったアレイオンに向かうのを耶賀頼とカームはただ見守るしかなかった。

 

ーーーー

 

フィアは軋む体を無視してアレイオンを揚陸城の中心部に向かわせる。

 

「戦術データリンク……各機の交戦状況を確認……」

 

フィアはモニターに映る多数の反応を一瞬で解析すると韻子のアレイオン、マスタング11の反応と火星のカタフラクトの反応。

 

「この火星の識別コードは…ゼダス……マリーンか!」

 

フィアは韻子が追いつめられているのを察するとアレイオンの飛行ユニットを稼働させて交戦ポイントに向かう…するとそこには予想通り追いつめられたアレイオンと止めを刺そうとするゼダスの姿があった。

 

「止めろ!」

 

フィアは叫ぶと持ってきたグレネードランチャーを構えてゼダスに撃ち放つ…するとグレネードはゼダスの背中に直撃しこちらに気付くと回避運動を行う…韻子から離れるようにグレネードを撃つと通信から韻子の声が聞こえてきた。

 

『フィア!』

 

「韻子!無事か!?」

 

フィアは韻子の盾になるように立つとゼダスはゼダスソードを構えて対峙する。

 

『フフフッ…やっと来たか…フィア!』

 

「マリーン…やはりザーツバルム伯爵だとはな…だが…こうなった以上……殺す」

 

『ッ!』

 

ゼダスのコックピットの中にいても今まで感じたことの無い程の殺気にマリーンは全身に鳥肌がたつのが分かった…自然とゼダスが一歩下がってしまうがマリーンにも譲れない物がある。

 

『フッ…フィア…お前の忠誠は知っている……この計画に立ち塞がるのも薄々分かっていた…』

 

「何故この様な事を!姫様さえ居ればヴァースは生まれ変わる!何故それが待てない!」

 

『そんな僅かな可能性より!私はより確実な方法を選んだだけだ!それの何が悪い!なぜ悪いんだ!』

 

「お前の言い分も分かる…だが姫様は殺させはしない!」

 

マリーンとフィアの話は平行線を辿る…お互いが信じる者の為に戦う……その点に置いてなにも違わない筈の二人は対峙しフィアはマシンガンをマリーンはゼダスソードを構える。

 

『もはや言葉など無用……』

 

「騎士なら騎士らしく……」

 

『「勝って証明してみせる!!」』

 

お互いがしばらく対峙し一瞬の沈黙が流れる…最初に動いたのはマリーンだ……ゼダスの機動力を活かし接近するとゼダスソードを振るうがフィアのアレイオンはギリギリの所で避けるとマシンガンを構える。

 

「甘い!」

 

『ナッ!!…グァ!!』

 

マリーンはマシンガンの弾丸を避けようと行動するがそれを予測していたようにマシンガンに備え付けられたグレネードがゼダスの頭部に直撃した…コックピットが頭部にあるゼダス……その着弾の衝撃はマリーンに直に伝わり内臓がシャッフルされるような感覚に陥る…制御を失ったゼダスは揚陸城の装甲を突き破り内部通路に倒れる。

 

『あ…あぁ……』

 

「う…グボッ!!」

 

ほんの一瞬だけ意識を失ったマリーン…決定的な隙を得たフィアだがゼダスソードの一閃を避けるためにアレイオンを急加速した為に発生したGはフィアの応急処置で塞いでいた傷口を広げ吐血する…その様子を見て韻子が声をかける。

 

『フィア!』

 

「来るな!韻子は姫様を頼む!」

 

『でも!』

 

「信じてくれ…」

 

『……分かったわよ!終わったらたくさん奢って貰うんだから!!』

 

左腕を失った韻子のアレイオンはゼダスが突き破った穴とは違う穴から中心部に侵入し叫びながら消えていくのだった。

 

ーーーー

 

伊奈帆side

 

揚陸城降下地点…そこには子機や飛行ユニットを合体させ伊奈帆のスレイプニールの倍の大きさはあるであろうディオスクリアが姿を現していた。

 

『ディオスクリア…見参!』

 

「クッ……」

 

伊奈帆はマシンガンをディオスクリアに向けて撃ち放つが弾丸はまるで吸い込まれるように消されていく…この能力は間違いなく伊奈帆が最初に戦ったニロケラスと同じ次元バリアだった。

 

「弾丸が!?」

 

『フッ…次元バリア、アクティベート…エネルギージョイント接続、フィールドジェネレーター始動…ブレードフィールド展開……抜刀!』

 

伊奈帆が驚くのを見てザーツバルムは静かに笑い、右手に装備されたビームサーベルを起動させスレイプニールに向けて振るうと伊奈帆は何とか避ける。

 

「あれは…フィアの言っていたアルギュレの…」

 

伊奈帆はディオスクリアから発せられているのがビームサーベルだと悟り戦慄する…次元バリアにビームサーベル…今まで相手にしてきた機体とは違いこの機体は複数の能力を備えている。

 

『こちら…オルデンブルクリーダー、マスタング22援護する!』

 

「駄目だ!退避して!」

 

伊奈帆が冷や汗をかいているとちょうどディオスクリアの後ろに居たオルデンブルク小隊が伊奈帆の援護の為に攻撃を開始する…それを見た伊奈帆は焦りながら叫ぶがディオスクリアは標的を背後に居たオルデンブルク小隊に変更し次々とアレイオンを潰していく。

 

『飛べ!我が眷族よ!』

 

「ッ!」

 

ザーツバルムの声と共にディオスクリアは腕を構えロケットパンチを発射する…ロケットパンチはオルデンブルク小隊を壊滅させ伊奈帆にも襲いかかる…それを避けた伊奈帆だがディオスクリアは再び抜刀しビームサーベルを振るう。

 

『……フッ』

 

「………」

 

ディオスクリアの圧倒的な性能に伊奈帆は僅かに顔を歪ませザーツバルムは静かに笑うのだった。

 

ーーーー

 

フィア&マリーンside

 

 

『く…抜刀!』

 

「……」

 

マリーンのゼダスが立ち上がり衝撃で若干歪んだゼダスソードを投棄し右手のビームサーベルを構え突撃して来る…一撃目は何とか避けるがマリーンは左手のビームサーベルを抜刀しながら二撃目を入れる。

 

「ッ!」

 

流石のフィアも二撃目は避けきれずに右腕を斬り飛ばされる…しかしフィアは右腕を斬り飛ばされる前にマシンガンを上に投げ、斬り飛ばされた後に左手で受け取ると撃ち放つ。

 

『私はぁ!ザーツバルム卿の為にぃ!』

 

「クソッ!!」

 

マリーンは叫ぶと突っ込むがゼダスの動きには隙が無い…更にゼダスとアレイオン…のその圧倒的な性能差は流石のフィアも埋めきれる物では無く…マリーンは銃弾を回避しながらフィアのアレイオンを追いつめていく…フィアは揚陸城内に移動し逃げる…回避スペースが狭い通路だがマリーンは巧みに回避すると隙を見つけてフィアを蹴り飛ばす。

 

「ゲボッ!ゲボッ!私も姫様の為にこの命を捧げると決めたのだ!」

 

『王族の為に!アセイラム姫殿下の為にお前は何故そこまで戦えるんだぁぁ!!』

 

蹴り飛ばされた衝撃で吐血しながら叫ぶとマリーンはゼダスでアレイオンを殴り続ける、頭が吹き飛び所々装甲がボコボコになるがフィアはバックアップのナイフを取り出しゼダスの腹部ビーム砲に突き刺す。

 

『ぐわぁぁぁ!』

 

元々ゼダスは素早くビームを撃てるようにある程度エネルギーを蓄えて行動している…そのエネルギーパックが腹部ビーム砲と隣接していた為に爆発を起こした…頭部にあったコックピットは直接的なダメージは無かったが一部システムが暴走してコックピットに小さな爆発が起きる。

 

『ゲボッ!……ウッ…』

 

破片が腹部に刺さり苦しそうに呻くと頭から血を流しマリーンはノイズが入ったモニターを睨みつける。

 

『ウッ…まだ…まだ……』

 

「ヴァースには…姫様が必要だ…」

 

お互い満身創痍…正直言って二人とも…特にフィアは即刻、治療を受けなければならないレベルである…たが二人は退かない。

 

『ザーツバルム卿の夢を…悲願を……叶…え…るまで……は』

 

マリーンは体中に激痛が走る中、ザーツバルムの事を思い浮かべる…娘になりたかった……親の愛をまともに受けてこれなかったマリーンにとっては本当の親のように接してくれたザーツバルムは生きる希望だった…”娘”になれないなら…せめて誇れる”部下”に…マリーンはほぼ大破したゼダスを動かしビームサーベルを形成させる。

 

「姫様……」

 

フィアはいつもより少し白くなっている手を見て笑う…荒れ果てた土地の中で過ごしてきた…絶対的な王族、広がり続ける格差社会、それを見ようとせずにただ地球に恨みを向ける一般民衆…フィアは自身の母星を冷ややかな目で見ていた…だがそこに現れたのは優しさに溢れ、誰に対しても優しい涙を流すアセイラムの姿だった…その優しさにフィアは希望を見た…絶望したヴァースの未来を…フィアは力を振り絞りアレイオンを立たせる…。

 

『ここで終わりにするか!続けるか!フィア!!』

 

「そんな決定…権が…お前にあるのか…」

 

お互いが覚悟を持って立ち上がるが正直、立つのがやっとのアレイオンとほぼ大破状態だがビームサーベルを形成出来る余力のあるゼダスでは既に勝負は着いているのと同じだった。

 

『返事のしようではここで命を……』

 

「悪いな…」

 

マリーンは機体状況から例え少しだとしても戦闘を避けたかった…それを分かっていたフィアは退くわけにはいかない…そしてフィアはマシンガンをゼダスに向け発砲する…近距離でも関わらずマリーンはその攻撃を避けてビームサーベルをフィアに突き立てるために振るうが背後から強力な衝撃が襲う。

 

『なんだ!?』

 

マリーンはすぐさま体勢を立て直そうとするが周囲から襲い来る衝撃で上手くいかない…警告音と共に揚陸城の見取り図が出てくるとマリーンは驚愕した。

 

『火薬庫!?まさか!逃げていたのは私を誘導するため!?』

 

「今の私には…これしか出来なかった…」

 

誘導されていた事を知ったマリーンは叫び、サーベルを突き刺そうとするがフィアはアレイオンの腕からアンカーを出して拘束し逃げられないようにする。

 

『フィアぁぁぁぁぁぁッ!』

 

「姫様…」

 

マリーンの叫びとフィアの静かな呟きは揚陸城全体を震わす爆発と共に掻き消されるのだった。

 

 

 






どうも砂岩でございます!
今回、一期分の最後になる予定だったのですがちょっと長くなりそうなので切りました…すいません。
次回はちゃんと終わりますので…。
では最後まで読んで頂きありがとうございました!


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