魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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二人の始まり

翌日、ティアナはいい匂いで目が覚めた

そして、自分の寝室から出て見たのは、一人キッチンに立って料理している裕也だった

 

「裕也……」

 

「む、起きたか……すまんが、食材とキッチンを使わせてもらったぞ」

 

ティアナが声を掛けると、裕也は肩越しにそう言ってきた

それを聞いたティアナは

 

「それはいいんだけど……裕也、料理出来るの?」

 

と問い掛けた

すると、裕也は

 

「ああ。一人暮らしもしていたからな」

 

と答えた

そのタイミングで、裕也はフライパンを皿に重ねた

そして、出来た料理を乗せた皿を持って

 

「一応、恩返しの一環だな」

 

と言って、机の上に置いた

それは、見事なオムレツだった

ティアナが執務官になってから、久方ぶりの手料理だった

 

「うわ……」

 

ティアナも料理はするが、それなりだ

しかし、裕也の作ったオムレツは、儀礼な黄色だ

ほんの僅かにある焦げ色は、引き立て役

プロと言われても、信じられる見た目だった

 

「裕也……あなた、レストランで働いてた?」

 

「いや? 精々、喫茶店だな」

 

ティアナの問い掛けに、裕也はそう答えた

それを聞いたティアナは、内心で

 

(そこ、喫茶店という皮を被ったレストランじゃないわよね?)

 

と思いながらも、スプーンをオムレツに刺した

その中から出てきたのは、半熟の卵だった

それをティアナは、口に運んだ

 

「うわ、美味しい……」

 

それは、思わず溢れた言葉だった

すると、裕也は

 

「それは良かった」

 

と言って、微笑んだ

それを見たティアナは、顔が赤くなるのを自覚し、赤くなった顔を隠すために、オムレツを乗せた皿を持ったのだった

それから数十分後、ティアナの運転する車で地上本部に向かった

そして地上本部の転移ゲートで、本部に向かった

その本部に到着すると、マリーの部屋に向かった

そして見たのは

 

「マリーさん……また、徹夜ですか?」

 

目の下に、盛大なクマを作っていたマリーだったからだ

 

「いやぁ……あれこれ調整してたら、止まらなくなっちゃってね」

 

ティアナの言葉に、マリーは後頭部を掻きながらそう言った

どうやら、凝り性が発動してしまったようだ

ある意味、科学者らしいと言えば、科学者らしいだろう

 

「まあ、おかげで、納得のいく物には仕上がったよ」

 

マリーはそう言うと、机の上からデバイスの待機形態を取り上げて裕也に差し出した

裕也はそれを受け取ると

 

「感謝する。マリエル技士」

 

と言って、頭を下げた

すると、マリーは

 

「マリーでいいわよ。それに、私としてもいい経験になったしね」

 

と笑顔で言った

その後、裕也は本部に割り当てられていたティアナの執務室に向かった

やはり、まだ新人だからだろう

部屋の中は、かなり綺麗だった

そしてティアナは、上着をコート掛けに掛けて

 

「さて、裕也。今後貴方は、私の副官をしてもらいます。内容は、多岐に渡ります」

 

と裕也に説明を開始した

そして、裕也は

 

「ああ、そのようだな。書類の整理、何らかの手続き、戦闘のフォロー……俺に出来うる範囲で、こなそう」

 

と言った

それを聞いて、ティアナは

 

「ありがとう、期待してるわ」

 

と言うと、クロスミラージュを台にセット

そしてパソコンを起動し、今回の事件のまとめを開始した

既に、彼女の部屋の入り口には、クロノの艦の調査班からの報告書が入った書類が置かれていた

それに気付いた裕也は、それを取り

 

「ティアナ、これを」

 

とティアナに差し出した

 

「あ、もう来てたのね」

 

ティアナはそう言うと、書類を受け取った

そして、二人は仕事を開始

数時間後、ティアナは纏めた書類を提出したのだった

だがこの時、ティアナは気付いていなかった

自分が、大規模事件に巻き込まれ始めていたことに


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