アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
『誠実なる同胞であり、我が愛すべき家族アセイラム・ヴァース・アリューシアはその死を持って我々に真実を伝えてくれた』
ヴァース帝国皇帝直々の演説に火星騎士達は耳を傾けある者は敬愛するアセイラム姫の死を悼み、ある者は密かに微笑んだ…。
『その敬虔なる行いによって我々を目覚めさせてくれた…これは正義の行使である!我らの誠意を踏みにじり増長を重ね…暴虐を尽くす地球への天罰である!』
フィアはその演説を聞きながら驚きを隠せないアセイラムを見て手を強く握りしめる…目の前に居るというのに何も出来ない…ただ聞くだけしか出来ない自分を酷く憎かった……そして止めようのない火種が今地球に降り注ぐ。
『ヴァース帝国皇帝、レイレガリア・ヴァース・レイヴァースの名において…改めて戦線を布告する!地球を攻撃せよ!我が血族に仇なす者を…焼き払え!!』
そして火星と地球は正式に戦争を開始したのだった。
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「スレイン・トロイヤード…我が大義に仇をなす者か…」
「ザーツバルム卿…」
感慨深くスレインの名を呟くザーツバルムを見てマリーンは少し心配するがザーツバルムは黙りながら謁見の間を出る。
「皮肉だな…トロイヤード博士…」
そんなザーツバルムの背中を見てマリーンも黙って謁見の間を出るのだった。
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「正式に宣戦布告……か…休戦するって話だったのに…」
「ずっと戦争は続いていたんだ…」
「鞠戸大尉…」
演説を聞いていた韻子が悲しそうに呟くと後ろにいた鞠戸が話し始める。
「それを皆で知らないフリしていただけだ…」
「……」
確かに鞠戸の言う通りだ…フィアはそう思った…戦争が完全に終わっていたならのシナンジュは開発される必要は無かったし軌道騎士の揚陸城が地球のサテライトベルトにいる必要も無かったのだ。
「そのジジイが言う通り…あのお姫さんが死んで…皆の目を覚ましてくれただけだ…」
「違います!私は!」
「姫様…」
鞠戸の言葉に耐えられなくなったのかアセイラムが叫ぶとフィアはアセイラムを落ち着かせるように優しく話しかけると我に帰り話を続ける。
「アセイラム姫は争いなど望んでいません!地球とヴァースの友好の架け橋になろうとしたのです!」
「そして…まんまと火種になった…」
アセイラムの言葉に鞠戸は非情な事実を突きつけるとそれはアセイラムにフィアにも深く突き刺さる。
「ずっと狙ってたんだよ…大手を振って暴れられる大義名分を…」
「火星人がお姫様を生け贄にしたって言うんですか!?」
話を聞いていた韻子は信じられないような顔で鞠戸に聞き返すと界塚ユキの声が部屋に響き渡る。
「全員注目!一同ブリーフィングルームに集合!」
「どうしたの?ユキ姉…」
「界塚准尉って呼びなさい…こっちも正式に戦争する事になったの…」
伊奈帆の問いにユキは険しい顔を崩さすに言うとそれを聞いていた全員が事実に驚くしかなかったのだ。
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「これよりあなた方を兵士として召集します…軍法と軍規を遵守し命令に従って任務を果たす義務が生じます…今まで習った事を無駄にせず、勇気を持って戦いに赴き、地球の平和と秩序を守る戦士として活躍することを期待します」
強襲揚陸艦『わだつみ』艦長のタルザナ・マグバレッジの説明の元、正式に兵士として召集されたフィアは思考を巡らす…アセイラムとエデルリッゾはもちろん何とか兵士になるのは避けなければならないが今考えるべきは自分の事だった。
(私は…)
騎士としての身辺警護なら兵士にならない方が良い…だがまだ火星のカタフラクトが襲って来ないとは限らない…それを対処するならカタフラクトに乗れる兵士の方がいい…フィアは必死に思考を巡らす……そして彼女の選んだ選択は…。
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「それでセラムお姉ちゃんはずっと病気で学校には通えなかったの…」
フィアはエデルリッゾの迫真の演技に舌を巻きつつも仕切り越しに横の面接官に自己紹介をしていた。
「出身は北欧…名はフィア・エルスートだ、歳は16」
「公立高校で訓練は?」
「ある…主席だ…」
「なる程、では貴方を正式に地球連合所属のカットパイロットに任命します…頑張ってね」
「ありがとうございます…」
フィアはパイロット服を貰い席を立つと先に終わっていたアセイラムとエデルリッゾの元に向かう。
「姫様…良かった…よくやったなエデルリッゾ」
「私だって伊達に姫様の侍女を務めていません!」
「フィア…その服は…」
兵士なるのは何とか避けれた事をフィアが安堵しているとアセイラムにパイロット服を見られエデルリッゾも驚く。
「フィア!貴方!」
「身辺警護はエデルリッゾに任せる…もしもの時は…」
そう言うとフィアは上着に隠していた銀の拳銃をホルスターごとエデルリッゾに渡す。
「フィア!」
「姫様…必ずお守り通してご覧に入れます…」
「フィア…貴方は…」
「エデルリッゾ…私はカタフラクトをどうにかする…だがそれだと身辺警護はおろそかになってしまう…だからお前に任せる」
エデルリッゾはフィアの言葉に何も言えなくなる…普段のフィアならどちらもこなそうとするだろう…それをあえてせずにエデルリッゾに任せると言う事は自分が死んでも良いようにするためだ。
「我が騎士フィア…必ず生きて私を守り抜きなさい…」
「ハッ!必ずや…守り通してご覧に入れます!」
アセイラムの言葉に跪くフィアを見てアセイラムは悲しそうな顔をする…主として出来るのは事程度、こんな事を言っても、もしもの事があればフィアは命を投げ出すのは目に見えている…フィアに対してそれしか出来ない自分の無力さを痛感するアセイラムだった。
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「何でパイロットじゃなくて整備員何だよ!」
「何を騒いでいるんだ?」
自身の使える機体を探して格納庫に来たフィアはカームが怒鳴っているのを見て話しかける。
「フィア!聞いてくれよ!俺は火星人ぶっ飛ばしたいのに整備員なんて!」
「整備だって立派な戦争よ!」
「あぁ…韻子の言う通りだ…いくら腕の良いパイロットが居ても機体がガタガタでは何もならんからな…」
「でもよ!」
カームの主張も最もだが韻子とフィアの主張を聞いたカームは少し納得出来ないような複雑な顔をしていた。
「まぁそう気張るなって…この15年間実践を経験した奴らは居ないんだ…経験した奴らは皆の死んだ…火星の奴らもな…てことは敵も味方も皆…お前らと同じ童貞だ…」
「みんなじゃありません…」
「あぁ…そうだな…」
鞠戸の言葉に答えたのは二人、伊奈帆とフィアだ…まさかの返答に韻子とカームは顔を赤くし震えながら問いかける。
「おま…お前ら…まさか……」
「嘘……伊奈帆とフィアが…」
韻子とカームは自身の頭に浮かび上がった可能性を信じて二人を見ていると伊奈帆が
「鞠戸大尉は生き残った…そうでしょう?」
「スコアブック上は違う…俺の書いた種子島レポートは握りつぶされた…」
「種子島…火星と地球が初めて戦闘を行った場所……」
「確か…フィアとか言ったな…民間人である筈のお前が何で知ってる…種子島レポートは軍内部でもその内容を知ってる奴は多くない…」
鞠戸は知っているように呟いたフィアを見て問いかけるとフィアは睨む鞠戸の視線など何処の吹く風と知らんばかりに冷静に答える。
「私の知り合いの知り合いから聞いた…ヘブンズフォールで全て吹き飛んでしまったらしいが…」
フィアが指している人物は当然、火星側…マリーンの上司であるザーツバルムの事だ、しかし彼女自身もデータで閲覧しただけで深く内容は知らないが…。
「フィアの言う通りだ…月の破片の前に火星のカタフラクトが降りてきやがった…その化け物みたいなカタフラクト相手に俺たちは時代遅れの戦車で挑み……全滅した…」
鞠戸は苦しそうに顔を歪めるが話を続ける。
「その直後にハイパーゲートは暴走、時空震でヘブンズフォールが起きて火星の奴らは戦場ごと…」
鞠戸の話を聞いている内にフィアはデータの内容を思い出して来ていた。
(確か先遣隊は飛行能力を持つ二機…その内一機がザーツバルム伯爵で後一機はMIAだった筈だな…確かオルレイン子爵でザーツバルム伯爵の婚約者だった……まさか…)
「フィア?」
伊奈帆はフィアの様子がおかしくなったのを見て話し掛けるが返事がなく何かをブツブツと呟いている。
「まさか…ザーツバルム伯爵が…いや…だからって姫様を狙う理由には…しかし時空震はギルゼリア元皇帝が…まさか……マリーン…貴様も…組しているのではあるまいな…」
フィアは強ばった顔を上げて天井を…いやその上の宇宙を見つめのだった。
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ザーツバルム伯爵揚陸城
「マリーン…逃亡したスレインを回収するのだ…地球へ降下せよ…」
「ハッ!」
ザーツバルムの司令室からの通信を受けたマリーンは笑いながら格納庫にゆっくりと降り立ち狂気に満ちた顔で愛機に話し掛ける。
「待ちかねた…姉さんの眠る青き星に……なぁゼダス?教えてやろうではないか…我々の憎しみをな…」
ダークグレーとブラウンのツートンカラーの機体、ゼダスはまるでマリーンの言葉に答えるように線の様なカメラが怪しく光るのだった。
どうも砂岩でございます!
今回はヘラス戦ちょっと前までですね!
そしてマリーンの機体ですがガンダムAGEに敵として登場したゼダスになりました!
敵、火星、凄い技術力の観点で考えていたらヴェイガンにたどり着きましてじゃあ一番目好きなレギルスを(ビームビットとか地球勢皆殺しにしたいの?まだ早いよ!)じゃあ二番目に好きなゼダス(単独飛行も可能だし)と言うことでゼダスに…(まぁレギルスでも伊奈帆が何とかしてくれそうですが)。
そしてカウントダウン…ただのダウンロード期間かい!?頑張って終わるまで待ってた自分は!?噂は半分信じて半分聞き流せって言いますけど本当でしたね…。
では最後まで読んで頂きありがとうこざいました!