D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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いよいよ、次回で最終回です


終章
さくら


通称《しゅうまつ戦争》から、約一年が経った

初音島の各地では復興が着々と進んでいたが、未だに多くの爪痕が残っていた

戦闘の余波で壊れた橋は後回しにされており、港湾施設も修繕されている最中である

ライフラインはなんとかなっているが、未だにヘリや飛行戦艦等で物資を運んできている

季節は春になり、桜が咲き始めていた

 

「あれ……ボク……どうして……」

 

その初音島で、ある人物が意識を取り戻していた

 

「そっか……桜が咲いてるからだ」

 

その人物

芳野さくらは、うっすらと存在していた

彼女は魔法の桜と同化し、音姫が枯らしたことにより意識も消えたはずだった

しかし春になり、他の桜が咲き始めたことにより散っていた意識が集められたのだ

ふと気付けば、さくらの意識は別の場所に来ていた

場所は、風見学園だった

学園の体育館には、未だに家が無い人達が過ごしている

ふと気付くと、さくらは生徒会室に居た

そこでは、音姫とまゆきが何かの書類を整頓していた

腕には生徒会の腕章はない

時期を考えると、引退しているのだろう

 

「あれから、一年か……」

 

「そうだね……最近、ようやく平和になったなって思えるようになったよ」

 

まゆきの言葉に同意するように、音姫がそう言った

そして、ある一枚の書類を音姫が見て、固まった

するとまゆきが、音姫の持っていた書類を覗き込んだ

そして、音姫が固まった理由を察した

それは、一人のプロフィール用紙と退学申請書だった

名前は、防人裕也だった

 

「……」

 

「音姫……」

 

その書類を見て、音姫は涙を流した

その少年は、命懸けで世界を救った英雄だ

しかし、自分達には感謝することすら出来なかった

 

「裕也君……」

 

そこで場所は変わり、スカリエッティの診療所

そこでは、怪我人の治療が行われていた

 

「いいですか、この怪我の場合はこうですよ」

 

「はい、わかりました」

 

とクアットロから教わったのは、小恋だった

小恋は本当だったら本島の専門学校に行く予定だったが、戦争の影響で医師が足りないことを鑑みて、教師免許を持っている者が近くに居ることを条件にして、スカリエッティ診療所にて勉強しながら実地研修中だった

更に、それを補助していたのは

 

「はい、これで終わりです」

 

「お姉ちゃん、ありがとう!」

 

由夢だった

由夢は学校で保健委員だった腕を買われて、小恋の補助をしていた

実際、由夢の補助は的確だった

小恋が間違えそうになったら、念話で指摘したりした

そして必要な薬があれば、そっと差し出していた

今も、包帯を小恋の近くに置いていた

そして、治療が一段落した時だった

スカリエッティが現れて

 

「二人とも、すまないが、これを学校に持っていってくれないか?」

 

と茶封筒と段ボールを指差した

 

「私達が、ですか?」

 

「本当ならば、私が行かないといけないんだなね。今から回診なんだ。すまないね」

 

由夢が問い掛けると、スカリエッティはそう言って去っていった

そして二人は、由夢が段ボールを、小恋が茶封筒を持って学校に向かっていた

すると、二人は舞い散る桜を見上げて

 

「……平和、ですね」

 

「そう、だね……」

 

と短く会話すると、また歩きだした

そこでまた場所が変わり、今度は天枷研究所だった

その一室では、麻耶と義之が何やらキーボードを叩いていた

すると、ドアが開いて

 

「沢井、桜内、そろそろ学校に向かう時間だぞ?」

 

と入ってきた人物

美夏がそう言った

それを聞いて、義之と麻耶は揃って背伸びしながら

 

「もう、そんな時間か……」

 

「気付かなかったわね」

 

と言った

どうやら、相当集中していたようだ

二人は作業を止めると、立ち上がった

すると、美夏が

 

「それで、美秋のデバイス構築はどうだ?」

 

と問い掛けた

すると、麻耶が机の上から赤いペンダントを取って

 

「今日の模擬戦でデータを収集して、それで微調整するわ」

 

と言った

それを聞いて、美夏はポンと手を叩きながら

 

「なるほど、だから学校に行くのか」

 

と納得していた

そして三人は、揃って学校に向かった

そこで場面が変わり、今度は高台だった

その高台では、蓮華、アリサ、神夜が歩いていた

その腕には《巡回員》という腕章が付けられていた

 

「戦争終結直後に比べたら、大分マシになったな」

 

「そうね……空き巣やら、強盗やら出たものね」

 

「それを見つけ次第、殴り飛ばしたのは二人でしたね」

 

と会話しながら、三人は海が見える場所に出た

そこには、先客が居た

 

「明久さん、結華さん」

 

「来てたんですか」

 

とアリサと神夜が声を掛けると、二人は顔を向けて

 

「ああ、うん」

 

「バイト、終わったからな」

 

と言った

そんな二人の前には、石碑があった

その石碑には

 

《世界を守りし英雄達、ここに眠る》

 

と彫られてあった

 

「ここに眠ってるわけじゃないけどね」

 

「やっぱり、来ちまってな」

 

二人はそう言うと、目を細めた

その表情で、さくらは気付いた

 

「そっか……裕也君……死んじゃったんだ」

 

裕也は、さくらとの約束を守って死んだ

世界を守るために、命を懸けて

その後もさくらは、色々な所を回っていき、見た

喫茶翠屋では、高町家とユーノ、ヴィヴィオが、裕也と撮影したのだろう集合写真を見ていた

警察署では、ゲンヤとリンディが新しく入ったらしい警察官に訓示を言いながら、死んだ警官達の為に黙祷していた

ホテルアルピーノでは、アルピーノ親子とエリオ、キャロが避難者のために走り回りながらも、悲しそうだった

八神家では、はやてが何やら必死に勉強していて、それを八神家一堂が心配そうに見ていた

そして気付けば、さくらはあの場所に居た

枯れた枯れない桜の所に

そこに、フェイトが現れて

 

「……裕也……世界は平和になったけど……やっぱり、裕也が居ないと、寂しいよ……」

 

と言って、泣き始めた

さくらはそれを見ると、枯れている桜を見上げて

 

「なんとかならないの!?」

 

と叫んだ

今まで見てきて、耐えられなくなったのだ

 

「枯れない桜は、願いを叶える! 例え、ひとつひとつが小さい願いでも、それが多く集まれば、必ず叶う! だから、叶えて!!」

 

とさくらが叫んだ

その直後、枯れていた枯れない桜が、輝いた


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