D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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叫び

美夏のことが麻耶にバレた翌日

 

義之がどうしたらいいか、自宅で迷っていると

 

ピンポーン、とチャイムが聞こえた

 

「はーい」

 

義之がドアを開けると、そこには美夏が居た

 

「天枷……」

 

「よ! 桜内、今はいいか?」

 

まさか美夏が来るとは思ってなかった義之が呆然としていると、美夏が片手を上げながらそう聞いてきた

 

「あ、ああ……大丈夫だ」

 

義之はそう言うと、体を横にズラして中に入るように促した

 

「では、失礼するぞ」

 

美夏は断って上がると、勝手知ったるなんとやらといった様子で、居間の方へと向かった

 

すると、美夏は先にコタツへと入っていた

 

義之は美夏が座っている反対側に、腰を下ろした

 

「で、どうした?」

 

義之が問い掛けるが、美夏はしばらく黙っていた

 

「もともと……美夏は人間に期待などしていなかった……」

 

美夏の言葉を義之は、黙って聞いた

 

「だから、悪く思われてもぜんぜん平気だったのだ……でも、沢井がロボットを悪く思っていたとなると話は別だ。友達になれると……思っていたからな」

 

「友達だろ? 俺達とお前は……」

 

美夏のその言葉に、義之は思わず反論した

 

すると、美夏は苦笑いを浮かべて

 

「そりゃ、貴様達三人は、最初から美夏がロボットだと知った上で接しているのはわかっている。貴様らがそんなふうだったから、美夏はしなくていい期待を……人間に抱いてしまったのかもしれない……」

 

美夏はそう言うが、彼女の言葉からは怒りよりも哀しげなニュアンスを義之は感じた

 

義之の周りには、どちらかと言えば、常識知らずでお気楽な人物が圧倒的に多い

 

それが、美夏にとって居心地のいい環境になっていたのだろう

 

すると義之は、美夏を見つめて

 

「麻耶だってバカじゃない。そのうちわかってくれるさ」

 

と言った

 

「そうだといいのだが……」

 

義之の言葉を聞いて、何時もは強気な美夏が気弱そうに俯いた

 

その時、チャイムが再び鳴った

 

「ん? 今日は客が多いな」

 

「もしや……沢井か?」

 

義之の言葉を聞いて、美夏が呟くように言った

 

(確かに……その可能性は高い……だったら、天枷と麻耶を会わせたらマズいな……)

 

美夏の言葉を聞いた義之は、そこまで考えると美夏に対して

 

「天枷、お前はそこの押し入れに隠れとけ」

 

と指示した

 

「なぜ、美夏が隠れないといけない?」

 

と首を傾げたが、義之は諭すように

 

「今の状態で、麻耶と会ったらマズいだろ?」

 

と言った

 

すると、美夏は先ほどの発言を思い出したようで

 

「あ、ああ……そうだな……」

 

と言うと、義之が指し示した押し入れに入った

 

義之がそれを確認すると、もう一度チャイムが鳴った

 

「はーい! 今開けまーす!」

 

義之は出来る限りの声を上げながら、玄関に向かった

 

そして、玄関に到着すると、義之は美夏の靴を隠してからドアを開けた

 

そこに居たのは……

 

「麻耶……」

 

義之の彼女である麻耶だった

 

よく見ると、寝不足らしく、目の下にクマが出来ている

 

「どうした?」

 

出来る限り優しい声で問い掛けると、麻耶は一泊置いてから

 

「大事な話が……あるの……」

 

と言った

 

「わかった。上がれ」

 

麻耶の真剣な表情を見て、義之は麻耶に入るように促してから念話で

 

(天枷、来たのは麻耶だ。そのまま隠れておけ)

 

と知らせた

 

(わかった)

 

美夏が返事をしたのを確認してから、義之は居間へと麻耶を通した

 

そして、義之は麻耶が座ると麦茶を入れて机に置いてから

 

「大事な話って、なんだ?」

 

と問い掛けた

 

麻耶は数回ほど、口を開けたり閉めたりすると

 

「あのね、義之……私ね……天枷さんのことを……学園に言おうと思うの」

 

掠れるような声で、そう言った

 

「……なに?」

 

意味を図りかねた義之は、首を傾げた

 

すると、麻耶は辛そうな表情で

 

「だって……天枷さんはロボットなのに、学生として居るなんておかしいでしょ……?」

 

と言った

 

その言葉を聞いた義之は、思わず机を強く叩きながら立ち上がって

 

「麻耶! お前、何を言ってるのか、わかってるのか!?」

 

と、怒鳴るように声を張り上げた

 

「わかってるわ……だけど……」

 

麻耶は義之の言葉に、辛そうにしながら呟いた

 

すると義之は、麻耶に近づいて肩を掴むと

 

「なんでだよ、麻耶。なんで、そんなにロボットを嫌うんだよ?」

 

と問い掛けた

 

すると麻耶は、涙を滲ませながら

 

「私は……私の家は……ロボットのせいで、家族がメチャクチャになったのよ!」

 

と叫んだ

 

麻耶の叫びを聞いた義之は、目を見開いて

 

「どういう……ことだ……?」

 

と問い掛けた

 

すると麻耶は、自分の失言に気付いた様子で唇を噛み締めながら俯いて

 

「ごめんなさい……私、帰るね……」

 

と言うと、肩を掴んでいた義之の手を振り払うと部屋を出ていった

 

麻耶の言葉を聞いて、義之が固まっていると、ドアの開閉音が聞こえた

 

そして、義之が呆然としていると、押し入れが開き、中から美夏がヨロヨロと出てきて、両膝を突いた

 

美夏が両膝を突いた音で、義之は我に帰り視線を美夏に向け

 

「天枷……」

 

労るように美夏の名前を呼んだ

 

すると美夏は、泣きそうな顔と声で

 

「桜内……美夏は、美夏は……どうすればいいのだ……?」

 

と義之に問い掛けたが、義之には答えられなかった

 

 

 

場所は変わり、地下指令室

 

「その情報、間違いないんですね?」

 

裕也が問い掛けると、椅子に座っていたスカリエッティは頷いて

 

「ああ、間違いない……救難十四聖一人を含む、十名近い部隊が出陣したそうだ」

 

と言った

 

すると、裕也の隣に立っていた蓮華が歯を食いしばり

 

「そんだけの数が居たら、下手な村や町が確実に消されるな……」

 

忸怩たる思いを滲ませながら呟いた

 

実際に、十名の部隊で村や町を消し去ったというのは、少なくない

 

過去に、裕也や蓮華も救助に向かったが間に合わずに、憤ったのを覚えている

 

「そして、標的だが……おそらく、ヴィヴィオちゃんだと思われる」

 

というスカリエッティの言葉を聞いて、裕也は眉をひそめて

 

「あの、高町家で保護してる女の子ですか?」

 

と、問い掛けた

 

裕也が問い掛けると、スカリエッティは頷いて

 

「この映像を見てくれ」

 

と言って、モニターに映像を映した

 

モニターには、ヴィヴィオの胸像が映し出されている

 

「あ? 今更ヴィヴィオの顔がどうし……」

 

「待ってください」

 

蓮華の言葉を、神夜が遮った

 

「この目の色は……」

 

神夜はヴィヴィオの目を見ると、口元に手を当てて唸りだした

 

すると、先に裕也が指を鳴らして

 

「そうだ! この目の色は聖王の特徴だ!!」

 

と叫んだ

 

裕也の言葉を聞いたスカリエッティは頷いて

 

「そう。この子の目は聖王の特徴なんだ。ただし……聖王の系列は、とっくの昔に滅んでるはずなんだがね……」

 

スカリエッティはそう言うと、頭をガシガシと乱暴に掻いた

 

「とりあえず、聖王のことは置いておいて……確実なのは、数日中にインデックスが攻めてくること」

 

その場の全員はスカリエッティの言葉を聞いて、うなずいた

 

「だから皆、気を抜かずに警戒してくれ」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

スカリエッティの言葉を聞いて、全員は返事した


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