D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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治療と裕也の・・・

第3者side

 

「ウェンディ・・・俺は置いていけ・・・」

 

とウェンディの背中で、息絶え絶えになっている裕也が言った。

 

「何を言ってるっすか!」

 

裕也の言葉を聞いたウェンディは、思わず叫んでしまった。

 

「俺は……簡単には”死なない”知ってるだろ?」

 

「知ってるっすけど・・!」

 

確かに、裕也はとある理由で簡単には死なない。しかし、今は12月でしかも夜だ。気温は0℃近い。

 

しかも、ウェンディは気付き始めていた。

 

(裕也の体温が低下し始めている!)

 

下手したら、裕也が死んでしまう可能性が高い。

 

「もう少しでドクターのところに着くっすから!」

 

ライディング・ボードで移動し始めてもうすぐ10分経過する、距離的にはもうすぐのはずだ。

 

と、遠くに見覚えのある建物が見え始めた。

 

「見えた!!」

 

ウェンディは内心で喜んだ

 

(これで裕也を助けられるっす!!)

 

そして、建物の近くでウェンディはボードから降りた。

 

建物の壁には看板が着いており、看板には「町医者 無限の欲望 J・S医院」と書いてあった。

 

因みに裕也は、この看板を見るたびに「もう少しマトモな名前は思いつかなかったのか」と言う。

 

ウェンディはボードを壁に立てかけて、建物の裏手に回った。

 

すると、勝手口が開き、中から1人の男が顔を見せた

 

「入れ、準備は整っている!」

 

男は髪の毛は紫で肩あたりまで伸ばしており、眼の色は黄色、この男の名前はジェイル・スカリエッティと

言う

 

「ドクター! 裕也が、裕也が!!」

 

とウェンディは、背中に背負っていた裕也をスカリエッティに見せた。

 

「わかっている、早く入れ」

 

ウェンディはスカリエッティの言葉に従い、中に入った。

 

中は仕切りによって細かく区切られており、部屋ごとにベッドや診察台が置いてある。

 

スカリエッティはそれらは無視して、さらに奥に進む。

 

奥には「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたドアがあった。

 

スカリエッティはそのドアを開ける、そこにはロッカーが並んでおり、1番奥のロッカーには「使用禁止」の札が貼ってある。

 

スカリエッティは、そのロッカーの鍵を開錠して開けた。すると、中には地下に続く階段が存在した。

 

狭かったのは入り口のみで、中は広かった。

 

少し降りると、下に光が見えた、そして光りを超えるとそこには広大な空間が広がっていた。

 

奥の壁には巨大なモニターが光っており、画面には様々な情報が流れている。

 

そして中央には、手術台のようなベッドが置いてあり、その周囲には治療道具が台車で置いてある。

 

「そこに裕也くんを寝かせたまえ」

 

とスカリエッティは、ベッドを指差した。

 

「了解っす。裕也、少し我慢するっすよ」

 

ウェンディはなるべく、裕也にダメージを与えないように優しく寝かせた。

 

裕也の傷は遠めに見ても重傷で、左半身に集中しており特にわき腹が酷い。

 

「ふむ、既に再生が始まっているが鈍いな、ウーノ輸血の準備を!」

 

と、スカリエッティは右手の壁際に居る薄い紫色の髪の毛が特徴の女性、ウーノに言った。

 

「わかりました、A型でしたね?」

 

ウーノは棚の引き出しから輸血パックを取り出し、それを台車のトレーに置きながら聞いた。

 

「それと、麻酔と糸。針とピンセット、後は包帯も頼む」

 

スカリエッティは続いて指示を出し、ウーノは指示に従い取り出した道具をトレーに置いていく。

 

「さてと、治療を始めようか」

 

と、スカリエッティは言うと、治療を始めた。

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

そして、約1時間後

 

「ふぅ、これで大丈夫だ」

 

スカリエッティは、持っていた針を置きながら言った。

 

「この傷は全て銃創ですね。彼が被弾するなんて、珍しいですね?」

 

ウーノは包帯を巻きながら驚いていた、それは裕也の戦闘力と戦闘技術を知ってるが故だった。

 

「裕也は・・・あたしを庇ったからっす・・・」

 

と、入り口そばの影になっている所に、ウェンディが座り込んでいた。

 

「あたしが気付かなかったから・・・裕也は・・!」

 

ウェンディは、涙を滲ませながら叫ぶ様に言った。

 

「いたし方あるまい。まさか、1人だけ生き残ってるとは思わなかった」

 

裕也を撃った男は、偶然生き残っていた男だったのだ。

 

「それでも、あたしが気付かないといけなかったのに!!」

 

叫びながらウェンディは、拳を血が滲むほど握り締めた。

 

「仕方ないだろ・・・偶然見えたんだ・・・」

 

裕也は痛みを堪えるように喋りながら、起き上がった。

 

「裕也、起きちゃだめっすよ!!」

 

ウェンディはすぐに駆け寄って、裕也を支えた。

 

「”見えた”のは”左目”だね?」

 

「・・・・はい」

 

裕也はスカリエッティの質問に、ゆっくりと返事をした。

 

「左目ってことは”アイオンの眼”っすか!?」

 

「ああ」

 

裕也はベッドから降りた。

 

「流石はドクターですね、もうほとんど治ってる」

 

「帰るのかね?」

 

「はい、エリオとキャロが待ってますから」

 

と、裕也は自分の格好を見て気付いた。

 

「しまった、制服と荷物忘れた」

 

裕也が頭を掻いてると

 

「これだろ、回収しておいた」

 

と、裕也の隣にチンクが来て、装備の入っていたトランクと風見学園の指定カバンを手渡した。

 

「ありがとう、チンク」

 

と、裕也は受け取ると、制服に着替えて階段に向かう。

 

「治療したとはいえ、2日間は無理しないように」

 

「わかりました」

 

裕也は入り口で返事をすると、そのまま階段を上がっていった。

 

そして、裕也が去ってドアが閉まる音が聞こえると

 

「さて、裕也くんが怪我してしまったので、しばらくの間は君達、頼んだよ?」

 

と、スカリエッティは室内に居る全員に言った。

 

「「「「「はい!」」」」」

 

全員返事をすると、階段を上って去っていった。

 

それを確認したスカリエッティは、近くにあったパソコンを設置してある机のイスに座った。

 

「ふぅ………」

 

と、ため息を吐いた時だった。パソコンの画面に電話のマークが現れた。

 

スカリエッティはその電話マークをクリックした。すると、画面に水色の髪の毛が特徴の若い女性が映った。

 

「やぁ、リンディ」

 

そう、その女性の名前はリンディ・ハラオウンと言いフェイトとアリシア、そしてクロノの母親である

 

しかしクロノたちの年齢を考えると40歳は超えてるはずなのだが、見た目が30前半か下手すると20代後半にしか見えない。

 

『今、警察《こっち》の現場検証が終わったわ』

 

リンディは、警察のとある機関の課長なのだ。

 

「ふむ、それでどうだったかね?」

 

『ええ、今回も”連中”の関与があったわね。それと、子供たちは全員保護したわ』

 

「そうか」

 

スカリエッティがうなずくと

 

『裕也君、怪我したわね?』

 

「ああ、うちのウェンディを敵の銃撃から庇ったんだ、”アイオンの眼”で気付いてね」

 

それを聞いたリンディは、画面の向こうで驚いた顔をして

 

『”アイオンの眼”を!?』

 

「ああ、先ほど帰宅したがね」

 

『そう・・・、それと先ほど士郎さんから気になる電話を聞いたのよ』

 

「気になる電話?」

 

『裕也君ね、「俺は自分の”罪”を償うまでは死ねませんから」って言ったそうよ』

 

「そうか・・・・”あれ”は彼も被害者なのにな・・・」

 

そう言ってスカリエッティは、机の右端に立っている写真たてを見る、その写真にはリンディとクロノに似た男性とスカリエッティ、そして裕也の両親を含めて10数人が写っている。

 

『”あれ”からもう9年なのね・・・』

 

「ああ、そして脱走から11年だ」

 

スカリエッティはそう言って、引き出しを開けた。

 

そこには、1冊のぶ厚いファイルがあった。

 

スカリエッティはそれを出して、机に置いた。

 

表紙には「人工アイオンの眼移植計画」と書いてある、スカリエッティは表紙を捲った。

 

そこには、今から13年前の日付が書かれている。

 

スカリエッティはそれを無視して、ページを高速で捲った。

 

そして、とあるページで止まる。

 

そこには「人工アイオンの眼被検体候補者」、プロジェクトα・Ωと書かれており、下には「尚、被検体たちには人工アイオンの眼を使いこなさせるために強化手術を施す」と書いてあった。

 

「私も愚かだったよ」

 

『・・・・』

 

スカリエッティは自嘲的な笑みを浮かべて、さらにページを捲る

 

すると、1人の赤ちゃんの写真が写っているページで止まる。

 

その赤ちゃんは、どこか裕也に似ている。

 

しかし、本来名前が書かれている場所には「被検体No E-666」とだけしか書かれていない

 

「彼は最大の被害者なのにな・・・・」

 

と、スカリエッティはイスの背もたれに寄りかかり、上を見上げた。

 

『ええ・・・』

 

リンディもそれに賛同していた・・・・


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