魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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戦場での出会い

「この人、まだ生きてる!」

 

《解放します》

 

ティアナの言葉を聞いて、クロスミラージュは解放作業を開始

そして、数秒後

 

《開きます。注意してください》

 

とクロスミラージュが言って、カプセルの中に満ちていた液体が減り始めた

そして、液体が無くなると空気の抜ける音がしてから開き始めた

そして気付けば、その少年の手足には拘束具があった

それを見たティアナは

 

「モード2」

 

《了解、ダガーモード》

 

左手のクロスミラージュをダガーモードに変形させて、魔力刃を形成

その魔力刃で、拘束具を切断した

それにより、その少年はティアナの方に倒れてきた

それをティアナは受け止めた

その時

 

《警告! 後方!!》

 

クロスミラージュに言われて、ティアナは後ろに視線を向けた

そこには、数機のガジェットが居た

 

(しまった! 迎撃、間に合わない!!)

 

そう思ったティアナは、せめて少年を守ろうと思い抱き締めた

しかし、次の瞬間

 

「右腕解放、雷の投擲」

 

と耳元で声が聞こえて、爆発音が聞こえた

そこで、ティアナは気付いた

少年の目が開いていたことに

 

「君は……」

 

「今は、アレの撃破が最優先と判断する……」

 

ティアナが問い掛けるが、少年は淡々とそう答えた

確かに、聞いている暇はなさそうだった

ティアナは左手のクロスミラージュを戻すと

 

「悪いんだけど、前衛……いいかしら?」

 

と少年に頼んだ

すると少年は、拳を鳴らしながら

 

「問題ない」

 

と答えた

そして即席だが、コンビを結成

二人は戦闘を開始した

そしてティアナは、戦闘しながら少年の戦い方を注意深く観察していた

 

(あの動きに戦い方……ネギに似てるわね……関係者? そうなると、彼も転移者ってことになるけど……)

 

ティアナはそう思考しながら、魔力弾を発射

それにより、遠距離に居たガジェットのアームが破壊された

その直後、件の少年がそのガジェットに肉薄

拳を繰り出し、ガジェットのカメラ部分を破壊

そして蹴り飛ばし、別のガジェットにぶつけると

 

「左腕解放、光の12矢」

 

と12本の光の矢を発射

二機を纏めて破壊した

それを見て、ティアナは確信した

 

(彼、ネギと同じ魔法体系の使い手ね……しかも、万能型)

 

実際、少年は遠近関係なく戦えていた

器用貧乏という雰囲気ではなく、圧倒的戦闘力でガジェットを次々と破壊

しかしティアナは、ミスを犯していた

少年の観察に意識を向けすぎていて、攻撃が疎かになっていた

それに気付いたのは、間近に迫った一機の破損したガジェットだった

そのガジェットは、損傷が酷いのかかなり遅く近づいていた

他のガジェットの残骸に紛れて

 

《右前方!》

 

「つっ!?」

 

クロスミラージュの警告により気付いたが、時既に遅かった

ガジェットから一発のレーザーが発射され、ティアナの下腹部を貫いた

その一撃により、ティアナは片膝を突いた

 

(マズッた……敵は、まだ居るのに……)

 

ティアナはそう思うが、撃たれた場所が悪かったのか、視界が急速に暗くなっていく

その時だった

 

「両腕解放、地獄の業火……固定、掌握……術式兵装……業火の魔神」

 

と少年の声が聞こえた

が、そこでティアナの意識は途絶えた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「はっ!」

 

そして、ティアナが意識を取り戻すと見えたのは星空だった

すると

 

「気が付いたか」

 

と少年の声が聞こえた

そちらに視線を向けると、焚き火を挟んだ反対側にあの少年が居た

 

「まだ無理はするな。治療してから、そんなに時間は経っていない」

 

ティアナが起き上がろうとしたことに気が付いたようで、少年はそう言った

確かに、下腹部がまだ痛む

 

「優秀なデバイスだな。ショック症状に陥る前に、意識を落とさせるとはな。まあ、危険な賭けだったが」

 

どうやら、ティアナが意識を失ったのはクロスミラージュが介入したかららしい

すると、少年は

 

「それと、先に謝罪しておく。他意は無いからな」

 

と言った

その時になってティアナは、自分の格好に気が付いた

今の彼女は、下着姿だったのだ

それに気付いたティアナは、顔を赤くしながら少年を睨んだ

すると少年は

 

「治療の為だったんだ、仕方ないだろう」

 

と反論した

まあ、怪我したのにはティアナにも落ち度があった

先の戦闘、急だったのでバリアジャケットを展開していなかったのだ

その前の戦闘後、ティアナはすぐにバリアジャケットを解除していたのだ

そして、戦闘中の余所見

それらが重なり、被弾したのである

 

(次からは、バリアジャケットは展開したままにする)

 

ティアナがそう決意すると

 

「これを羽織っていろ」

 

と少年が、ティアナにボロボロだが毛布を掛けた

 

「ありがとうございます……ここは?」

 

「ここは、あの洞窟近くの廃集落だ。余程慌てていたのか、幾らか衣服や毛布が残っていたからな。使わせてもらった」

 

確かに、気付けば少年もボロボロだが服を着ていた

そして少年は、ティアナの近くを指差して

 

「気になるのなら、そこにある程度は見繕っておいたから。着ておけ」

 

と言った

見てみれば、そこには数着の服があった

同じようにボロボロたが、選り好みしている余裕は無いだろう

そして、ティアナは

 

「御世話になったようで、感謝します。私は、時空管理局執務官のティアナ・ランスターです。貴方の名前は?」

 

と自己紹介してから、問い掛けた

すると少年は

 

「研究者連中は、俺をUー8番と呼んでいたが……生前は裕也と呼ばれていた……まあ、好きに呼べ」

 

と言った

これが、一度死んだはずの少年

裕也とティアナの出会いだった


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