D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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二つの進展

義之の家に麻耶と美夏が泊まり、麻耶と義之がキスした翌日の放課後だった

 

授業も終わり、卒パ関連の話し合いもなかったので、義之は買い物をして帰ろうかと思っていた

 

そのタイミングで

 

「ねぇーねぇー、義之くん。時間ある?」

 

と、茜が話し掛けてきた

 

「ちょーっと、顔を貸してほしいんだよねー。不良風に言うなら……ツラ貸せや、コラ……みたいなー」

 

茜がなぜ、不良風に言ったのか首を傾げかながら

 

「まあ、一応あるが……」

 

と言うと、茜は振り返って

 

「杏ちゃーん! 義之くんは大丈夫だってー!」

 

と、麻耶の近くに立っていた杏に告げた

 

茜の言葉を聞いた杏は頷くと、麻耶を見て

 

「委員長、ちょっといいかしら?」

 

「えっ? なに?」

 

杏が問い掛けると、麻耶は驚いた様子で顔を上げた

 

しかし、それも仕方ないだろう

 

麻耶と杏はクラスメイトだが、あまり親しく話す仲ではないからだ

 

「ちょっと話があるのよ。付いて来てもらえるかしら?」

 

と杏が言うと、麻耶は片眉を上げて

 

「ここじゃダメなの?」

 

「教室じゃ話しづらいことなのよ」

 

という、杏の言葉に麻耶が躊躇っていると

 

「大事な話なのよ。私達、友達でしょ?」

 

という杏の言葉に、麻耶は固まった

 

すると、それを見越してか、杏は小恋とアリシアを見やって

 

「ねえ、アリシア、小恋」

 

と呼ぶと、話し合っていた二人は杏を見て

 

「どうしたの?」

 

「なになに?」

 

と聞いてきた

 

すると杏は、笑みを浮かべながら

 

「私達と委員長って、友達よね?」

 

と聞いた

 

すると二人は、互いの顔を見てから

 

「「うん、そうだよ」」

 

なにを今更てきに、二人は返した

 

それを聞いた杏は、麻耶のほうに視線を向けて

 

「ね?」

 

と、首を傾げながら同意を求めた

 

すると麻耶は、少しうろたえた様子で

 

「そ、そうね……」

 

その光景を見ていた義之は、杏のやり口を評価した

 

(小恋とアリシアの純粋さを利用した見事な心理誘導だ……)

 

と、義之が思っていると

 

「さてと、これで役者は揃ったわね……場所はどうしましょうか?」

 

と杏が茜に聞くと、茜は唇に指を当てて

 

「んー……屋上でいいんじゃない?」

 

「そうね、そうしましょ。委員長、付いて来て」

 

茜の提案に乗り、杏は麻耶を誘い

 

「行きましょ行きましょ、義之くんも」

 

茜は義之を誘った

 

「え? え? どっか行くの!?」

 

「はいはい。いいから、部活行くよ!」

 

小恋は杏達に付いていこうとするが、それをアリシアが首根っこを掴んで止めた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数分後、四人の姿は屋上にあった

 

流石に寒かったので、義之が魔法で寒さを和らげている

 

「んで、話ってなんだよ?」

 

話の内容が気になっていた義之が聞くと、杏が

 

「焦らないで、これは大事な話なんだからね」

 

と、義之に落ち着くように促した

 

「そうそう、今回は二人に聞きたいんだから」

 

茜のその言葉に、義之と麻耶は首を傾げながら目を合わせた

 

すると、杏が微笑んで

 

「ただ、私達が確認することで、少しややこしい事態になるかもしれないわね……そこは勘弁してね……」

 

「どういうことだ?」

 

義之が眉をひそめがなら聞くと、杏は頷いて

 

「単刀直入に聞くわ……あなた達は付き合ってるの? そうじゃないの?」

 

という杏の言葉に、二人は固まった

 

「冬休み中から少し怪しいな、って思ってたのよ」

 

「けど、悪く言うと中途半端」

 

茜の言葉は正解だった

 

二人は確かに、昨日の夜にキスはした

 

だが、告白したわけではない

 

二人がそのことに固まり、あーうー、と言葉を濁していると

 

「もー! 煮え切らないなぁ!」

 

「仕方ないわね……沢井さん、どうなの?」

 

二人の態度に茜は口を尖らせ、杏は麻耶に問い掛けた

 

「えっと……」

 

「えっと?」

 

「だから……」

 

「だから?」

 

「っー……」

 

麻耶が口ごもっていると、二人は麻耶を見つめ続けた

 

すると麻耶は、大きく深呼吸して

 

「そ……それに関しては……桜内から説明するわ!」

 

という麻耶の言葉に、義之は目を見開いて麻耶を見た

 

「桜内がなんと言おうと、桜内の言うとおりだから!」

 

麻耶の言葉に、杏と茜は義之を見て

 

「だ、そうだけど?」

 

「そこの所はどうなの? 義之」

 

二人からの問い掛けに、義之は逡巡した

 

すると、麻耶と視線があい、麻耶の目が潤んでることに気づいた

 

そんな義之と麻耶を見て、杏達は互いを見て

 

「なんか、ややこしい事態になっちゃったみたいだね」

 

「藪蛇をつついちゃったかしら?」

 

という二人の言葉に、義之は

 

(だったら、ハナから聞くんじゃねぇよ……)

 

と内心で嘆息すると同時に、考えだした

 

(確かに俺達は昨日、互いの気持ちを知って、しかもキスまでした……だけど、まだ告白すらしてない……だったら、否定するか?)

 

そこまで考えた義之は僅かに目を動かして、麻耶を見た

 

麻耶は目を潤ませたまま、僅かに俯いていた

 

その姿を見た義之は、すぐに考えを改めた

 

(いや、それはダメだ。そんなことをしたら、昨日の思いと行動を否定することになる……だったら、俺が出すべき答えは……)

 

義之は答えを導き出すと、深呼吸して

 

「ああ、そうだな……俺と委員長は付き合ってるよ」

 

と、断言した

 

義之の言葉を聞いた麻耶は嬉しそうに微笑み、杏と茜は驚いた様子で

 

「本当!?」

 

「嘘じゃないでしょうね?」

 

と、義之に確認してきた

 

「嘘ついてどうすんだよ。とは言え、昨日からだけどな」

 

と義之が補足すると、茜が喜んで

 

「ね!? ね!? 言った通りでしょ!」

 

と、杏の肩を叩いている

 

すると杏は、茜の手をバインドで抑えて

 

「そうね、そういうことにしとくわ……」

 

と、溜め息混じりに同意した

 

「だけど、そんなことを確認してどうすんだよ」

 

と義之が確認すると、杏が仕掛けたバインドを解除した茜が

 

「まあ、いいからいいから♪」

 

と気楽そうに、手を振った

 

それに続くように、杏が

 

「まあ、私達が確認したかったのもあるしね……それじゃあ、正直に答えてくれたお礼として、まわりには上手く伝達しておくわ。二人の関係が、自然に浸透するようにね……」

 

「まー、付き合ってるのを秘密にし続けるのも辛いし、だからといって、教えるのは恥ずかしいしねー」

 

義之は、茜の言葉に内心頷いてから

 

「なんで、そんなことを……お前らが……?」

 

と聞くと、二人は顔を見合わせて

 

「だって、ねぇ……?」

 

「まあ、それが気になってる子も居るってことよ……」

 

そう言うと杏は、屋上入り口の方に振り向いて

 

「それじゃあね、お二人さん……」

 

と言って、ドアをくぐった

 

「あ! 杏ちゃん、置いてかないでよー!」

 

置いてけぼりをくらった茜は、慌てて杏を追いかけていき、屋上には義之と麻耶だけが残った

 

その後二人は、互いを名前呼びにすべきかを話し合ってから屋上を後にして、買い物に向かった

 

ほぼ同時刻、診療所地下司令部

 

そこには、スカリエッティとウーノ。裕也と蓮華の姿があった

 

「……その話は本当ですか?」

 

裕也が問い掛けると、ウーノが頷いて

 

「ええ、間違いないわ。ドゥーエから戦闘機人ネットワークを通じて報告が上がったわ」

 

ドゥーエというのは、ウーノやノーヴェ達と同じ戦闘機人であり、スカリエッティ達が脱走する時に残って情報収集を務めている

 

彼女のISはそういった潜入向きで、敵中から情報を得たり、暗殺したりなどが出来る

 

そのドゥーエからの報告を聞いて、裕也と蓮華は苦い顔をした

 

理由は……

 

「救難十四聖一人を含む、十四人が初音島に来るなんて……」

 

インデックスが初音島に対して、襲撃を計画していたからだった

 

「目的はわからないんですか?」

 

裕也が問い掛けると、スカリエッティは首を振って

 

「流石に、そこまではわからないみたいだ……ドゥーエも、かなり危ない橋を渡ったらしい」

 

「そうですか……」

 

スカリエッティの説明を聞いて、裕也はそれ以上の質問を止めた

 

ドゥーエが居るのはまさしく、インデックスの総本山の地下図書館である

 

一瞬のミスが命取り故に、それがわかっただけでも十分だった

 

「俺と裕也だけじゃ厳しいな……トーレさん達にも対処してほしいが……」

 

と蓮華が言うと、スカリエッティは頷いて

 

「もちろん、そのつもりだよ。それに、聖王教会にも応援を要請しておいたから、恐らくは騎士ゼストやシスターシャッハが来てくれるはずだ」

 

と、二人に説明した

 

「それじゃあ、俺も初音島全域の対魔センサーの強化や、使い魔を増やしておきます」

 

裕也の言葉を聞いたスカリエッティは頷き

 

「そうしてくれ。こちらもICPOに連絡して、インデックスを監視してもらうように申請しておく」

 

と、伝えた

 

「頼みます」

 

裕也のその言葉を合図に、会話は終わった

 

 

こうして、世界の歯車は軋みを上げながら回っていく

 

その行く末は、破滅か、それとも……

 


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