D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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それぞれの日常 そして……

義之side

 

俺たちは今、2人で台所に立ち料理していた。

 

これが俺達の日常だ。

 

ぐつぐつと音を立てる鍋から、煮物のいい香りが漂ってくる。

 

「ん~、もう一味かな?」

 

「ほい、醤油《しょうゆ》」

 

俺は、音姉《おとねえ》が欲しいものを予測して手渡した。

 

「ありがと」

 

当たったようで、音姉が醤油で味を整える。

 

おたまで煮汁をひとすくいして、軽く味見。

 

「うん。いい感じ、いい感じ♪ はい、弟くん。どうかな?」

 

口元におたまを寄せられる。

 

「あ~ん」

 

「あ~んとか言うな」

 

俺は、若干気恥ずかしくなりながら言った。

 

ずずっと、中の煮汁をすする。

 

口の中に、醤油とみりんの柔らかい味が広がった。

 

文句なしの味付けだ。

 

流石は音姉。

 

「うん、おいしい」

 

俺は素直に賞賛した。

 

「よし、完成~♪」

 

コンロの火を止めて音姉がにっこりと微笑む。

 

「お魚の方はどう?」

 

「いい感じに焼けてるよ」

 

俺はグリルを覗きながら答えた。

 

音姉とふたりでの夕食作り。

 

別段珍しいことでもなくて、もう日常の風景となっていた。

 

夕食時になると、隣の朝倉家からやってきては一緒にご飯を作って、食べて、団欒《だんらん》して、そして帰る。

 

俺が、芳野《よしの》家に移り住んでからもう半年以上。ほぼ毎日のように繰り返されてきた日常だ。

 

こんな日常も、まぁ悪くないと思う。

 

「おーい由夢~、皿の用意しろ~」

 

ついでに、もうひとり。

 

俺は、たぶん居間でぐで~っとしているだろう由夢に声をかける。

 

「え~、かったるぃ~」

 

と、予想通りの、なんとも情けない返事が返ってきた瞬間。

 

「由夢ちゃん!」

 

と、音姉の叱責が飛んだ。

 

「や、冗談ですってば」

 

いかにも、かったるそうな台所にやってくる由夢。

 

その姿は、ジャージにメガネとリラックスしきった格好。

 

学校での姿とのギャップが激しいと言うか、なんと言うか。

 

因みに、こっちの方が由夢の本性だ。

 

「や、それにしてもおふたりさん、お似合いだね。まさに新婚さんって感じですか?」

 

何時もの対音姉の言葉を言う由夢

 

「し、新婚さん~、な、なに言ってるのよ由夢ちゃん。やだな~(テレ)」

 

隣でもじもじと、エプロンの裾《すそ》を弄りだす音姉。

 

なにを照れてるんだかこの人は。

 

「妹《・》としましては、仲の良いおふたりの至福の時間を邪魔してしまうのはいかがなものかとちょっと考えてしまうわけでして」

 

「はいはい、いいからとっとと皿の用意しろ」

 

俺は、おふざけとわかってる由夢の言葉を軽くスルーして、由夢に促した

 

「はーい。兄さんはノリ悪いなー」

 

ほらな

 

由夢の(渋々)用意したさらに料理を盛り付けていく。

 

肉じゃがに、塩鮭。それとご飯に味噌汁と。

 

「そんな、新婚さんだなんて・・・・・」

 

隣では、音姉がどこか遠くの世界に旅立っていた。

 

いい加減に帰って来い。

 

そして俺達はご飯を食べながら、クリパのことや、委員長のことを話したりした。

 

 

 

 

義之sideEND

 

 

 

裕也side

 

「ありがとうございました。またお越しくださいませ!」

 

俺は、レジで精算して帰るお客様に何時ものセリフを言って頭を下げた。

 

「裕也くん、お疲れ」

 

「お疲れ」

 

「「お疲れさま」」

 

そう俺に声をかけてくれたのは、なのはの父親の高町士郎《たかまちしろう》さんと、お兄さんの高町恭也《たかまちきょうや》さん。それにお姉さんの高町美由希《たかまちみゆき》さん、そして母親の高町桃

子《たかまちももこ》さんだ。

 

「お疲れ様です」

 

俺は同じように返事をした。

 

「裕也君、お疲れ様」

 

そう言いながら、なのはがキッチンの奥から現れた。

 

なのはは現在、ここ喫茶翠屋の2代目の店長になるべく修行中の身だ。

 

え? 本当ならばお姉さんの美由希さんがなるはずだって? それはダメです。美由希さんが料理を作る

と、大抵殺人級の料理に化けてしまうのだ。(美由希さんが作ったお菓子が原因で、以前俺は4時間意識不明になった。)

 

「それじゃ、今日はもう閉店ね」

 

そう言って桃子さんは、ドアの札を「OPEN」から「CLOSE」に変更した。

 

「皆さん、今日もお疲れ様でした」

 

「「「「「お疲れ様でした!」」」」」

 

俺たちは店長である、桃子さんの前に整列した。

 

ここ喫茶翠屋では士郎さんではなく、桃子さんが店長だ。

 

「それじゃあ、忍《しのぶ》ちゃん、お願いね?」

 

桃子さんがそう言うと、俺の右の6番目、一番端に立っていた月村忍《つきむらしのぶ》さんが前に立っ

た。

 

「皆さん、今日もお疲れ様でした」

 

「「「「「お疲れ様でした!」」」」」

 

「それでは、明日のバイトの方の出勤者の確認をします。まずは有村さんに次に・・・」

 

なんで、高町家ではない忍さんがそんなことをやっているかと言うと、忍さんはここ喫茶翠屋のチーフウエイトレスで、バイトの人達の出勤などを確認したり、桃子さんの代わりにフロアでの指示出しなどをするのが仕事だ。

 

因みに、忍さんは資産家のお嬢様であり、なのはの兄の恭也さんの恋人だ。

 

そして、忍さんの確認も終わり

 

「それでは、今日はこれまで、皆さん明日も頑張りましょう!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

解散になった。

 

俺が、スタッフルームで着替えて帰宅しようとした時だった。

 

「裕也くん」

 

と士郎さんが、他の皆に聞こえないように耳打ちしてきた

 

「あまり、無理はしないように、もし君になにかあったら、幸也《ゆきや》さんと彰子《あきこ》さんに申し訳が立たない」

 

と言われて

 

「俺は自分の”罪”を償うまでは死ねませんから」

 

と言って俺は翠屋を出た

 

 

 

 

裕也side一時アウト

 

 

士郎side

 

「”あれ”は君のせいなんかでは、ないのにな・・・」

 

私、高町士郎は帰宅する裕也くんの背中を見ながら呟くことしか出来なかった。

 

 

士郎sideEND

 

 

裕也side復活

 

「寒いな・・・」

 

流石に、夜の10時は寒くてマフラーを口元まで上げた。

 

と、その時だった。ポケットの中に入れていた携帯が震えた。

 

「誰だ?」

 

俺は携帯を開いて確認した。

 

「メールか」

 

俺はメールのアイコンをクリックして、パスワードを入力した。

 

「!」

 

差出人はJ・Sとだけ書かれており、そしてメールの本文には画面いっぱいに”黒”だけが映り、しばらく

ボタンで下にスクロールすると、10桁の数字が書かれている。

 

「任務か」

 

俺はそう言いながら、10桁の数字を押して通話ボタンを押した。

 

『やあ、ちゃんとメールがいったようでよかったよ』

 

「ドクター、今日の任務の場所は?」

 

『場所は風見湾の倉庫群の7番倉庫だよ。装備はすでにウェンディに運ばせた』

 

「わかった、すぐに向かう」

 

『頼むよ、守護者《ガーディアン》よ』

 

と言い通話は切れた、俺は携帯をポケットに突っ込むと目的地に向かい走り出した。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

走り出して約10分後、俺は目的地の風見湾のすぐそばに着いた。

 

「裕也、こっちッスよ~」

 

と聞こえたので声のほうを向くと、そこには肩あたりまで伸ばした赤い髪を後頭部に纏めた俺と同い年くら

いの女の子がいた。

 

この子が、先ほど言われたウェンディだ。

 

「ウェンディ、装備は?」

 

「ここにあるッスよ」

 

と手渡された銀色のトランクを、俺は留め金を外して開けて中身を確認した。

 

「確かに、確認した。着替えるか」

 

と言い俺は、周囲を確認して手ごろな小屋を見つけた。

 

そして中に入り、俺は着ていた制服を脱いでトランクに入っていた黒一色の服を身に纏い、腰には銃を装備

して脇には銃の予備マガジンをつけて、頭から足元までスッポリと覆う黒いマントを纏い、最後は顔に目元に赤い涙のような模様の書かれた白い仮面を着けてから外に出て、ウェンディを見て。

 

「ゼストさんは?」

 

と聞くと

 

「既に展開済みッス」

 

「よし、では行こうか」

 

と、俺は7と書かれた倉庫を見た。

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

第3者side

 

倉庫の外には、2台の黒塗りの車が停車していて、倉庫のドアの近くには夜なのにサングラスをかけた男達が周囲に目を光らせていた。

 

 

 

そして暗い倉庫の中。大きな木箱を机代わりにして、木箱の上にはランタンが置かれ、木箱の周囲にイスに

座った2人を含めて20数人の男達がいた。

 

「で、例の物は?」

 

と右側に座っていた男が、前に居る男に聞いた。

 

「そう焦るな、ブツはあそこだ」

 

と左側に座っていた男が、後ろにある布に覆われた箱状のものを見ると

 

近くにいた男の部下が、布を取り払った。

 

「確かに、確認した」

 

と、箱状のケージを見ながら言った。ケージの中には数人の小さな子供がお互いの身体を抱き合いながら、

すすり泣いていた。

 

右側の男が、足元から同じようなトランクを木箱の上に置いた。

 

その瞬間だった。

 

倉庫の巨大なシャッターが、轟音と共に吹き飛んだ。

 

「「な、何事だ!!」」

 

炎の中から1人の黒尽くめの人間が現れた。

 

「貴様たちの処刑人だよ」

 

「外にいた連中はどうしやがった!!」

 

と男が問いただすと

 

「ああ、それは”これ”のことか?」

 

と裕也(相手は気付いてない)は、右手に持っていた球状の物を男達の方に投げた。

 

”それ”は1人の男の首だった。

 

「「てめぇ!!」」

 

男が声を張り上げると、周囲に居た部たちが懐から銃を取り出した。

 

しかし、気付くと裕也は居ない。

 

「遅い」

 

裕也の右手には先ほどまでは持っていなかった1本の刀が存在して、1人の男の後ろに立っていた。

 

そして、次の瞬間には男の首が切り飛ばされて、血が噴水のように噴き出した。

 

そこからは、一方的な蹂躙だった、ある男は頭から縦に切り裂かれて、もう1人は胴体を腰から両断されて絶命していく。

 

そして、銃声と肉を切り裂く音が響く。

 

しかし、裕也の刀はまるで舞うかのように剣閃が走った。

 

そして爆発から8分後、倉庫内外問わず男達の死体が転がった。

 

「相変わらず速いな」

 

裕也は声のほうを見ると、いまだ燃えているシャッター跡の炎が燃えていない場所に1人のガタイのよく茶色いコートを羽織り、左腕に手甲を装備していて、左手に巨大な槍のデバイスを持った中年の男性が居た。

 

「ゼストさんもですよ、そちらも終わったようですね」

 

男性、ゼストは倉庫の周囲に展開していた戦力の掃討を担当していた。

 

その証拠に槍型デバイスからは血が滴っている。

 

「ああ、しかし数ばかりだったな」

 

ゼストはそう言いながら、槍を振るい血を飛ばした。

 

「おや? あたしが最後でしたか」

 

とシャッターから先ほど別れたウェンディが現れた。違うのは右手にまるでサーフボードの様な専用複合兵装の「ライディング・ボード」を所持していた。

 

そして、ウェンディが裕也の近くに来た瞬間、裕也の”左目”がある”幻視《ビジョン》”が見えた。

 

(これは!!)

 

その幻視は、目の前に居るウェンディが身体をくの字に曲げて倒れる映像だった。

 

「裕也? どうしたッスか?」

 

と次の瞬間には、ウェンディが自分に近づいている。

 

「ウェンディ!」

 

と裕也は、ウェンディを突き飛ばしていた。

 

次の瞬間”死の羽音”が連続して響き、裕也の身体から血が霧のように噴き出した。

 

「裕也!?」

 

ウェンディが体勢を立て直しながら叫んだ。

 

そして、ゼストは銃弾が飛んできた方向。つまりシャッターの方を見るとそこには1人の男が手に自動小銃

《アサルトライフル》を持っていた。

 

「殺された仲間の仇だーー!」

 

と男は銃撃を再開した。

 

ゼストはバックステップして避け、ウェンディはライディング・ボードを楯のように構えて倒れた裕也の前に躍り出た。

 

(このままじゃ攻撃できないッス!)

 

とウェンディが危惧した瞬間

 

「IS《インヒューレントスキル》発動、ランブル・デトネイダー!」

 

と声が聞こえて、続いて爆発音が響いた。

 

「チンク姉《ねえ》!」

 

先ほどまで男が立っていた場所には、粉みじんになった男の肉片が飛び散り、近くには小柄な体躯に腰まで伸ばした銀髪、右目に眼帯を着けた少女、ウェンディの姉のチンクが居た。

 

「ウェンディ、ゼスト撤収するぞ。ウェンディは裕也をドクターの所へ」

 

「ああ」

 

「わかったッス!」

 

ウェンディは持っていたライディング・ボードを地面に置くと、浮き上がり倒れた裕也を抱えながらウェンディはライディング・ボードに乗ると

 

「ISエリアルレイブ発動!」

 

と言うと、ライディング・ボードは高速で飛び始めて空に消えた。

 

遠くからは、パトカーのサイレンが聞こえ始めていた。

 

 


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