D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士   作:京勇樹

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最後の切り札

「ゆりかごが……止まった?」

 

「これは……」

 

ゆりかごが止まったことに気付いて、一部で困惑が広がっていた

 

「どうやら、ゆりかごは制圧されたようですね……ですが、それがどうしました?」

 

そう言ったのは、裕也を魔力弾で弾き飛ばしたヨハンナだった

 

「確かに、ゆりかごは制圧されました……しかし、依然として戦況は此方が有利です。此方には、まだ三万は居ます」

 

そのヨハンナの言葉に、その場に居た誰もが唇を噛んだ

禁書目録聖省の戦力三万

それに対して、連合部隊の戦力は約四百

その戦力差は圧倒的

数の差というのは、単純な暴力である

今は連合部隊の士気が高いから何とかなっているが、それも時間の問題だろう

疲労が溜まれば動きが鈍くなり、戦線が崩壊するのは間違いない

それ以前に、今は動きが止められている救難十四聖

そして、教皇ヨハンナ

それらが一斉に魔法を放ったら、対処は難しい

そして何よりも、対ヨハンナの切り札

(アイオン)の眼の使い手

裕也の消耗が激しかった

今裕也は、刀を杖代わりにして激しく呼吸している

何時まで戦えるのか、それは分からない

だが、長くはない

持って、後十分程だろう

 

「どうやら、その兵器ももう長くは動けないようですね」

 

ヨハンナはそう言うと、右腕を高々と掲げた

すると

 

「私が裁きを降します……契約により我に従え、高殿の王」

 

と詠唱を始めた

それを聞いて、フェイトが目を見開いた

 

「この呪文は……上位古代語(ハイ・エンシェント)呪文!?」

 

「止めろォォ!!」

 

蓮華の叫び声の直後、ヨハンナ目掛けて次々と魔力弾が放たれた

しかし、その全てが当たる直前で防がれた

それを行ったのは、ヨハンナの下に戻った救難十四聖だった

そして魔力弾を防いだ数秒後、救難十四聖が散開した

その直後

 

「千の雷!」

 

広範囲殲滅落雷呪文が放たれた

その時だった

 

「それを待っていたよ、ヨハンナ……」

 

と裕也が呟いた

それと同時に、地面に広大な魔法陣が形成された

太極図の魔法陣が

そして、その中心に居たのは、裕也だった

 

「敵弾吸収陣」

 

その呟きの直後、破壊の雷撃は裕也が掲げていた左手に集まっていく

 

「な!?」

 

それを見て一番驚いていたのは、他ならぬヨハンナだった

予想外の魔法で防がれたからだった

 

「貴様! それは、闇の魔法!?」

 

それは、禁書目録聖省でも名前しか知られてない魔法だった

過去に居た一人の吸血鬼が生み出し、使った魔法だ

しかし、それ故に制限があった

それは、《人ではないこと》

その理由は、生み出したのが吸血鬼だからである

そして使い手もまた、吸血鬼だった

つまりは、人外が使うことが大前提だったのだ

ならば、裕也は使えない筈である

裕也は使えるのだ

その理由は、裕也に行われた改造手術

その時に、裕也の中に龍種の遺伝子が組み込まれていたのだ

それにより、ほんの僅かではあるが、裕也は人では無かったのだ

それに気付いて、裕也は闇の魔法を修得したのである

切り札として

 

「魔法固定……掌握!」

 

裕也はそう言いながら、テニスボールサイズになった千の雷を握り潰した

その直後、裕也の体が発光し始めた

更に、裕也の周りにバチバチという音と共に雷光が走っていた

 

『HQより総員に通達! 今後、セイバー1には迂闊に触れるな! 今のセイバー1は体が雷と化している! 触れば感電する恐れアリ! 繰り返す!』

 

そう通信が入ると、裕也はまた左手を動かした

 

「左腕開放……千の雷……固定、掌握! 雷天双荘!!」

 

そして、同じ魔法を再度掌握した

すると、体から放たれる雷光が激しくなった

 

「裕也……まさか、雷の上位精霊化している?」

 

それは、雷に適性のあるフェイトだから気付いたことだった

雷の上位古代語魔法の二重装填

それにより、裕也は一時的にだが雷の上位精霊と化していた

それにより、裕也は体が常時雷化

移動速度と思考速度が桁外れに上がっていた

だが、その恩恵が続くのは裕也の魔力が切れるまでである

そして裕也は、最後の切り札を切る

 

「童子よ童子……我が身を喰らい、現身(うつしみ)となりて、過去の大怨を晴らせ!!」

 

裕也がその呪文を唱えた直後、安綱から桁外れの魔力が放出された

すると、ノーヴェが走り寄って

 

「裕也、このバカ野郎!! お前、それを使ったら体が中から食い尽くされるぞ!?」

 

と悲鳴混じりに叫んだ

その直後、裕也が吐血

それを見て、フェイトが駆け寄ろうとした

だが、それはウェンディによって止められた

フェイトがウェンディ見ると、ウェンディは泣くのを必死に堪えていたのが分かった

 

「ハッ……既に、この眼を発動した時に死ぬのは決まってるんだ……そんなの、今更だ!」

 

裕也はそう言うと、刀を構えて

 

「ヨハンナ……最後の戦いだ……俺が倒れるか、お前が倒れるか……さあ、始めようか!」

 

と宣言して突撃した

最後の突撃を


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