宙を舞う、自由の翼   作:茶樹

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遅くなり申した。
暇潰しにお使いくださいませ。

この物語は主人公
天井響樹(あまい ひびき)
がお送り致します。




第二話

十一番隊隊舎。

 

ほぼほぼ毎日、怒号と喧騒が響いて止まないこの隊舎。

こうして近づく俺たちの耳に嫌でも入る。 隣に居るハナなんて虚ろな目で苦笑いを浮かべてらっしゃる……なんというか、まあ、四番隊の面々は近づきたくもない場所だもんな――

「ハナ、誘っといてなんだけどよ……帰ってもいいぞ?」

そんなに嫌ならな。とは続けなかったのは隣に十一番隊隊士がいるからもあるが、ハナは何だかんだで気概があるやつだ。 遠慮して身を引いてしまうだろう。

 

「大丈夫、ですよー」

アハハー……はあ……

渇いた声が喧騒と一緒に耳に入る。

どんな言い方でも基本は断らないな、そういや。

それに相も変わらずハナは仕事に関しては寡欲だこと―ーまあ卯ノ花さんの影響も少なからずともあるんだろうけど。

というのも四番隊からの届け物があるからだそうで、丁度十一番隊に用がある俺に頼めばいいものを『たまには“他の”隊の方との関わりも大事ですから』っとたまたま通りかかたたハナに声をかけ、わざわざ俺を相方に、仕事を頼んできた。

同情の念も抱きながらもこうしてハナに同行という名の先導をしている訳である。

なんというか、タイミングとかエラいピンポイントなのは卯ノ花さんも相も変わらずだこと。

 

「……なんて口にだしたら“ご冗談を。偶然ですよ”って笑顔で言われるんだろうな」

 

なんて上の空になっている俺の肩を遠慮気味に突っつくハナ。

「一人にはしないでくださいね? 絶対ですよ? ―ーお願いしますね」

鬼気迫るとはこの事かね。

「わかってるって、気負い過ぎやしないか? ハナよ」

「そりゃあ、そうですよー……」

「大丈夫だっての。 一応対策みたいなの持ってきたし」

“十一”の文字が俺たちの歩みを止めた。

門前に立つとハナは、門と俺に視線を揺らす。

「なんか久しぶりに正面から入る気がするなあ」

「……いつもどうやって入ってるんですか。 それに対策って……」

まあ、なんというか色々、だ。

 

「お前ら止まれ。 部隊名、要件を言え」

……今日の門番は新参の隊士かね。忠実に業務とは関心―ーなのだけれど、四番隊の文字を確認してから、一層お前らは入れてなるものかって雰囲気を出すのを止めてくれんかね。

「お前ら止めろ」

おおー、イカツイお兄さん頑張れー

今まで俺たちの後ろを無言で付いて来てくれただけでもありがたいのにね。

 

「荒巻先輩!?」

……すまん名前聞くの忘れてた。

 

「この方達は、わざわざいらっしゃってくれた客人だ。 門に通せ、俺が許す」

おお!? なに気に良い地位にいらっしゃるのねイカツイお兄さん改、荒巻隊士。

 

「り、了解致しました!」

「すまんね。 手間が省けた。えーっと、荒巻隊士」

「いえいえ、滅相もございません。 そういえばお二方のお名前を伺っておりませんでした! お名前は……」

そういや、そうだねお互い自己紹介もなしに、気づいたら着いていたからな。

「あ、僕は山田花太郎、四番隊第七席を任されています! よ、宜しくお願いします!」

「俺は、天井響樹。 平隊士だよ」

若干の沈黙が辺りを占める。

十一番隊隊士―ー荒巻隊士の口が開く。

「てっきり天井の兄貴の方が席が上なのかと……」

「ええ、本当に」

おい、山田七席。

 

門を潜る。

桃の花色を携えたちっこい子が此方に駆けてくる。

この子の霊圧知覚はそこまで良いとは言えんが、俺が来るのがわかったのかね。 それともこっちの方の匂いに釣られたか? 懐の巾着を思い浮かべながら声の主に見当を付けた。

「やっほーー!!きょうちゃんはっけーん!!」

「よう、やちる。 今日は剣八の旦那は一緒じゃないのか?」

「さっきまで一緒だったんだよ? なのにケンちゃんたら迷子かな」

剣八の旦那の呆れる様が見て取れるなあ……

後で労ってやろうかね。

「あ、あの……響樹さんその……」

「ん? どうした?」

さっきより顔が青いを通り越して白くなってるぞ……大丈夫か、ハナよ。

「天井さん!? 相手は副隊長ですよ!?」

「別に気にせんと思うぞ、今更だし……? なあやちる」

荒巻隊士もやちると俺のやり取りをみて気が気ではない様だ。

こんな可愛い子に何を、て階級的なことか? いつも“コレ”だから意識してなかったわ。確かに十一番隊は云わずもながら、“副隊長”の名は伊達じゃないってね。

 

くるくるーっと相変わらずの身のこなしで俺の肩に着地成功。

定位置なのかねここは……

「うん!! きょうちゃんはきょうちゃんだから、きょうちゃんなんだよ!」

「おう。 今日も天然ぶりを発揮してるなやちるよ。 これからも精進したまえ」

「りょうかいしました! しきかん、どの?」

「おう!」

頭をクシャっと撫でてやればくすぐったそうにはにかむ。

猫みたいなやつだな、まったく。

 

そんな光景を傍目に二人で冷や汗を交えながら呟くお二方。

「なんというか、上手く言葉に出来ないです。 僕」

「同感だ。 山田七席……」

 

あ、そうだ丁度いいや。

「ハナー! ちょっとこっちに来てくれー、ついでに荒巻隊士もなー!」

気づいたら距離を取られていたな、ったく。

「は、ははい! なんでしょうか響樹さん」

「お、お呼びでしょうか兄貴」

「そんな畏まんなくていいっての。 なあやちる?」

「んー、きょうちゃんのお友達だったら大丈夫、かな? 悪い“匂い”もしないし」

「んじゃあ決まりっと」

ゴソゴソ……確かコッチの巾着袋に入れといたーーあったあった。

「よし! それじゃあ草鹿やちる副隊長、これから指揮官として任務を与える!」

「んー? なにー?」

「コイツ、花太郎っていうだけどさ、初めて“ココ”に来たから手助けしてやって欲しいんだ」

「えー……」

そんなめんどくさそうな顔を消し去って見せようかね。

やちるの前に結構な大きさに膨れ上がった巾着袋が一つ。

それをやちるに渡し、確認するや否やの行動は早かった。

「っ!! りょうかいしたんだよ! しきかんどの!! さー行くよー……えっと、なんだっけ名前?」

「初めまして! ぼ、僕は山田花太郎って呼ばれててみんなからは結構呼びやすい名前だって言われてます!」

「んー……んー……」

あだ名すぐ付けたがるからなこの子。 助け舟出すか。

「やちる、俺はコイツのことはハナって呼んでるから、やちるもそう呼んでやってくれ」 

「わかったーハナハナ! そんでどこに行きたいの?」

「え、えーっと、十一番隊の伝令部に届け物がありまして……」

「おっけー! それじゃれっつごーだよー!」

「ああ! 待ってくださいよ!! 草鹿副隊長!」

自由奔放が体現したみたいな子だよホント。

「荒巻隊士、一緒に行ってもらっていいかい」

「わ、わかりやした」

スマン、荒巻隊士よ。

 

「それじゃあ俺はちょっと他の奴らに用があるからーー多分道場にいると思う。 何かあったら知らせてくれると助かる。 それじゃ、頼んだ!」

後は任せた。

何もない、とは恐らく思うけどアレを渡したから、まあ、そのなんだ……怪我とかは大丈夫だろう。

「わかった!! それじゃあいっくよーハナと……えっと、マキマキ?」

やちるが笑顔で首を傾げるも、気を散らしたようでそのまま隊舎の方へ駆けていく。

「ハナハナ! えーっと、マキマキ? 早くしないとおいてっちゃうよー!!」

「は、はいいい!」

「マキマキ……マキマキって……」

桃の花がぴょんぴょんと上機嫌に舞い、隊舎に消えていた。

 

 

「ちょ、ちょっと早いです!!草鹿副隊長!」

花太郎が息を切らしながらやっとこさ追いつくと、流石にこのままだと確実にバテる。 その前にちょっと休憩を!!

花太郎の頭の中で思考が幾重にも交差した。

「はあ……はあ……」

荒巻隊士は虫の息に近い。 あれ? この人十一番隊じゃ――

息を付きながらふとこの単語も頭に浮かんでしまった……

「えー、二人が遅いんだよー」

「す、すいません……」

額の汗を拭いながら花太郎が疑問を口にする。

「えっと……草鹿副隊長、そういえば響樹さんから何を頂いたんですか?」

「んーとね!! コレ!!」

巾着をドンと目の前に出されても……と若干の戸惑いを見せながらも中を三人が顔を付き合わせて覗き込む。

「これって――」

「ふふん! ……金平糖だよ!! ……あげないからね?」

「はは……」

響樹さん、なんというか、流石です。

 

「さーってと、久しぶりの十一番隊道場、相も変わらずアイツ等はいるだろうかね」

穏やかな晴天を浴びるように身体を伸ばし、やちる達とは別の方へと歩みを進める。

その顔に純粋な“笑み”を浮かべて。

 




なんという鈍重なペース……筆がうんたらかんたら――

だいぶオリジナルな設定が盛り盛りになって来ます。
なので何か御座いましたらご指摘等頂けると助かります。


そんでかなり個人的な印象ですが、やちるは書きやすい!
そして地の文が難しい!!


……はいっという訳で次回は早く書けるといいなぁ

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