アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第二十一星 迫り来る暗殺者ーApproach of assassinー

 

 

 

ノヴォスタリスク地球連合本部デューカリオン専用デッキ…そこには何とか辿り着いたデューカリオンが補給を受けていた…その心臓部と言えるアルドノアドライブの部屋には伊奈帆が静かに光り輝くアルドノアを見つめていると後ろから声を掛けられた。

 

「…アルドノア」

 

「これが全ての始まり…ありがとうございます…伊奈帆さん…私の命を助けて貰ったそうですね…」

 

「いえ…」

 

「伊奈帆さんに助けて頂いたのは…これで何回目でしょう…」

 

「さぁ…助けたつもりはないですし…」

 

伊奈帆の言葉にアセイラムは驚くが伊奈帆はいつもの調子で淡々と話そうとすると…アセイラムの後ろに居たフィアが目に入る…すると伊奈帆は『戦争ですから…』と言う言葉を飲み込んで話す。

 

「結果的にそうなっただけで…自分は自分を守っただけですから…」

 

「いい人ですね…いい人です…」

 

これが前回フィアに見破られた照れ隠しの改良版だが案の定フィアは笑い、アセイラムにも見破られてしまった…そんな雰囲気にエデルリッゾも悔しそうだが受け入れる。

 

「これからも…これからも友達で居てくれますか?」

 

「…はい」

 

アセイラムは一人前に出て伊奈帆に手を伸ばすと伊奈帆は了承したように手を伸ばし握手を交わす…するとアセイラムが小さな声で伊奈帆に囁く。

 

「どうか…フィアをよろしくお願いしますね…」

 

「え…」

 

「あんなに楽しそうに笑えるようになったのは貴方のお陰ですから…」

 

「……」

 

「姫様…そろそろお時間です……」

 

アセイラムのまさかの言葉に伊奈帆は驚くが彼女はその反応を見て微笑むとエデルリッゾが時間を知らせ軽く会釈しながら出口に向かう。

 

「それでは…」

 

「あぁ…じゃあな…伊奈帆……」

 

「フィア……」

 

アセイラムに続いて部屋を出ようとしたフィアは伊奈帆に止められ立ち止まり振り返る…すると伊奈帆は若干だが悲しそうに話しかける。

 

「また…」

 

「あぁ…またな…」

 

フィアはそう言うと部屋を後にした…そしてアセイラムに追いつくと質問をする。

 

「姫様…伊奈帆と何を話されたので?」

 

「フフッ…秘密です♪」

 

「え?」

 

心底楽しそうに言うアセイラムを見てフィアは惚けるとアセイラムはそのまま楽しそうにデューカリオンの廊下を歩くのだった。

 

ーーーーーーーー

 

「私は…アセイラム・ヴァース・アリューシア…ヴァース帝国皇帝レイレガリア・ヴァース・レイヴァースの孫娘、第一皇女です…祖国ヴァースに告げます…この無意味な戦争の即時停戦を求めます…私は無事…生きています…私の命を狙ったのは地球人ではありません…地球侵略を求める軌道騎士の策略です…地球人に罪はありません…今すぐ戦争を止めて下さい…そして地球と和平を結んで下さい…どうか…この不幸に終止符を…」

 

地球連合本部の大きな会場からアセイラムの声はは月基地にレーザー通信で送られる…これで全て丸く収まる…このアセイラムの演説は地球連合本部にも流れており聞いていた者、全てが安堵の表情を浮かべる…当然それはフィアも同じで放送室で腕を組み、壁にもたれながら耳を傾ける。

 

「……これで…」

 

「エルスート卿!!」

 

「何か?」

 

「どうしたのですか?フィア?」

 

不思議そうな顔をしているアセイラムが部屋に入って来ると、状況が分からずにフィアに問うと同時に地下基地全体に警報が鳴り響く。

 

「姫様!敵襲です!」

 

「え?……きゃ!」

 

フィアの叫びと同時に揚陸城落下の衝撃が地下の部屋まで伝わり部屋を揺らすのだった…。

 

ーーーーーーーー

 

その頃、地上では揚陸城がその花のような姿を現す…地球側は地下から出したミサイルランチャーで対応するも大気圏を突破できる揚陸城にとっては痛くも痒くも無かった。

 

「フッ…無駄なことを……」

 

「ザーツバルム卿…出撃準備完了しました…」

 

『攻撃開始…』

 

それを見たザーツバルムは一人、呟くと揚陸城からもミサイルが発射される…これはバンカーバスター(地中貫通爆弾)と呼ばれる物でその名の通り地下に深く掘り進みそこで爆発する物でそのミサイルは岩盤とシールドを貫通し地下にあるシェルターに被害をもたらす…それを見たザーツバルムは叫ぶ。

 

「出撃!」

 

「出ます!」

 

するとザーツバルムのディオスクリア(素体)と子機、マリーンのゼダスが揚陸城から飛び立ちバンカーバスターが開けた穴から侵入する。

 

「マリーンはその穴から入れ…我はここから入る…」

 

「ハッ!」

 

マリーンはザーツバルムの指示通り二手に別れゆっくりとバンカーバスターが開けた大穴を降下していく。

 

ーーーー

 

地球軍side

 

マリーンが降下していく先には既にアレイオンの部隊が展開しており包囲陣形が整って居た。

 

『スイング小隊配置よし』

 

『カールラ小隊配置よし!』

 

『震源…なおも接近中……会敵まで四十秒…全機!戦闘に備えよ!』

 

『『了解!!』』

 

『……来るぞ』

 

『さぁ……宴を始めよう……』

 

部隊長の言葉に全機が大きく空いた穴に向けて銃口を向ける…するとオープン回線で敵らしき声が聞こえてくる…その声はまだ幼く、少女だとよく分かった。

 

『撃てぇぇ!!』

 

部隊長は姿を現した途端、攻撃許可をだしアレイオンは各々ゼダスに向けて発砲するがゼダスは急加速し床に降り立つと所持していたゼダスソードで近くに居たアレイオン四機を一瞬にして切り刻むのだった。

 

ーーーー

マリーンside

 

「フフッ…脆弱な…」

 

マリーンはそう呟くとアレイオンを切り刻み更に機体を加速させる…アレイオンはマシンガンを撃ち放つが敵が迫り軽いパニック状態に陥っている者の弾など当たる訳も無く胴体を切り裂き手のひらに内蔵されたビームマシンガンで囲んでいたアレイオンを次々と潰していく。

 

「フフッ…ハハハハハ!!」

 

光速で移動するエネルギー弾をアレイオンは避けられる筈も無く数を減らし、ついに全滅する…その爆煙と炎の中、マリーンの笑い声と共にゼダスはカメラを怪しく光らせるのだった。

 

ーーーー

 

フィアside

 

各所で爆発を起こし施設の一部が崩壊する…それはアセイラム達がいた場所も一部崩壊してしまっていた…その瓦礫の中、フィアは瓦礫を退けながら立ち上がる。

 

「姫様…ご無事で…」

 

「ありがとう…フィア」

 

「ありがとうございます…」

 

崩壊する部屋の中、フィアは身を盾としてアセイラムとエデルリッゾの上に覆い被さり瓦礫から守ったのだ。

 

「ここは危険です…移動した方が…姫様…」

 

フィアはすぐに避難するように言うがアセイラムの悔しさと無念が入り混じった顔を見て黙り込む…エデルリッゾはそれでもアセイラムの為に進言する。

 

「姫様!フィアの言う通りです…お早く移動を……」

 

「暗殺は偽りだと明かしたのに…どうしてまだ…やはり初めから戦が目的…暗殺はただの言い訳…私の命など…初めからどうでも良かったのですね……」

 

「そんな事ありません!姫様はヴァース帝国の大切な…」

 

「では何故ここが攻撃を受けているのですか!」

 

今までに無かったアセイラムの怒りにエデルリッゾとフィアは驚くがフィアはエデルリッゾから拳銃を貰いチェックを始める。

 

「フィア…何を…」

 

「行きましょう…姫様…我々にはまだ出来ることがある筈です…向こうが全力で殺しに来るなら…私が全力で姫様をお守りいたします…」

 

「私に出来る事…行きましょう…デューカリオンに…フィア…通信機を…」

 

「はい…」

 

決意したようにアセイラムはフィアから通信機を貰い受けると通信をデューカリオンに繋げる…通信はユキに繋がった様で伊奈帆に変わって貰いアセイラムが話す。

 

「私もお手伝いします……」

 

『セラムさん…』

 

「ヴァースの兵器は全てアルドノアによって動いています…揚陸城も例外ではありません…」

 

アセイラムが話している内にエデルリッゾは車を見つけて発進の準備をする…フィアは少し居なくなったと思ったら何やら物騒な物を車内に入れる…それを見たエデルリッゾはフィアの後ろ姿を見て心の中で呟く。

 

(キレてる…)

 

「…ありがとうございます」

 

通信を終えたアセイラムは悲しそうな顔をする…。

 

「ヴァースの皇女たるこの私が…ヴァースの民を敵にまわすとは……」

 

「この戦はヴァースの本意ではありません…全ては暗殺者の策略…」

 

「いえ…全ては私の…私の不徳…急ぎましょう……」

 

(マリーン…もし貴様が暗殺者だとしても…私はお前を殺す…)

 

アセイラムの姿を見てフィアは悔しそうに顔を歪め強く手を握りしめるのだった。

 

ーーーー

 

「出口です!」

 

車に乗ったアセイラム達は敵に見つからずにデューカリオンに向かいドックの入り口に辿り着き車を全速力で走らせる…運転はエデルリッゾが務めており本来ならフィアがする所だがフィアにはやることがあった。

 

「見えました!デューカリオンです!!」

 

「アセイラム姫殿下です…」

 

「ロケット砲!グワッ!!」

 

車が全速力で駆けるのを見た兵士達は車内にアセイラムが居るのを確認すると隊長がロケット砲の準備を指示するがそこに何かが打ち込まれ隊長はもちろんそばに居た兵士も爆発に巻き込まれた。

 

「……姫に仇なす者は…私が殺す」

 

「恐くない!恐くない!」

 

フィアは車の屋根で着弾を確認すると筒を捨ててそばに置いてあったRPG7を持ち上げて構える…総重量十キロのRPG7を次々と撃ち込む…沸点が振り切れたフィアはいつも以上に切れ目で黙り込み全身から殺気が溢れていた。

 

「チッ…切れたか…」

 

フィアは舌打ちをするとアサルトライフルを取り出しまだ残っている所に撃ち始めるが、ある程度RPG7で片付けはしたとはいえまだまだ兵士は残っていた…そこからロケット弾や銃弾が飛来し迎撃していたフィアの肩に当たる。

 

「ッ!」

 

「フィア!」

 

その様子を見ていたアセイラムは心配する…フィアの服は元々、護衛の為に来ただけあって防弾、防刃仕様になってはいるが衝撃が消せる訳が無い…しかし彼女は自身の主を安心させる為に笑いかける。

 

「うわぁぁ!!」

 

するとロケット弾が飛来しエデルリッゾが叫ぶと横からアレイオンがロケット弾を撃ち落とす。

 

『生きてる?』

 

「ライエか…」

 

「ライエさん!」

 

『借りは返すわ…ここは私が…』

 

ライエはそう言うとアレイオンを操り残っている兵士に向けて牽制の攻撃をする…その隙に車は兵士が居る真横を通って行くと同時に手榴弾をニ、三個投げ捨てるのだった。

 

「来た来た!フィア!お姫様!こっちこっち!!」

 

何とかデューカリオンに接近したフィア達は解放された後部ハッチに近づきそこに居たカームが手を振り大きな声で呼びかける。

 

「姫様」

 

「ありがとう…」

 

「ご無礼!」

 

「え?きゃ!」

 

フィアは屋根のハッチからアセイラムを出すとエデルリッゾが更に後部ハッチに接近し、フィアがアセイラムを抱えてデューカリオンへ飛び移りカームの元に降り立つ。それを見たエデルリッゾはフィアに向かって叫ぶ。

 

「行って下さい!」

 

「エデルリッゾ!」

 

エデルリッゾの言葉にアセイラムが泣きそうな顔で叫ぶがエデルリッゾは気丈に振る舞い叫び続ける。

 

「行って下さい!早く!フィア!姫様を頼みます!」

 

「ありがとう…エデルリッゾ…」

 

「分かった…すまない…」

 

エデルリッゾの意志を汲み取った様に後部ハッチがゆっくりと閉じられ車が離れていくのをアセイラムとフィアは黙って見送るのだった。

 






どうも砂岩でございます!
なんかグダグダになってしまってすいません…。
ついにやって来ました!第一次最終決戦の開幕ですね!今回はザーさんだけでは無くマリーンのカタクラフトも居ますしどうなることやら…。
さて次回は降下作戦メインですね!
では最後まで読んで頂きありがとうございました!


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