D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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カウントダウン

翌日、義之と麻耶は昼過ぎに目を覚ました

 

平日なので、学校は遅刻所ではない

 

だが、二人としては今はどうでも良かった

 

「麻耶、俺は天枷研究所に居る」

 

義之はそう言うと、ベッドから立ち上がった

 

「義之……私は、どうしたら……」

 

麻耶がそう言うと、義之は微笑みながら

 

「天枷は今日の夜遅くに、洞窟に封印される……俺は麻耶を待ってるからな……」

 

「出来ない……出来ないよ……」

 

義之の言葉を聞いて、麻耶は涙を浮かべながら首を振った

 

「麻耶……天枷は恐らく、麻耶を待ってる……」

 

義之はそう言うと、麻耶を抱き締めて

 

「だから、どんなに遅くなってもいい……必ず来てくれ……」

 

と言うと、部屋から出た

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ほぼ同時刻

 

裕也と蓮華、神夜は地下司令室に集合していた

 

しかも、完全武装状態だった

 

よく見れば、居るのは裕也達だけではなく、反対側の壁際にウーノ達の姿もあった

 

しかも、裕也達と同じように、完全武装状態だった

 

司令室のメインモニターには、白髪が特徴的な三人の姿があった

 

画面中央には、顎髭を蓄えている恰幅のいい老人

 

名前はラルゴ・キール

 

ICPOの名誉武装隊長である

 

その右側に居るのは、メガネを掛けた男性

 

同じく、ICPOの法務相談役、レオーネ・フィルス

 

最後に左側に居るのは、白髪に柔和な微笑みが特徴の女性

 

統幕議長のミゼット・クローベルである

 

「それで、お三方……先ほどの情報は本当ですか?」

 

と聞いたのは、スカリエッティだ

 

スカリエッティが問い掛けると、三人は頷いて

 

『最近調査して分かったのだが、文献で《聖王のゆりかご》が実在したと分かった』

 

『しかも、そのゆりかごをインデックスが保有している可能性が高いんです』

 

『ゆりかごに関しては、未だに詳細は調査中です』

 

と語った

 

聖王のゆりかご

 

それは遥か昔、群雄割拠の時代に聖王に連なる部族が開発した巨大な戦艦である

 

文献によれば、聖王のゆりかごは次元跳躍砲撃すら可能と書いてある

 

だが、今までその存在は否定されていた

 

しかし、国連が有する巨大な図書館で調査した結果、聖王のゆりかごが実在することが分かった

 

しかも最悪なことに、それがインデックスの手に渡ってしまった

 

守護者部隊としては、劣勢に立たされた形である

 

だが、ゆりかごを動かすには聖王の血筋が必要である

 

だが歴史上、聖王の血筋は滅んでいる

 

しかしながら、今初音島には聖王の特徴を有する少女

 

ヴィヴィオが居る

 

ヴィヴィオがインデックスに捕まったら、インデックスは間違いなくゆりかごを起動するだろう

 

『こちらも援軍を送りたいが、世界中で奴らが暴れていてな……』

 

『なかなか、戦力が集められないのです……』

 

『すいませんね……』

 

三人は申し訳なさそうに、頭を下げた

 

「いえ、仕方ないでしょう……数では、奴らの方が多いですからな」

 

スカリエッティはそう言うと、姿勢を正して

 

「それでは、我々は初音島の守備を固めます」

 

と言った

 

三人が頷くと一旦通信画面は閉じて、新しくリンディと中年の男性

 

ゲンヤ・ナカジマの顔が映った

 

ゲンヤ・ナカジマはスバルとギンガの父親で、リンディと同じ警察の協力者である

 

リンディが風見署の署長で、ゲンヤは風見暑の機動隊隊長である

 

『今現在、こちらは動かせる署員を集めています』

 

『とはいえ、島民の避難もあるから、戦力としては半分しか動かせないやな』

 

二人がそう言うと、スカリエッティは頷いて

 

「仕方ないだろうね……インデックスは一般人とて、容赦なく危害を加えるだろう……」

 

と呟いた

 

すると、裕也が一歩前に出て

 

「直接的な戦闘は俺達に任せてください。ですので、リンディさん、ゲンヤさんは避難誘導を優先してください」

 

と言った

 

裕也の話を聞いて、リンディとゲンヤは頷いた

 

裕也は蓮華達に振り向くと、決意が強い意志が籠もった様子で

 

「俺達が最前線要員です。皆……絶対に守ろう!」

 

と宣言した

 

裕也の宣言を聞いて、蓮華達は真剣な表情で頷いた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、数時間後

 

場所、天枷研究所

 

「まったく……アポ無しで来るなんて、桜内君もムチャするわね」

 

「すいません……」

 

水越女史の苦言を聞いて、義之は頭を下げた

 

水越女史の言葉の通り、義之はアポイントメントも無しに天枷研究所に来たのだ

 

もちろん、アポイントメント無しに来たので、義之は警備員に押さえられた

 

そして、義之が中に入れずにヤキモキしていると、天枷研究所所属のμ

 

個体名イベールが現れて、義之が水越女史の知り合いだと教えたことにより、義之は中に入れたのだ

 

そして、水越女史の研究室に入ると、義之の視界に入ったのは、かつて洞窟で見つけた美夏が入っていた機械が置いてあった

 

そして中には、インナーだけを着た美夏が寝ていた

 

「天枷……」

 

義之は機械に近づいて、美夏を見つめた

 

すると、水越女史が近づいてきて

 

「今回は天枷の要請によって、彼女の同意が無いと、スイッチを押しても目覚めないようになってるわ」

 

と説明した

 

それを聞いた義之は、僅かに逡巡してからスイッチを押した

 

だが、美夏は目覚めなかった

 

「やっぱり、俺じゃあダメか……」

 

義之は呟くと、水越女史に体を向けて

 

「水越先生……麻耶を待たせてもらって、いいですか?」

 

と問い掛けた

 

すると水越女史は、咥えていた無着火のタバコを指に挟むと

 

「沢井さん……本当に来るの?」

 

と問い掛けた

 

すると、義之は力強く頷いて

 

「必ず、来ますよ……」

 

と言った

 

すると、水越女史は深々と溜め息を吐いて

 

「やれやれ……長期戦になりそうね……イベール、コーヒーお願い」

 

「承りました」

 

水越女史の言葉を聞いて、イベールは頷いて部屋から退室した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「っくし……うぁ……」

 

くしゃみして、義之は目覚めた

 

どうやら寝ていたらしく、気づけば部屋は暗くなっていた

 

ふと時計に視線を向けたら、夜の12時近くだった

 

なお、この時義之は気づいてなかったが、バイクが走り去る音がしていた

 

義之が視線を巡らせると、水越女史が机に突っ伏す形で寝ていた

 

「水越先生……水越先生……」

 

「んぁ……桜内君……?」

 

義之が揺すると、水越女史はゆっくりと起き上がった

 

「もうすぐ、12時になりますよ……」

 

義之の言葉を聞いて、水越女史は体を起こすと

 

「そう……沢井さんは来た?」

 

と義之に問い掛けた

 

「いえ……来ませんでした……すいませんが、天枷を……」

 

「分かったけど、ちょっと待って……私、低血圧だから……完全に起きるのに、少し時間が……掛かるのよ……」

 

義之の言葉を聞いて、水越女史はユラユラと揺れながらそう言った

 

それを聞いて、義之は寝ている美夏に近づき

 

「天枷……ごめんな、こんなことになって……でも必ず……必ず、天枷が過ごしやすい時代が来るように頑張る……それが何年後になるかは分からないが、絶対に子孫に語り継がせるからな……」

 

義之がそう語り、立ち上がった

 

その時、ドアが勢い良く開き麻耶が現れた

 

「麻耶……」

 

「ぜぇ……はぁ……天枷……さんは……?」

 

義之が驚いていると、麻耶は荒く呼吸しながら義之に問い掛けてきた

 

「ここに居るが……麻耶、どうやって来たんだ?」

 

時間的には、既にバスは止まっている

 

義之の家からはかなり遠いので、どうやって来たのか義之には分からなかった

 

すると、麻耶は呼吸を整えながら

 

「杉並が……バイクで……」

 

と言った

 

それを聞いて、義之は頬が引きつった

 

(あいつ、バイクの免許持ってるのか? いや、杉並だったら持っててもおかしくない……)

 

義之はそう思うと、麻耶に対して

 

「麻耶……このスイッチだ……」

 

と言いながら、美夏が寝ている機械を示した

 

「天枷さん……」

 

麻耶はヨロヨロと近付くと、膝を突いた

 

「押しても、天枷の同意が無いと眠りから覚めないわ」

 

水越女史がそう言うと、麻耶はビクッと体を震わせて

 

「無理よ……私が押しても、天枷さんは……起きるわけが……」

 

と涙を流した

 

「麻耶……」

 

義之はどう言葉を掛けていいのか分からず、口を噤んだ

 

すると、麻耶は自身の体を抱きながら

 

「どうすればいいのか、分からないよ……助けてよ……お姉ちゃん……!」

 

と泣いた

 

その時、義之は不思議な光景に気付いた

 

「なんだ……これ……」

 

窓の無い研究室で風が吹いており、桜の花びらが舞っていた

 

「桜の……花びら?」

 

水越女史が呆然と呟いた途端、義之達の視界を眩い光が覆った

 

そして、ゆっくりと目を開けると先ほどまで美夏が寝ていた機械の横

 

つまりは、麻耶の前に一人の女性が立っていた

 

後頭部で纏めた長い赤髪に、赤を基調とした割烹着を着た優しそうな女性が

 

「お姉……ちゃん?」

 

麻耶の呆然とした声を聞いて、義之はその女性が誰か分かった

 

「まさか……美秋さん?」

 

「え? 美秋って、破棄されたHMAー07型のこと? てか、何が起きてるの? 何かの手品?」

 

義之の言葉を聞いて、水越女史は呆然と美秋を見た

 

すると、義之は笑みを浮かべて

 

「これは、魔法ですよ……もしくは、奇跡……かな?」

 

「魔法……ね」

 

義之の言葉を聞いて、水越女史は微笑みながら美秋と麻耶を見つめた

 

そして、一夜の奇跡が始まる


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