D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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自分の誕生日内に、なんとか投稿できた……
今年で25です


ドキドキの同居生活 その1

デートが終わり、一月も後半に入ったある日

 

義之と麻耶の二人は教室に残り、卒業パーティーのことで話し合っていた

 

その時

 

「あー、居た居た。よかった、居てくれて」

 

という声が聞こえて、二人は振り返った

 

そこに居たのは

 

「水越先生に天枷さん?」

 

風見学園保険医の水越舞夏と天枷美夏だった

 

「桜内くん、ちょっと……」

 

どうやら、用があるのは義之らしい

 

義之はなんだろう? と首を傾げながら、二人に近寄った

 

「ちょっとこっち」

 

すると水越先生は、義之の首に腕を回して義之を近づけた

 

「ど、どうしたんですか?」

 

義之はいきなり首に腕を回されたことに驚くが、問い掛けた

 

すると、水越先生は義之の耳元で囁くように

 

「実はね……天枷を預かって欲しいのよ。一週間ばかり」

 

「はあ!? 天枷を預かる!?」

 

義之は水越先生の言葉に驚愕して、大声を上げた

 

すると

 

「ええ!?」

 

麻耶も驚愕の声を上げた

 

義之と水越先生が二人して麻耶を見ると、麻耶は顔を赤くして

 

「す、すいません……」

 

謝ってから、椅子に座った

 

それを見た二人は、視線を戻して

 

「桜内くん、声が大きい」

 

「すいません……それより、なんで俺なんですか?」

 

水越先生に注意されて、義之は謝るが何故自分なのか問い掛けた

 

「杉並君だと、なにするかわかったもんじゃないし、裕也君はエリオ君とキャロちゃんで精一杯だからね」

 

水越先生の言葉を聞き、義之は納得した

 

いわゆる、消去法である

 

「理由はなんなんです?」

 

「私ね出張に行かないといけないのよ」

 

水越先生が理由を言うと、義之は片眉を上げて

 

「は? 保健室の先生が出張ですか?」

 

と聞くと、水越先生は手をひらひらと振りながら

 

「いやいやいや。そっちじゃなくて、本業のほう」

 

「……あぁ」

 

水越先生に言われて、義之は水越先生が天枷研究所の研究員であることを思い出した

 

「そういえば、天枷って水越先生の家に住んでるのか?」

 

「いや、美夏は一人暮らしだ」

 

義之の問い掛けに、美夏が答えた

 

「天枷たっての希望でね、研究所の所有するアパートの一つに住まわせてるのよ」

 

二人の言葉を聞いた義之は、首を傾げて

 

「だったら、うちで預からなくてもいいのでは?」

 

そもそも、水越先生の要請はかなり無茶である

 

美夏はロボットと知られていないため、傍から見たら後輩の女の子が先輩の家に泊まる。といったシチュエーションにしか見えないのだ

 

すると、義之の考えがわかってるのか、水越先生は苦笑して

 

「まあ、気持ちはわかるんだけどね……天枷って、一日に一回だけ、簡単なメンテナンスを受ける必要があるの」

 

「メンテナンスって、俺、そんなのできませんよ?」

 

いくら義之でも、メカニックマイスターの資格は有しておらず、普段のメンテナンスも最近はすずかに頼んでるくらいである

 

すると、水越先生は

 

「だから、言ってるでしょ? 簡単だって」

 

水越先生は、義之の頭にヘッドロックをかましながら言った

 

その影響で、義之の頭蓋骨がミシミシと軋んだ

 

「ど、どのくらい簡単なんですか?」

 

「ゼンマイ巻くだけよ」

 

水越先生の言葉に、義之は一瞬驚くが、以前渡されたマニュアルを思い出し

 

「そういえば、マニュアルに書いてありましたね……」

 

内心で本当にゼンマイだったことに驚きながらも、呟いた

 

すると、美夏がフンっと鼻息荒く

 

「美夏は、一人でも大丈夫だと言ってるんだがな」

 

と腕組みしながら言うと、水越先生が視線を美夏に向けて

 

「天枷、あんた一人じゃ、背中に手が届かないでしょ」

 

「う……」

 

水越先生に一蹴されて、美夏は口を噤んだ

 

どうやら、ゼンマイの穴は背中にあるらしい

 

「そんなわけで、お願い」

 

「まあ、さくらさんが良いって言うなら……」

 

義之が頬を掻きながら言うと、水越先生が

 

「そう言うだろうと思って、学園長の許可はとってあるのよ。かなり軽い口調で『義之くんがいいって言ったら、いいよ~』ってさ」

 

義之の考えを予測していた水越先生は、先に家主であるさくらの許可を得ていたようである

 

「でも、他の研究員の方々はどうなんですか?」

 

「皆も忙しいのよ。私みたいに二足草鞋も居るし」

 

ここまで言われたら、しょうがないか。と義之は思い

 

「わかりました。うちで預かります」

 

と、願いを聞き入れた

 

「ありがとうね、桜内くん」

 

「すまないな、桜内。迷惑をかける」

 

「気にすんな」

 

と三人が話し終わったら、麻耶が近づいてきて

 

「で、天枷さんを預かるって、どういうこと?」

 

すっかり蚊帳の外となっていた麻耶が、若干不機嫌そうに聞いてきた

 

「いや、なんでも、水越先生がこれから出張に出るらしいんだがな。その間、水越先生が預かってる天枷をうちに預かることになったんだ」

 

「ちなみに、今日から今週末の金曜日までね」

 

今日は月曜日なので、丸々5日間ということである

 

「さてと、これから天枷の荷物を取りに行って、帰りに買い物しなきゃな」

 

「買い物なら、美夏も手伝おう」

 

「さーて、出張の準備しなきゃ」

 

と、三人が顔を合わせた時だった

 

「な……納得いきません!」

 

「「「へ?」」」

 

麻耶の叫びに、三人はポカンとした

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「なぜにこうなった……?」

 

そう呟いてる義之の視線の先には……

 

「うん! 弟くんのカレーは本当においしいね!」

 

「ですね」

 

家族同然の朝倉姉妹

 

「美味すぎるだろ! 店の販売品か!?」

 

今日から5日間預かることになった、天枷美夏

 

そして……

 

「二回目だけど……やっぱりおいしい……」

 

義之のクラスのクラス委員長、沢井麻耶が居た

 

これには訳があり、あの後のことである

 

回想開始

 

「いくらなんでも、男子の家に女の子を一人で預けるのは危険です!」

 

と、麻耶が抗議しているのは、風見学園学園長にして、家主の芳野さくらである

 

「委員長、俺はそんなに信用ないのか?」

 

「桜内は黙ってて!」

 

「はい……」

 

麻耶の言いように義之が抗議するが、即行で負けた

 

「うにゃ~……そうは言ってもね……女の子をアパートに一人だけにするのも危ないと思うんだよねー」

 

と、さくらが困ったように言うと

 

「そもそも、学園長が桜内の家の家主なんですよね? なにも起こらないと思うんですか?」

 

そう麻耶が言うと、さくらは笑みを浮かべ

 

「義之くんなら、大丈夫!」

 

と断言した

 

さくらの言葉を聞いた義之は

 

(さくらさんの期待だけは、裏切らないようにしよう……)

 

と、心に誓っていた

 

「だったら、せめて朝倉先輩の家にしてください!」

 

と、麻耶が次善策を言うが

 

「うにゃ~、お兄さんの家には余裕が無いんだよねー。その点、僕の家は部屋なら余ってるんだー」

 

正確に言うと、朝倉家の部屋は空いている

 

だが、その部屋は今現在、初音島を離れてる純一の妻、朝倉音夢の部屋である

 

いくら純一でも、妻の部屋に他人を泊める気にはならないらしく、許可は出なかった

 

ちなみに、朝倉音夢本人としては、別にいいのに。とのことである

 

閑話休題

 

「ですが……」

 

麻耶としては反論したいが、反論する材料がないために口ごもった

 

すると、さくらが手を叩いて

 

「だったら、麻耶ちゃんも泊まればいいんだよ!」

 

と、爆弾発言をした

 

「え?」

 

さすがに予想外の発言に、麻耶は固まった

 

「だって、美夏ちゃんを一人で泊めるのは反対なんだよね? だったら、麻耶ちゃんも泊まれば一人じゃないよね?」

 

「え、いや……確かにそうですけど……」

 

「それじゃあ決まり! 麻耶ちゃんの家には連絡しておくから、今日はこれまで! 僕はこれから会議なんだ」

 

「はい……」

 

あれよあれよと言う間に、麻耶も泊まることが決まったのだった

 

補足だが、麻耶が家に帰ったら、大人形態のアルフが居て、麻耶の宿泊用の荷物を持っていたらしい

 

ちなみにアルフだが、時々リンディの手伝いをしているために子供の世話から料理まで何でもござれである

 

そして、そのアルフに教えたのは勇斗である

 

何でも、さくらから電話が来た勇斗は、以前からの遊び相手であるアルフに相談したらしい

 

相談されたアルフは、すぐさまリンディとフェイトにお願いして沢井家に泊まる許可を獲得

 

アルフは沢井家に向かったのだった

 

そして、麻耶の荷物を纏めて、麻耶に渡したのである

 

以上、回想終了

 

ちなみに、朝倉姉妹が家に来たら麻耶と美夏が居たので、音姫は義之に問い詰めて、由夢は無言のプレッシャーを放っていた

 

そして、今現在、朝倉姉妹と麻耶。そして美夏は義之が作ったカレーを食べていた

 

朝倉姉妹は何回も食べているために、納得した様子で食べていて、麻耶は二回目のために、少しばかり驚いた様子で食べていて、義之の料理を初めて食べた美夏は、驚愕した様子で食べていた

 

そして五人は料理を食べ終わると、由夢が食器洗い、義之が美夏と麻耶の泊まる部屋の掃除と布団の運び込み

 

そして音姫が、風呂場の掃除を行った

 

それを見た麻耶と美夏は三人を手伝おうとしたが、三人はやんわりと断った

 

理由としては、二人はお客様なんだから、ゆっくりしてろ。ということだ

 

そう言われたら、二人としては待つしかなかった

 

二人は待っている間に会話したらしく、かなり意気投合していた

 

それを見た義之は、嬉しさ半分、美夏の正体がバレないかの恐怖半分であった

 

そして時は経ち、朝倉姉妹は家に帰り(隣だけど)、芳野家では風呂の時間となった

 

ただし、ここで一つの問題が発生した

 

入る直前になって、麻耶が美夏に一緒に入ろうと提案してきたのだった

 

それを聞いた瞬間、義之と美夏を戦慄が襲った

 

美夏がロボットだということを知っているのは、義之を含めて五人だけ

 

もし、ロボット嫌いの麻耶に知られたら大事である

 

そう思った二人は、なんとか麻耶を言いくるめて、麻耶を先に入らせることに成功したのだ

 

そして、麻耶が入浴している間に美夏のゼンマイを巻いたのだが、義之としては精神的に厳しかった

 

理由としては、義之がゼンマイを巻く度に、美夏が色っぽい声を漏らしたのである

 

そして、麻耶と美夏が入り終わったので義之が入ったのだが、かなり緊張しながら入った

 

何故かと言うと、美夏と麻耶の二人は誇張抜きに美少女である

 

そんな二人が入った後に入るというのは、かなり意識せざるを得ないだろう

 

そして義之が出ると、義之は二人をそれぞれ空いていた客間に案内した

 

その後、義之も部屋に戻り布団に入ったのだが……

 

「寝れるかちくせう……」

 

二人のことを意識し過ぎて、眠気がまったく来なかった

 

その後もウダウダしていたが、やはり眠れなかったので

 

「なんか温かいのを飲むか……」

 

体を温めて眠気を誘うことにして、義之は階段を下りた

 

すると、義之は使ってない縁側の居間から気配を感じた

 

芳野家には居間が二つあり、温かい春と夏は庭に面した居間を使い、寒い秋と冬の間は家の中央の居間を使うようにしている

 

そして、義之が気配を感じたのは庭に面した居間の方からである

 

義之は、さくらが帰ってきたのかな? と、首を傾げながら覗いてみた

 

すると、そこに居たのは……

 

「委員長……」

 

「あら、桜内」

 

SSPで見慣れたパジャマを着た麻耶だった

 

「少し待ってろ……」

 

義之は一旦離れると、台所に向かい、二人分のレモネードを作った

 

そして、麻耶の隣に座ると

 

「ほい、飲んどけ」

 

と、レモネードの入ったマグカップを渡した

 

「ありがとう……」

 

麻耶は受け取ると、口に運んだ

 

二人はしばらく無言で、レモネードを飲んでいた

 

すると、麻耶が上目遣いで

 

「なにも聞かないの……?」

 

と、義之に問い掛けた

 

「聞いたら、教えてくれるんか? だったら、いくらでも聞くぜ?」

 

と義之が言うと、麻耶はしばらく黙って

 

「少しね、反省してたの……」

 

と、呟いた

 

「反省?」

 

義之が聞くと、麻耶は頷き

 

「桜内の家に無理矢理来て、困らせちゃったから……」

 

「なに言ってるんだよ。決めたのは、さくらさんだろ」

 

麻耶の言葉を義之は否定するが、麻耶は首を振って

 

「その原因は、私が学園長に抗議したからでしょ?」

 

「そりゃそうだけど……」

 

麻耶の言葉に、義之が困ったように頭を掻いてると、麻耶は気になったのか視線を義之に向けて

 

「そういえば、ここは芳野学園長の家よね? 親戚なの?」

 

と、義之に問い掛けた

 

聞かれた義之は、首を傾げて

 

「あれ? 話したことなかったっけ?」

 

と、麻耶に聞いた

 

「全然、桜内と密に話すようになったのは最近だし……」

 

「そういやぁ、そうだった」

 

麻耶の言葉を聞いた義之は頭を掻くと、視線を上に向けて

 

「俺な……両親居ないんだ……」

 

と呟いた

 

義之の呟きを聞いた麻耶は、目を見開き

 

「ひょっとして……亡くなったの?」

 

麻耶の気遣うような声に、義之は慌てて手を振って

 

「あーいやいや、裕也みたいに殺されたとかじゃないんだ。ただ、気付いたら、一人でさくら公園に居たんだ」

 

「さくら公園に?」

 

麻耶が首を傾げると、義之は頷き

 

「そ、気付いたら一人でさくら公園に居てな。そこをさくらさんに保護されたんよ」

 

義之の言葉を聞いて、麻耶は沈痛な面持ちで

 

「そっちもヘビーじゃない……」

 

と呟いた

 

麻耶の呟きを聞いた義之は、頭を掻いて

 

「そうかね?」

 

と麻耶に聞くと、麻耶は無言で頷いた

 

「まあ、さくらさんに引き取られた後は、さくらさんの仕事が忙しいのもあって、朝倉家に預けられたんだ」

 

「だから、朝倉先輩や由夢さんと、あんなに仲がいいんだ」

 

義之の説明を聞いて、麻耶は朝倉姉妹との仲の良さに納得した

 

「まあ、家族同然に育ったからな……」

 

義之がそう言うと、麻耶はしばらく無言になった

 

そのまま数分間、二人は黙っていた

 

すると

 

「ごめんね、桜内」

 

義之に対して、唐突に謝ってきた

 

「いきなり、なんだよ」

 

突然謝ってきた麻耶に対して、義之は訝しんだ

 

「いきなり押しかけちゃって、桜内を困らせちゃった……」

 

「だから、それは、さくらさんが……」

 

麻耶の言葉に義之は反論しようとしたが、麻耶は首を振って

 

「そうだけど、桜内……天枷さんのことが……好きなんでしょ?」

 

「ぶふっ!?」

 

麻耶の爆弾発言に義之は動揺して、含んだレモネードを吹き出した

 

義之は数回むせると、視線を麻耶に向けて

 

「なんで、そうなる?」

 

義之が問いかけると、麻耶は俯いて

 

「だって……なにかと天枷さんと二人きりになろうとするし、私が天枷さんをお風呂に誘ったら、必死になって止めたし……」

 

「それにはワケがあってな……」

 

麻耶の言葉に義之は、なんとか反論しようとしたが

 

「そのワケって、なに?」

 

「むぅ……」

 

言える訳がなかった

 

もし、美夏がロボットだとバレたら麻耶はどんなことをするか、義之には想像が付かなかった

 

「ほら、言えないんじゃない」

 

「それは……」

 

麻耶の指摘に、義之はどうすべきか悩みだした

 

すると、麻耶は下を向いて

 

「安心して、明日には帰るから……」

 

と言うと、立ち上がろうとしたが、それを義之が掴んで止めた

 

「なに……?」

 

「聞いてくれ、委員長……」

 

義之はそこで深呼吸すると、麻耶の目を見つめて

 

「俺には確かに、好きな人が居る。だけど、それは天枷じゃない……好きなのは……委員長……お前だ」

 

と、一息で言った

 

それを聞いた麻耶は、目を見開き

 

「ウソよ……」

 

と呟くが、義之は首を振って

 

「ウソじゃない……俺が好きなのは、間違いなく、委員長だ」

 

再び義之が言うと、麻耶は顔を赤くして座り込み

 

「私も……私もね、桜内のことが好きだよ……?」

 

麻耶のその言葉に、義之は嬉しそうにするが

 

「でも……信用出来ないよ……だって、桜内だもん」

 

と、俯いた

 

それを聞いた義之としては

 

(俺って、委員長の中じゃどんな奴なんよ……)

 

と、内心で首を傾げた

 

「まあ、どうこう言ったって、俺が好きなのは委員長なんだ。それは変わらない」

 

「桜内……」

 

麻耶に見つめられて、義之は気恥ずかしくなって

 

「そんじゃ、そろそろ部屋に戻ろう。風邪引いちまう」

 

と言いながら、立ち上がった

 

すると、麻耶が裾を掴んで

 

「待って……もう少し、一緒に居て……」と、義之に願った

 

すると義之は、肩をすくめてから座った

 

すると不思議に、義之と麻耶は見つめ合い、そして少しずつ、互いの顔が近づき……

 

「んっ……」

 

「……」

 

二人の唇が重なった

 

こうして、また一つの道が重なり、歯車は動きを変える

 

この恋路がどうなるのかは、当人達は知らない……


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