それから2年が経ち、俺は三人を呼び出した。
「フブキ、タキオ、アキホ、お前達三人を中忍試験受験の推薦をする。」
俺は呼び出して早々にそう告げた…一昨年はルーキーが出ると敵を多く回すことになるから推薦しなかったが去年は違う。去年は推薦し、三人は受験したがタキオが寝坊してそのまま三人共々試験を受けることなく脱落。そのあとの気まずさは半端ではなかったため、1日に平均6回という量を342日間、一ヶ月に一回有休と5日間×2の長期休みという無茶苦茶ハードなスケジュールでやらせてようやく気まずい思いがなくなった。もっとも1日4回を6回に変えただけだったから親からの苦情はなかったな。三人はそれが常識だと思っているし、親達も子供が問題児だからという理由で苦情を入れることはなかった…
「試験中は任務を受けなくていいんすか?」
「そうだ…だがタキオ、お前はもう試験会場である301号教室前で待機していろ。」
「なっ…!?」
「寝坊しないで来れるというなら別だが…お前は去年の事もある。」
「はあ…ういっす…」
タキオは項垂れて返事をし、どんよりと影を落とした。自業自得だ。
「アキホ、お前は試験官に暴力を振るうなよ?お前の事だ…やりかねん。」
「何年前の話だ!」
こいつのドSは少しなりを潜めたがそれでもドSだ。前に任務で理由は全く持ってわからないが拷問の任務が回ってきたのでアキホに一任したところ拷問部隊のイビキさんから物凄い感謝された。そのおかげかアキホはこの試験を落としたとしても中忍と下忍の間の職…特別中忍となる。
「フブキ、お前には言うことはない。強いて言うならば班長としてこいつらの面倒をみろ。」
フブキは何故か禁術であるはずの影分身を覚えているし、上忍3人を1人で倒してしまうとか本当は転生者なんじゃないかと思ってしまうくらい謎が多い奴だが任務では有能であることは間違いない。もしかして転生しなかったイタチの代わりなのかもしれないな。
「わかったよ。」
「それじゃ解散!」
俺は甘味堂で団子を食べることにした。
…中忍試験の前に波の国編はどうしたって?去年のとある出来事によってそんなイベントは起きていない。再不斬も白も抜け忍として生きている。原作じゃ2人とも殺されていたんだが波の国を牛耳ってた海運会社がその前に潰れちゃ意味ないよな…
去年…その会社の社長ガトーはあろうことか綱手に借金の返済を求めた。俺は止めたんだぞ?原作の事もあるしガトーがここで死んだらサスケ達の成長にも繋がらないし…そんな俺の努力もむなしく綱手は正当防衛として逃げるガトーやその部下達を含め血が出ない程度にボコボコにし借金を踏み倒した。その後拷問部隊に引き渡され任務で来ていたアキホが拷問してガトーは永遠に金儲けを企む事はなくなったし、今もムショの中だ。
そのおかげで原作前に橋が完成してその名前は綱手橋と呼ばれるようになったのもエピソードの一つであり、綱手は波の国じゃ英雄だ。
まあ簡単に言うなら馬鹿が勝てもしない相手に挑んで自滅したってことだ。しかし後々他人任せをするのは批判されかねないのでサスケが成長しなかった分は俺が負担することになり、たっぷりとしごいてやった。
「おい、イタチ。」
などと考えて団子を待っているとフブキにやられた3人組の1人、猿飛アスマが立っていた。
「なんでしょうか?」
「お前大丈夫か?ウチの班は問題児だがお前の所はその比じゃないからな。」
「ああ…まあ今回は大丈夫でしょう。不安なのがタキオです。」
「タキオ…例の遅刻の子だな。」
「問題はタキオだけなんですよ。後の2人に関しては中忍試験をパスする分には問題はないでしょう。」
「上忍試験は…?」
「アキホの場合ですと上忍試験はキツイでしょうね…彼女は上忍よりも特別上忍に向いていますから。」
こと拷問・尋問にかけては拷問部隊からスカウトが来ているくらいだしな。
「確かに…後1人は?」
「フブキですか?彼は問題ないでしょう。心の何処かに慢心がなければの話ですが…」
「俺達も油断してフブキにやられたんだ。その事をフブキがどう解釈するかで決まるな。」
「「…」」
俺とアスマは気まずい空気になり俺は耐えきれずにその場を立ち、財布を確認した…がなかった。そういえば最近現金からカードに変えたんだっけか?
「では「誰だ!?」…」
『では猿飛上忍。後はよろしくお願いします。』という俺の台詞を遮り、アスマは甘味堂の屋根の上を見たので俺はそちらに振り向くと俺の座っていた場所がクナイで刺されていた…やっぱり担当上忍をやっているせいか殺気に鈍感になっている…いやそれ以上に驚いたのは殺気を放っていないにもかかわらずクナイの刺さった場所が変だと言うことだ。
「流石にそう簡単には殺せんか。」
…なんで角都がここに来ているんだ?しかもこんな物騒な奴を通す門番も門番だ…何処ぞの紅い屋敷の門番の様にサボっているのか?しかも相棒の飛段はいないのか…?これも俺が引き起こしたイレギュラーって奴か?
「誰だと聞いている!」
アスマは怒鳴り声を上げ、気色悪い角都に話しかけた。
「俺の名前は角都。うちはイタチ…その首頂きに来た。」
全く面倒ごとを起こしてくれるな…本当に。てかオビトがいなくても機能するのか?暁は…いやするんだろうな。オビトはサソリの代わりのトビとして入っていたがそれ以前はどうかなんてのは知らないし、知っていたとしても無駄だろうな。ある程度は動けるようには仕向けているのか…とりあえずやることはこの角都と戦うことだ。
☆☆☆☆
結果は散々だった…俺は忍び界で最高懸賞金額の首…うちはイタチを狙い、木の葉隠れに来ていた。イタチがどういう奴なのかははっきりとわかっている…当然だな。懸賞金が高いとなると知名度も高くなる。だが知名度と強さは別物だ。中には懸賞金がほとんどないにもかかわらず手こずる相手もいる。もちろんそういった割に合わない奴を倒す仕事は引き受けない。逆に言えば割に合えば別だ。うちはイタチは確実に強いだろう…初代火影を除けばおそらく俺が戦ってきた奴の中では最強だ。それでも戦うべき理由はある…イタチの懸賞金は1億両(10億円相当)だ…
そんなに高いのが理由として、まず純粋に戦闘力が高いこと。次にうちは一族でも歴代に数人しか開眼しなかった万華鏡写輪眼の持ち主であること。そして史上初のうちは一族での火影候補というだけあって里人の人気が高い。言ってみればうちはイタチは里の象徴だ。
イタチを潰せば少なくとも木の葉隠れの里に動揺が走るのはよくわかる…それだけイタチの影響力は絶大だ。
しかし俺はイタチの隙をついて狙ったつもりが逆に誘われ、失敗に終わった。戦闘もしたがあっという間にやられてしまい、チャクラもほぼゼロだ。俺は必死で逃げた。イタチの班には拷問のアキホがいるからな…あいつの手によればどんなに頑固でも口を開いてしまうと言われるくらいだ…
「そうですか…角都さん、あなたらしくもありませんね。」
こいつの名前は干柿鬼鮫。こいつの顔は鮫のような顔で身体を改造した俺と同類かと思ったが、生まれつきらしくその事に触れるのはタブーとなっている。一応俺と同じ暁の仲間だ。
「放っておけ…俺はイタチとは2度とやらん。」
「おや?金に執着するあなたらしくない…それほどまでに強いのですか?イタチというのは?」
「強さそのものが厄介なのではない…あいつの勘の鋭さが厄介だ。当たったと思っても避けられる…戦闘においてこれほど嫌なものはない。」
「ならば次は私がやりましょう。」
「勝手にしろ。」
俺たちのやりとりはここまでにして俺は相棒探しを続けた。