魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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ゆりかご

ヴィヴィオを解放して抱き締めていると、なのはが撃ち抜いた壁の穴からはやてがクアットロを担いで現れた

どうやら、近くを通ったらしい

その時だった

 

『聖王陛下の戦意喪失……主駆動炉の反応ロスト……緊急隔壁閉鎖します!』

 

と放送が流れた

それを聞いて、全員は急いで脱出しようとした

だが間に合わず、閉じ込められた

しかも、AMFの濃度が上がって転移すら出来そうになかった

だがこれは、想定していたことだった

 

『ったく……管制してた奴が居なくなったってのに、セキュリティが固いんだよ』

 

と不機嫌そうな千雨の声が聞こえた

その直後、AMF濃度が低下

更に、閉まった隔壁も開いた

 

『アタシのアーティファクトを、舐めるなよ』

 

千雨のアーティファクト

力の王笏(スケプトルム・ウィルトゥアーレ)

その能力は、電子戦に特化している

その能力を使い、クアットロという管制者が居なくなったゆりかごの管制にハッキング

一時的にだが、防衛システムに介入したのだ

 

『とはいえ、長くは持たねえ! 急いで脱出しろ!』

 

「ありがとう!」

 

千雨の言葉を聞いて、ユーノが動いた

自身を中心に、転移魔法を発動

ゆりかご全体に居た全魔導師を、外に転移させた

それほどの広範囲かつ、正確無比の転移

ユーノにしか出来なかっただろう

天才的後方支援魔導師、それがユーノだった

なのは達が転移したのは、近くまで来ていたアースラの甲板だった

その甲板上では、海神が激しく対空砲撃をしていた

その弾幕の厚さは、正しく暴力的だった

その暴力的弾幕により、接近しようとしてきていたガジェットやドールは悉くが撃破されていく

だがその時、一機のドールがその弾幕を被弾しつつも突破

なのはに狙いを定めた

転移直後で、ユーノはすぐには動けない

はやてと当麻は、クアットロを下ろそうとしていた

そしてなのはは、ヴィヴィオを抱き締めていて反撃が出来なかった

それでもなのはは、ヴィヴィオを守ろうとヴィヴィオをしっかりと胸に抱き締めてドールに背中を向けた

その直後、そのドールはどこからか撃たれた弾丸に撃ち抜かれて墜落した

はやてがその発射点に視線を向けると、長身に褐色の肌

そして、長い黒髪が特徴の美少女が居た

その美少女

龍宮真名が居たのは、あるビルの屋上だった

そして龍宮の右手には、長大なライフルが握られていた

どうやら、それで狙撃したらしい

 

「誰や、あれは……」

 

はやてがそう呟いた直後

 

燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス)!」

 

と強大な爆発が、大量のガジェットとドールを一掃した

 

「な……」

 

「今のは、炎熱系広範囲爆破魔法か……」

 

なのはは驚き、ユーノが冷静にそう解析した

すると、アースラの甲板に新たな人が現れた

何やら近未来のスーツを着ていて、胸元には

《超包子》の文字があった

 

「君は、一体……」

 

「誰や?」

 

ユーノに続いて、はやてが問い掛けた

すると、そのスーツを着た少女は笑顔で

 

「言うなら、ネギ坊主の愉快な仲間達ネ」

 

と告げた

彼女の名前は、超鈴音(チャオ・リンシェン)

ネギの生徒の一人だった少女だ

ただし、本人曰くネギの子孫とのことで、未来人という

しかし、詳細は一切不明の天才である

そこに、龍宮が現れて

 

「さて、あのガラクタ共を軒並み破壊すればいいんだな?」

 

と超に問い掛けた

すると、超は軽い調子で

 

「そうネ。殲滅するアルよ」

 

と告げた

それはまるで、近所のスーパーに買い物に行く

というような気楽さだった

その言葉を聞いて、龍宮は頷き

 

「わかった。依頼は果たそう」

 

と言って、何処からともなく重火器を取り出して構えた

そして、海神の迎撃を掻い潜って近づこうとしてくるガジェットやドールを次々と撃破していったのだった

そんな間にも、ゆりかごはゆっくりと上昇していく

そしてとうとう、宇宙に出た

そのタイミングで、宇宙に時空管理局の次元航行艦隊が一気に展開した

もし突入した二人が、駆動炉とヴィヴィオをどうにかしなかったら展開は間に合わなかっただろう

そして、展開した艦隊の提督はクロノだった

クロノは、ゆりかごがまだ特定の宙域に到達していないことを確認してから

 

「よし、間に合ったな……艦隊全艦、アルカンシェル発射態勢!」

 

と指示を出した

その指示に従い、展開した艦隊は切り札たるアルカンシェルの発射シークエンスを起動しようとした

だが次の瞬間、モニターが真っ赤に染まった

 

「何事だ!!」

 

とクロノが問い掛けると、一人のオペレーターが

 

「ダメです! 起動コマンドに異常発生! アルカンシェルが起動出来ません!!」

 

と悲鳴混じりに告げた

それを聞いて、クロノはすぐに気付いた

その原因が、スカリエッティのハッキングだと

 

「地上本部を襲撃された時に、地上本部のシステムを介してハッキングされていたのかっ!?」

 

そう

それも、スカリエッティの仕込みだった

スカリエッティは、ゆりかごを運用するうえでの障害は地上では巨大砲台、アインへリアル

そして宇宙では、時空管理局本局の次元航行艦隊のアルカンシェルだと判断していた

だから、アインへリアルはこの戦いが始まった時に真っ先に戦闘機人達により破壊されていた

そしてアルカンシェルは、地上本部のシステムがハッキングされた時に、そのシステムを介して次元航行艦隊の運用システムにハッキング

起動コマンドにウィルスを仕掛けていたのだ

しかし、気付いても時は既に遅し

ウィルスを駆除するにしても、簡単にはいかないことは明白だった

 

「万事休すか……っ」

 

とクロノが歯を食い縛った

その時

 

『いえ、まだです』

 

と通信が繋がった

その通信相手は、茶々丸だった

 

『そちらの艦隊のデータリンクにより、ゆりかごの位置を特定……完了……空飛び猫(アル・イスカンダリア)、起動』

 

と茶々丸が言った直後、ゆりかごの直上に巨大な猫が現れた

それが、茶々丸のアーティファクト

空飛び猫だ

その正体は、衛星兵器である

 

『照準完了……出力最大……発射!』

 

その言葉の直後、極太のレーザーがゆりかごに直撃

ゆりかごは、真っ二つに折れて爆発したのだった

 


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