アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第一期 《第1章 心願火星姫君 編》
プロローグ


 

 

地球軌道上に高速で移動する物体があった。十五年前に起きたハイパーゲートの暴走事件によって軌道上には月の残骸が大量に浮かんでいる宙域《サテライトベルト》は宇宙を航行するには厳しすぎる環境だった。

 

「……」

 

しかし現在移動している物体はそのデブリ地帯にはあり得ない速度で移動している。

通常ならそこに浮かぶ岩石に激突し自爆行為になりかねない事をやっている辺りを見てパイロットの腕があるのだと誰もが分かることだろう。

 

「これより…武装のテストを開始する…」

 

『了解~頑張ってね~』

 

搭乗者であるフィア・エルスートは通信から聞こえてくる間延びした声に若干眉を寄せつつもロングバレルのビームライフルを構える。

すると次々と目の前に展開された的を正確に撃ち抜く。

デブリからドローンが現れるとシールドに装備されたビームアックスを起動させ切り裂く。

 

「ビームライフルの集束率、規定値以上を確認。ビームアックスのビーム発振器の異常は見られず…各計器チェック。問題なし」

 

『了解~。じゃあハイ・ビームライフルとビームサーベルのチェックね』

 

「了解…シナンジュ…テストを続行する」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

テストの全工程を終えて月面基地の格納庫に着地した赤いカタフラクト《シナンジュ》は整備ハンガーに格納される。

従来のカタフラクトとは違い頭部が可動するタイプではなく胸部のコックピットハッチが開く仕組みだ。

そこから出てきたのは灰色の制服を着た人物。その灰色の制服は比較的高い階級の者にのみ与えられるものだ。

それを着こなしていたのはまだ16歳の少女だった。

少女は腰まである長い銀髪をなびかせて床に降り立つと寄ってきた人物を赤い瞳で睨み付けに文句を言う。

 

「その緊張のない声はどうにかなりませんか?」

 

「え~いいじゃない」

 

「ハァ……」

 

フィアは機付き長の暢気さに思わずこめかみを押さえていると格納庫の出入り口から声が響いた。

 

「フィア、ご苦労様です。とても優雅な操縦でした」

 

「こ、これは姫様!何故ここへ!? 」

 

その声の主とはヴァース帝国の第一皇女であるアセイラム・ヴァース・アリューシア姫だった。フィアを含む全員がその登場に驚き敬礼をしフィアも方膝をついて挨拶をする。

 

「今日もご機嫌麗しく…」

 

「ありがとうございます。フィア、面を上げてください」

 

「ハッ!」

 

アセイラムが自身の前に降り立つのを確認するとフィアは顔を上げてアセイラムを見る。

 

「姫様…ここは危ないので来たらいけないと申しているではありませんか」

 

「あら、すいませんでした…でもフィアの操縦を見て早く話したかったものですから…」

 

フィアの言葉に少し申し訳なさそうな顔をしながら謝るアセイラムの姿にフィアは少し言い過ぎたと思ってしまう。

 

「ちょうど私もテストを終えましてこのシナンジュも戦場に立てる日が参りました。姫様は私がお守り通してご覧にいれます…」

 

「ありがとうございます。でも無茶だけはなさらないように…」

 

「ハッ!姫様のご命令とあれば、ここは危ないですので…お部屋までお送りいたします」

 

「はい!よろしくお願いいたします」

 

フィアの提案にアセイラムは嬉しそうに答えるとフィアは後ろを向き機付き長を見て機付き長は親指を立てるとフィアはシナンジュを任せてアセイラムをエスコートする。

 

「あの…フィア?」

 

「ん?なんでしょうか?姫様」

 

基地内の重力ブロックに入りフィアとアセイラムが歩いているとアセイラムが突然フィアに話しかける。

 

「フィアもあの機体に乗って地球人と戦うのですか?」

 

「はい、もし地球人が姫様に仇をなすような事があれば私は地球人と戦いますが。それが仮にも火星人だとしても私は戦います」

 

「悲しいですね…何故こうも人は争いあうのでしょう…」

 

「失礼いたします」

 

アセイラムの悲しい声にフィアは方膝を床に付きアセイラムの手を持つ。

 

「フィア?」

 

「姫様…姫様はとても優しいです。私もその暖かさに感銘を受けこうしてお側に居られる事を光栄に思っております。大丈夫です…姫様の思いは必ず人々の乾いた心に届き潤いをもたらすでしょう」

 

「フィア…ありがとうございます!私は正しいと思った事を成し遂げようと思います!」

 

「姫様…」

 

フィアは元気になったアセイラムを見て安堵の表情を作るが後にこの言葉を言った事を後悔するようになるとはまだ思いもしなかっただろう。

 

アセイラムが元気になった所でフィアはアセイラムを部屋までエスコートし扉を開けるとそこには侍女であるエデルリッゾがご機嫌斜めで待っていた。

 

「姫様!どこに行っておられたのです!私は心配いたしました!」

 

「姫様…エデルリッゾに言ってなかったのですか?」

 

「えぇ…だって危ないからいけないと言われるので」

 

「ハァ…」

 

フィアはアセイラムの自由さに少し呆れながら立っているとエデルリッゾの怒りの矛先がフィアに向く。

 

「フィアもフィアです!姫様を甘やかしすぎです!」

 

「うぅ…面目ない…」

 

フィアは自身よりも五歳ほど年下の女の子の言葉に返す術もなくただ黙って怒られるのだった。

 

「それで…明日の準備は整ったのですか?」

 

「あぁ、シナンジュは月面基地でしばらく封印する。クルーテオ卿の揚陸城も明日の午後には月面基地に到着し姫様を収容し一ヶ月後には地球に降下する予定だ…」

 

エデルリッゾの質問に答えたフィアの言葉にアセイラムは少し残念そうに呟く。

 

「一ヶ月ですか…長いですね…」

 

「はい、そこで姫様に地球についてのご勉学をしていただきます。担当者は…スレイン・トロイヤードと言う者ですね」

 

「スレインですか!」

 

フィアの放ったスレインと言う言葉にアセイラムが反応しフィアは驚きの表情を見せる。

 

「姫様…ご存じなのですか?」

 

「えぇ!昔も地球の事を多く教えてもらいました!」

 

「そうなのですか…良かったですね!」

 

「姫様が…地球人と…」

 

アセイラムの言葉にフィアが喜ぶがエデルリッゾは納得いかないようで不機嫌になるがそれを見たフィアはあえて黙って置くのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

月面基地展望区画

 

アセイラムが就寝した後、フィアは壁に大きく張られたガラス越しに地球を眺めていた。

 

「地球か…我らの故郷」

 

「フィア、シナンジュの完成おめでとう」

 

「マリーンか…」

 

フィアは話しかけられた方を見ると黒髪をポニーテールにしたフィアと同い年の少女、マリーン・クウェルがたっていた。

 

「せっかく火星から持ってきて完成したと言うのに…」

 

「元々シナンジュは我らの姫様をお守りするための剣だ。使わなければそれでよい…」

 

「そうか…」

 

「貴様もザーツバルム卿の元で働くのも大変だろう…」

 

「いや、新鮮だよ毎日な。新たな目標も出来た事だしな…」

 

「そうか、それは良かった。では私も忙しい身なのでな…」

 

そう言ってフィアが身を翻し居住区画に向かうのをマリーンはニタリと笑いながらそれを見送る。

 

「エルスート卿。貴方のお役目も…近いうちに無くなるでしょう……新たなるヴァースの為に」

 

 

 

 

 

 




どうも砂岩でございます!
アルドノア・ゼロを見させて頂いて興奮冷めぬ内に書いております。
こんな感じで行きますので暖かく見守って頂ければ幸いです。
あとシナンジュはガンダムUCのシナンジュとはスタインが持っていたハイ・ビームライフルを装備している意外特に変更点はありません。



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