D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
義之side
「う~っす、義之!」
やたらとテンションの高い声と共に、後ろから肩を叩かれる。
振り返ると、見慣れた(アホ)顔。
「あぁ、渉か。おはよ」
「ん? どうした? なんかテンション低くね?」
「んな、朝っぱらからテンションあげられるかよ」
大体、俺はそんなキャラじゃないし。
「マジかよ。俺なんか今日、朝からすげーわくわくして、めっちゃ早起きしちゃったって言うのに! ってことで、さっそく行こうぜー」
そのまま渉は、教室とは反対方向へと歩いていく。
「行くって、どこ行くんだよ? 教室、そっちじゃねえぞ」
俺は方向音痴にでもなったのか、筋違いな方向へと歩く渉《バカ》を呼び止めた。
「はぁ? なに言ってんだよ義之くん、行くって言ったら見学に決まってるだろ?」
「見学?」
「あぁ」
「なんの?」
「転校生だよ、転校生。今日、うちの学校に転校生がふたり来るって。義之も聞いてるだろ?」
「いや、知らん」
俺は正直に答えた。
「ちょあ、マジかよ! お前な~、あんだけ噂になってるのに、つーか、非公式新聞、読んでないのか?」
「読むわけないだろ」
あんな怪しいの。
「マジでっ!」
うるさい。
驚きの表情を浮かべる渉。
ってか、本当に読んでるヤツがいたことの方が驚きだよ。
杉並のヤツの満足そうな顔が一瞬、脳裏に浮かんで、少し嫌な気分になる。
「んで、その転校生はウチのクラスに来るのか?」
俺は正直な質問をぶつけた。
「いや。ふたりとも付属だけど、ひとりは2年、もうひとりは1年だってさ」
だったら、俺が知るわけないがな。
「なんでも、ふたりともかなりの美少女らしいぞ、この時期に転校してくる下級生。しかも美少女! たまらんなぁ、義之!」
そう言って、ぐへへとだらしない(放送ギリギリ)笑みを浮かべる。
ったく、朝からホント元気なやつだ。
「だから、ほら、早速行こうぜ。職員室」
自首しにか?
「いや、俺はいいよ。そんな興味ないし」
「はぁ、なに言ってんの、お前? 美少女がふたりも来るんだぞ? それを、それをーーっ! 興味がないとおっしゃるのですか、あなたは!」
渉は、ぐいっと身を乗り出してきた
呼吸も荒く(まるでドコゾの変態みたいに)。
「あ、そーですか。そーいうことですか、義之さん、まぁ、すでにモテモテの義之さんには、転校生なんて興味の対象になんてならないわけですね、転校生に期待を膨らませてる僕らを見て、冷ややかな笑みを浮かべているわけですね、くきーっ!」
「べ、別にそういうわけじゃないけどさ」
てか、モテモテってなんだ
「だったら一緒に見学に行こうよ~」
「いや、別にひとりで行けばいいだろうが」
「だ、だって、なんかひとりで見に行くの、ちょっと怖いじゃん、だから一緒に行こう。ね、義之くん」
身体をくねくねさせながら、俺の手を取ってくる。
ってか、きもい。
ったく。
「わかったよ。行きゃいいんだろ、行きゃあ」
「おぉ~、心の友よ~」
そして、渉にがっしりと肩を組まれた。
ジャ○アンか
「んでは、新しい出会いを求めて、れっつらご~」
渉に引っ張られるようにして、俺たちは職員室の方へと向かった。
「ありゃ? 誰も居ない」
職員室前についたところで、渉がきょろきょろとあたりを見回す。
「おっかし~な。俺の予想だと、職員室は転校生を一目見ようって大勢の生徒でごった返しているはずなのに」
あほか
「みんながみんな、お前と同じ発想なわけないだろ?」
そうしないと、他の連中がかわいそうだ。
「んなこたーない! 男って言うのは美少女転校生が来るって聞けば職員室まで見に来る生き物なんだよ」
「さいですか」
お前の思考が既に負け犬なのは、気のせいか?
ま、実際はひとりもいないわけだが。
「おっかし~な」
渉はそのまま、職員室のドアの隙間から中を覗き込んだ。
どこぞのストーカーみたいだな。
「それらしいヤツはいるか?」
俺は、覗き込んでいる渉《バカ》に聞いてみた。
「いや、なんの変哲もない職員室風景だな」
なんだよそれ
「転校生が来るってのは、正しい情報なのか?」
俺は一応確認した。
「あぁ、なんせ非公式新聞に書いてあったからな」
「・・・・・・」
バカだ、バカが居る!!
「な、なんだよ。その沈黙は」
お前が愚かだからだよ
「他の情報源は?」
まさか
「ない」
マジで真正のバカだ!!
「・・・・・・」
「あんだよ」
お前のバカさ加減に呆れてるんだよ!
「いや、別に・・・・」
俺は怒りたい気持ちを押さえ込んで、返事をした。
確かに非公式新聞部・・・・ってか杉並の情報収集能力はすごいものがあるけど、それと同じくらい適当《ガセ》なことを言うからな。
ガセの可能性もあるってことか。
俺はポケットから携帯を取り出して、時間を確認した。
もうすぐ、ホームルームが始まる時間だった。
「とりあえず、一旦戻ろうぜ。その転校生の情報自体、正しいかどうかの判断がつかん」
ってか、これで遅刻でもしたらばかみたいだしな。
「いや、俺はもうちょっとだけ」
そう言って、渉はもう一度職員室を覗きに行った。
しょうがない。
俺は教室の方へと足を向ける。
「んじゃ、俺は先に戻ってんぞ」
振り返って、渉にそう声をかけた瞬間だった。
「「あ!」」
と、驚いた声
「きゃ!」
ぽすんと胸元に衝撃。
そして、
「うわっ!」
そのまま俺の視界が天井を向いた。
身体が後ろに倒れる感覚。
どすっ!
痛ぇ!
「あだっ!」
背中を打ち付けられる衝撃。
視界が暗転する。
「いてててて」
そして、身体に圧し掛かる重み。
右手のひらには柔らかい感触。
「ん? なんだ、この感触は?」
手のひらを握りこむように動かすと、その柔らかな物体も俺の手の動きにあわせて形を変える。
「・・・・って」
視界が戻ってくると同時に、俺は状況を理解した。
「あ~あ」
「やっちゃった・・・」
む? この声は?
俺は聞き覚えのある声に思考を向けてしまった。
そこには、裕也とフェイトが居た
なんか、額に手を当ててる
「・・・・・」
改めて俺は、目の前の少女に視線と思考を戻した。
目の前には美少女の顔。
こんな状況でも、思わず見惚れてしまうくらいの美少女だった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「で……あなたはいつまで、わたしの胸を触ってらっしゃるおつもりなのかしら?」
「あ、ご、ごめん!」
俺は慌てて右手を離した。
「・・・・・」
目の前には、ぎろりと俺を睨んでいる女の子の顔。
女の子から発せられる、甘い匂いが鼻腔をついた。
「・・・・・」
「あっと、あの、最初に言っておく。わかっているとは思うけど、これは事故だからな」
「・・・・・」
「その、まぁ、なんだ。とりあえず、一旦落ち着いて話をしようじゃないか」
「・・・・・」
「いや、その、キミが非常にご立腹だということも、感情がそこに到るまでの過程も十分と言っていいほど理解しております。ただ、暴力では何も解決しないと思うんだ、とりあえず、その振り上げたまま、ふるふると怒りに打ち震えている右手を下ろしていただくと・・」
「義之、諦めろ」
「言い訳はかっこ悪いよ?」
やっぱりだめか
「こんのぉぉぉぉぉ、スケベおとこぉぉぉ!」
女の子の右腕が振り下ろされた。
「ちょ、ちょっと待っ!」
怒声と共に風を切る音が聞こえて、
パシン!
「ほげっっ!」
頬に強い衝撃が駆け抜けた。
一瞬、視界が今度はホワイトアウトする。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・、もう、さいってー!」
女の子は怒声と共に立ち上がり
肩で息をしながら、俺を見下ろしている。
「いや、だからー」
俺は弁明しようとしたが
「うるさい!!」
女の子は気付くとバリアジャケットを展開した。(詳細は設定を参照)
「ちょっ!?」
女の子の持っていた杖の上端にあった六芒星マークの小物が外れて、そこから鎌の様な魔力刃が形成された。
「やれやれ、フェイト。クロノさんに連絡して」
「わかった」
後ろからそんな声が聞こえたが、今の俺には意味は無い
「死になさーーーーい!」
女の子は魔力刃の形成された杖を俺めがけて、振り下ろした、
が、次の瞬間
「はい、そこまで」
と、聞こえて魔力刃は裕也の左手の人差し指と中指で止められていた。
義之sideEND
第3者side
「はい、そこまで」
転校生の女の子が振り下ろした薄紫色の魔力刃は裕也の左手の人差し指と中指に挟まれて、義之の髪先寸前で止まっていた。
「なっ!?」
しかも、女の子の首筋には刃渡り40cmほどの刀が向けられていた。
「助かった・・・」
女の子が驚き、義之が安堵していた。
「流石にやりすぎだ、今回のは出会いがしらの事故だ、最初のビンタは見逃したが”これ”は見逃せない」
裕也は左手で魔力刃を止めながら、女の子を睨んだ。
「それに、校舎内でのデバイス展開は校則違反だよ?」
ほら、と、フェイトは生徒手帳を見せた。
そこには、校舎内での校則第9条特別項目第12項<校舎内でのデバイス展開は緊急事態以外全面禁止>と書かれていて、その下には<尚、生徒会役員及び風紀委員は許可を得てからならば展開可能>と書いてある。
「ですが!」
「言い訳無用」
<お嬢様、彼の言う通りでございます!>
「グラーマまで!」
裕也は転校生が持ってる杖の中間を見た、そこには紫色の丸い宝石が埋まっており、それが点滅していた。
「なるほど、インテリジェントデバイスか」
<それに彼の刀、かなり厄介ですよ>
「どういうこと?」
<私のプロテクションを切り裂きました>
「な!? グラーマのプロテクションを!?」
「やはり、防御特化型のデバイスか。他のプロテクションより硬かったからな。だが、この鉋切長光《かんなぎりながみつ》の刃には意味を成さないぞ?」
「”切る”ことならば、裕也の持ってる刀のなかでは最強だっけ?」
「ああ、俺の知る限りだがな、今まで切れないってのは無かったな」
その時だった。
「ここか? デバイスを無断展開した転校生が居るというのは」
と裕也たちの後ろの階段から、耳が見えるくらいで切られた黒髪に若干童顔気味な男子が数名の風紀委員会役員を連れてやってきた。
「ええ、そうですよ。クロノ先輩」
その人物の名前はクロノ・ハラオウン、名前で分かると思うがフェイトとアリシアの兄に当たる人物で、風紀委員会の副会長を務めている。
更には、風紀委員会精鋭部隊<アースラ>を率いる部隊長でもある。
「やれやれ……君達、彼女を風紀委員会室まで連行」
「「「はい!」」」
「義之と渉は教室へ戻れ。後、渉。デバイスを展開しなくてよかったな?」
渉の右手には、渉のインテリジェントデバイスの<ブリューナク>の待機形態の青いカードがあった。
「先に戻ってるぞ?」
「おお…因みに、展開してたらどうなってた?」
渉は気になったのか、恐々とした様子で聞いてきた。
「最低でも、反省文10枚だな。最高で30枚」
使う用紙は、作文用の3000文字のものだ。
「マジで!?」
「おおマジだ」
「うん」
「相変わらず、デタラメな刀を持ってることで」
「ついでに、シグナム先生に生徒会関係の用事で少し遅れると伝言頼む」
「私も」
シグナム先生とは、裕也たち付属3年3組の担任だ。
体育教師でいつもジャージを着ているピンク色の長髪をポニーテールに纏めている女性だが、その正体は、はやての有する魔道書の「夜天の書」の守護騎士プログラムとやらで、まあ、人間に近い人工生命体だ。
「わかった」
「任せとけ」
「「頼んだ」」
そうして、渉と義之は教室へ、裕也とフェイト、そしてクロノ達風紀委員会は風紀委員会室に向かった。