D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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終焉

「まさか、ここに来て敵の増援か!?」

 

「嘘でしょ!? あの数、どんだけ来たんだよ!?」

 

その艦隊を見て、明久と結華は絶望した

今でさえギリギリだと言うのに、これ以上は無理だと

二人の近くには、倒した使徒達が倒れ付している

その人数は、三十人は下らない

それは、周囲で戦っていた渉達も同じだった

全員、疲労で荒く呼吸している

これ以上の戦闘は厳しいだろう

全員が悔しさに、歯噛みした

その時

 

『こちらは、守護者部隊、欧州方面軍の者だ! 間違って撃つんじゃねぇぞ!?』

 

『同じく、アメリカ方面軍の者だ! よく頑張ったな、学生諸君!』

 

という通信が聞こえて、その艦隊から次々と魔導師が降下してきた

その人数は、万に届くだろう

守護者部隊の応援が、間に合ったのである

 

「間に合って、くれたんだ……」

 

「諦めるには、まだ早いぞ!」

 

「押し返せ!!」

 

応援部隊の到着で士気が上がり、意気消沈気味だった連合部隊は声を上げて前に出始めた

特に、学生達はそれが顕著だった

友達を助けるためにと、誰も死なせないと奮闘した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「これは……守護者部隊の応援か!」

 

「間に合ったか!」

 

上空に現れた艦隊を見て、蓮華やシグナムが嬉しそうな声を上げた

間に合わない確率の方が高いと思っていた二人は、半ば諦めかけていたのだ

それが間に合ったのだ

 

「諦めろ、てめぇら! ゆりかごも、最早役立たずだ!」

 

「大人しく投降しろ!」

 

二人が投降を勧告するが、使徒達は聞き入れない

次々と魔法を放っていく

二人はそれを回避か防ぎながら近付くと、使徒達を撃破していく

整っていた倉庫群は軒並み破壊され、地面は血肉で染まっている

倒れ付している死体は使徒が大半だが、警官の死体や聖王教会騎士団の騎士達の死体もある

誰も彼も志半ばで倒れた

無念だっただろう

その思いを果たさんと、その仲間達は叫びながら攻撃を続けた

本当は誰もが、一刻も早く戦いが終わってほしいと願っていた

平和になってほしいと

しかし、戦争に明確なルールなどは存在しない

勝つか負けるか

生きるか死ぬか

たったそれだけである

勿論だが、負けるつもりも死ぬつもりもない

だから、誰もが死力を尽くして戦っていた

生きるために

勝つために

 

「アアァァァァァ!!」

 

「オオォォォォォ!!」

 

剣を槍を杖を振るい、目の前の敵を打ち倒す

そうしなければ、友が家族が恋人が

大事な人達が、死んでしまうから

そんなこと、絶対に許せない

だから、彼等は死地に立った

 

「ヨハンナァァァァァァ!!」

 

「異端者がっ!」

 

そして裕也は、長年の決着を付けるために命を削っていた

口の端からは血を溢し、右腕は妖刀の影響で感覚は無くなっている

だがそれでも刀を振るい、戦っていた

死んでいった人達との、約束を果たすために

 

「アアァァァァァ!!」

 

「ギッ!?」

 

そして、とうとう裕也の一撃がヨハンナに当たった

その一撃で、ヨハンナの体から血が流れた

いつもだったら、次の瞬間には無傷のヨハンナが現れる筈だった

しかし、変わらなかった

ヨハンナの右肩から血が流れ、ヨハンナが右手に着けていた純白の手袋が真っ赤に染まっていく

 

「バカな……これは……っ!?」

 

「もっとだ……もっと、力を……っ!」

 

裕也が呟く度に、妖刀

童子切安綱から禍々しい力が溢れる

そしてそれを振るい、ヨハンナを斬り付ける度にヨハンナの傷が増えていく

 

「私の魂と同化していた、ヨハンナの神銘碑が……っ!」

 

「俺の命の全てをやる……だからっ!」

 

そして、裕也の一撃でヨハンナの右腕が飛んだ

 

「砕ける!?」

 

「ヨハンナを倒せる力を……俺に寄越せぇぇぇぇ!!」

 

裕也のその一撃は

 

間違いなく

 

ヨハンナの胸を

 

刺し貫いた

 

その光景に最初に気が付いたのは、フェイトだった

フェイトも無傷ではなく、顔の左半分は血で染まっている

だがその光景は、ハッキリと見えた

そのフェイトと戦っていた一人の使徒がフェイトの視線を追って、その光景を目撃した

そこから次々と、それが波及していった

そして、数分と経たずに戦闘は止まっていた

 

「これで終わりだ……ヨハンナ……」

 

「その……ようですね……」

 

その会話を最後に、裕也は刀を抜いた

その勢いでヨハンナは二三歩前に歩くと、膝を突いて倒れた

その直後、ヨハンナの肉体は消えた

それを見て、使徒達の士気は瓦解

潰走を始めた

それを逃がさないと、守護者部隊や警官隊、騎士達は次々と捕まえるか撃破していく

そんな中、フェイトは裕也に歩み寄ろうとした

だが、次の瞬間

 

「裕也!?」

 

裕也は、力無く地面に倒れ付した

フェイトは駆け寄ると、裕也を抱き起こした

そして、息を飲んだ

裕也の体が、イヤに軽かったのだ

いくら強化魔法を使ってるとはいえ、裕也の体を簡単に抱き起こせるわけがないのだ

そこに、ノーヴェが駆け寄り

 

「裕也! この馬鹿野郎が! 安綱は、使い手の血肉を食らう妖刀だろうが!? あれを使えば、死ぬってわかってただろう!! それに、闇の魔法もだ!」

 

と怒鳴った

 

「ノーヴェ、どういうこと?」

 

「……闇の魔法も安綱も、刧の目と同じように使い手を殺すんだよ……その対価に、莫大な力を与える……」

 

フェイトの問い掛けに、ノーヴェは苦々しげにそう答えた

それを聞いて、フェイトは言葉を失った

どうあっても、裕也に未来(明日)は無かったのである

世界と皆の未来(明日)を守るために、命を捨てていたのだ

そこに、続々と友人達が集まってきた

蓮華かアリサがはやてがシグナムがヴィータがなのはがヴィヴィオが義之が麻耶が音姫が由夢がまゆきがユーノが渉が杏が茜が小恋が美夏がザフィーラがすずかがシャマルがナンバーズが明久が結華がムラサキがクロノが

全員が集まった

裕也とフェイトを囲むように

ほぼ全員が怪我を負っていて、戦いの激しさを物語っている

 

「裕也! しっかりしろ!」

 

「戦いは終わったんだ!」

 

「もう、戦わなくっていいんだよ!?」

 

「だから、しっかりしろよ!」

 

全員が口々にそう言うが、裕也の体は動かない

それどころか、目に光がない

 

「皆……そこに……居るのか……」

 

囁くように、裕也が喋った

それを聞いて、全員は察した

もう、目も見えていないのだと

だからフェイトは思わず、裕也の左手を握って

 

「居るよ! ここに皆居るよ!」

 

と叫んだ

すると、裕也はうっすらと笑みを浮かべて

 

「俺さ……勝ったぞ……ようやく……長い戦いを……終わらせた……」

 

と喋った

それを聞いて、フェイトは頷いて

 

「そうだよ! だから、裕也も生きてよ!」

 

と泣きながら叫んだ

だが裕也は、それに答えず

 

「ようやく終わったよ……父さん、母さん……美樹……」

 

と言った

次の瞬間

 

裕也の体は、全員の目の前で消えた

数瞬後、悲痛な叫び声が島全体に響き渡った

こうして、初音島攻防戦

しゅうまつ戦争は、幕を下ろしたのだった


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