宙を舞う、自由の翼   作:茶樹

6 / 6
大変長らくお待たせ致しました(華麗なジャンピング土下座)
今回も短いですが暇潰しに使って頂けたら喜びます!



第六話

 

伝説のショップ――グランスラムでコロ爺、ジャ老婆に挨拶を済ませた響樹は左手に紙袋を持ち、夜空に身体を預けながら風を切っていた。

 

俺はこの時期が大好きだ。

秋の夜空は暑くなく、それでいて寒くなく......心地の良い風がよく吹いている。

そんな風に身を任せ夜を往けば、風が、空が、地面が『もっと早く!』、『もっと高く!』 と俺に楽しそうに、嬉しそうに急かすような声が背中を押している気がする。

「んー......心地が良い」

一言で表すならこれだ。

 

彼の進んだ先には複数の傷跡が残っていた。

それもその筈で死神の歩法――瞬歩とは異なり、地面を、壁を様々な所を足場としなければならないのがA・T。然るべき、響樹が駆けた場所には浅いキズ、深いキズ様々なものが刻まれていった。

それは単なるキズと見るか、彼の走った後と見るか......

 

紺色の空の中、雲に隠れていたクリーム色の月が不意に顔を出して街を照らす。

必然的に空を駆ける響樹の姿もより露になった。風を切り進むそんな彼の後ろ姿を望めることが出来る月は、時に地面に、はたまた壁に、街頭に。

そんなものに目を向けるだろうか。向けたらきっと想うだろうか。

まるで彼が創り上げた――そう、道の様だと。

 

 

そんなこんなで夜の空中散歩を気持ち良く楽しむ響樹の顔が急に渋柿を口に放り込まれたようなそんな顔を覗かせた。

それもその筈、人がいる限り死神の永遠の命題に上がる仕事。人間の世界と死後の世界の均衡を保つためのバランサーとしての使命。

人は悪霊と、死神は還すべき成れの果て――虚(ホロウ)と呼ぶ。

そんなモノが眼下のビルが立ち並ぶ雑居な場所で、何も問題ない死霊を手にかけようと奮起し、襲っているのが嫌でも目に入ってしまった。

気持ち良く駆けていたのだから、そんなものを見れば苦い顔にもなるだろう。

 

はぁ。

俺の口から意図した重い息を溢れさせる。

「人......?助けならしゃあなし」

仕事熱心でもなく、ましてや慈善事業で動いていなくとも――なんだかんだで俺も死神なんだなぁ。 なんてことを改めて認識してしまった。

嫌とかではないんだけれども、場所――は置いておくとして......

「時を選んでくださいな、名の知らぬ虚さんよ......」

 

地面を蹴り、前に進んでいた身体をそのままの勢いでどこにでもあるような会社の上にある避雷針代わりのポールに身体の進行方向をズラし、ホイールの付いた足から着地する。

 

"UPPER SOUL 23Roll"

 

ホイールがポールに触れた瞬間、響樹はビデオを逆再生したかのようにポールを逆向きに螺旋を描きながら上へ火花を散らしながら駆け登る。

それがA・Tの特性を活かした技の1つ――トリックの名前。

 

体制を変えつつ、またその勢いを利用して、虚に向けて空を駆けた――というより飛んだ。

高速回転で回るホイールは高熱を発しながら空を往き、特殊な機構を組み込んだ響樹のA・Tは夜空の澄んだ空気を存分に取り込み黄色の閃光を撒き散らし、虚の顔面へ着地する。

重い打撃音を響かせた虚は嫌な悲鳴をあげながら、身体を反らす。

響樹は身体を動かさずにホイールの回転をそのままに利用し、閃光が迸る足に力を込めると虚の顔が陥没していくと同時に響樹の足から迸る黄色の閃光は焔色に変わる。

そんな彼の足を引き剥がそうと虚が足へ手を伸ばすのを視界に入れながらも、響樹は再び足に力を入れると両足をそのまま八の字に開いた――当然、虚の顔面に突き刺さっているのだ。虚の陥没した顔を中心に紅い閃光と共に身体が裂けていき、再び雄叫びを上げる前に黒い身体が崩れていった。

 

 

 

「俺の糧になってくれてありがとう」

 

走れば走る分だけ道は長くなる。

たとえタイミングが悪く、所謂宿敵同士。 出会ってしまったのだから仕様が無い。

無慈悲な考え方かもしれないけれども――新しい道を作らせてくれた、だからありがとう、と。

 

そんな一瞬の出来事に襲われていた人間の死霊は呆然としており、俺が視線を向けると身体を跳ねさせた。

「襲って喰ったりしないって......安心していい。 俺は死神だからなー。 さっきのやつらがいないところに送ってやる。存外にいい場所だからよ......たぶん」

一気に捲し立てると、返事も聞かずに霊力を足に込め、蹴りあげると微風が形を持ち、漂っている霊に向かい流れていく。

 

「ふぅー」

とりあえずひと段落っと。

さぁーてと、お次は――

俺が後ろを振り向くと3階建てのマンションの上の淵に腰を下ろし、不機嫌そうに肩肘を足の上に乗せ、もう片方の足をプラプラと所在なさげにしている彼女に目を向け、これからを考えると若干の憂鬱を覚えつつもさっきとは違う種類のため息を漏らした。

 

セミロングに伸ばした艶やかな桃色の髪に赤いミリタリーベレーを被り、白い制服に身を包んでいる少女――シムカの足元には響樹とは異なる黒いブーツ型のA・Tが夜風に吹かれ、彼女の心境を語るように鳴いていた。

 

響樹はそんな少女の元へ、善は急げとは言わんばかりに足に力を込めてビルを登るときり長の三白眼のじっとりとした視線を身体に受ける。

 

「ごめんなさい......」

悲しいかな。 瞬間的に謝ってしまった俺がいた。

いやね? 誰だってこんな目で見られたら、ねぇ......

「なにがかな?」

追撃。 やだ! この子の顔が見れない!視線が物凄い突き刺さってるよ!?

なんか物理的にダメージ食らってる気がしてきた......

「あー、ほらさ。 予定は曖昧だとしても待たせちゃったみたいだし?」

「私を待たせたのかな?」

「えっと、はい」

「へぇー」

「ほんとにごめんなさい......次は絶対遅れないようにします」

「......何回聞いたかわからないけれども、今度遅れたら手伝って貰おうかな? 欲しい物を。 あの宝の山から。 拾うのを」

「それだけはご勘弁を......」

後半を端的に強調したシムカの言う宝の山とはA・Tのパーツのみで築かれた遠目から一見するとゴミの山。 近づいて手に取るとやっとそれがネジ、スプリング、電子回路、ホイール等々のA・Tのパーツだとわかる。

なにせ時間をかければその山から自分だけのA・Tが作れる程のものが雑多に、広々と深く広がっているのだから。

そんな宝の山の中から彼女の指定するパーツを集めるなんて気が遠くなる作業なのは目に見える......

「約束だからね?」

嫌な汗を額に浮かばせながら狼狽える俺に満足したのか微笑みながら約束を取り付けてくるのだからいい性格をしている。

「えっと、とりあえず時間も限られてるわけだし向かおうかね!」

「話し逸らすの下手かな。 それに貴方がそれを言うのは自分の首を絞めることになるんじゃないかな……?」

「さぁ行こう! すぐ行こう! 今すぐ向かおう!」

はは! 女性はつよいなー! 卯ノ花さん然り!

穏やかな微笑みなのになんでか黒いオーラが見える自分の隊の隊長を思い出さないようにシムカから逃げる――じゃない。促すようにビルの上から夜空に身を乗り出した俺は悪くないんじゃないのかな!

 

 

響樹の背中を当然とばかりに追うシムカ。

夜空を駆ける2人が向かうのは青学女子中学校の"大撥条ファクトリー"

なんだかんだで楽しそうな2人が駆けるのを心地が良い風も追いかけていった。

 

 




これからの展開がぐだりそう。

これからどんな感じで進めようかなぁっていうぐらいにはプロットがふわっふわしてます。
なんかこうして欲しいとかアドバイス等々頂けると盛り込めるかもしれないです!
あとはこのお話に登場するキャラはオリジナルの二世代、三世代後をイメージしてますね。

次回は尸魂界で原作キャラと絡ませたいなぁなんてことを思いながらもお待ち頂けたらなと思います!
それでは!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。