魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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当麻に関しては、若干オリジナルです


告白

フェイトが再起を決意していた頃、はやては時空管理局本局に来ていた

 

目的は、以前に三人が乗っていた次元航行艦

 

アースラの整備状況を確認しに来たのだ

 

今そのアースラの周囲を、宇宙服を着た整備員達が動き回って整備している

 

「はやてが要請してきたから取り合ったけど、本当に使うのかい?」

 

そう問い掛けたのは、ヴェロッサである

 

何を隠そう、そのアースラは既に廃艦が決まっていた艦なのだ

 

「せや……アースラには、もう一働きしてもらいたいんや……移動司令部としてな……」

 

なのは達三人にとって、十年前から世話になっていた艦であり、思い出深い艦だ

 

「そっか……まあ、はやてが本気ならいいけどね……ああ、市街地での運用に関しては、ラダビノット中将が取り計らってくれたよ」

 

ヴェロッサがそう言うと、はやては頷いてから

 

「ほんまに、ラダビノット中将には感謝やね……今回の一件が終わったら、一回お礼言わな」

 

と言った

 

それを聞いたヴェロッサは、腕時計を見て

 

「っと……悪いけど別件があるから、僕は行くよ。アースラは明日には、整備を終えるそうだよ」

 

と言うと、離れていった

 

「ん、ありがとうなぁ、ロッサ」

 

はやてが見送るなか、ヴェロッサと入れ違いに当麻がやってきた

 

その手には、2つの缶がある

 

はやてが喉が乾いたと言って、当麻に頼んでいたのだ

 

そして、当麻ははやての隣に歩み寄ると

 

「ほいよ、午○の紅茶だったな」

 

とはやてに缶を差し出した

 

それをはやては、笑顔で受け取ってから

 

「ありがとうな」

 

と言ってから、開けて飲み始めた

 

ただしその視線は、今も整備されてるアースラに向けられている

 

それを見た当麻は、はやてと同じように缶コーヒーを飲みながらアースラを見て

 

「思い出のある船なんだっけか?」

 

とはやてに問い掛けた

 

すると、はやては頷いてから

 

「せや……十年前からお世話になってた船や……本当は廃艦なんやけど、また働いてもらうわ」

 

と話した

 

「そうか……」

 

はやての話を聞いて、当麻は相槌を打った

 

その時、はやては気づいた

 

今、二人が居る廊下には、他には誰も居ないことに

 

(これ、チャンスやんか!!)

 

実ははやて、当麻を意識していた

 

はやては機動六課の隊長であるので、結構多忙である

 

ゆえに仕事や会議が長引いて、夕食が深夜に及ぶことが多々ある

 

今から約二週間ほど前、はやては地上本部で会議に出席し、帰りが深夜の一時に及んだ

 

その時間となると、食堂ももはや閉まっている状態である

 

はやては空腹を堪えて、そのまま寝ようかと思った

 

だが、そこに当麻が現れて、料理を渡したのである

 

なんと当麻、はやてが帰りが遅くなると思い、待っていたのだ

 

その当麻に対して、はやては

 

「先に寝てて、良かったんよ?」

 

と言った

 

すると、当麻は腰に手を当てて

 

「一応、俺ははやての護衛役なんだ。これくらいやらせろ」

 

と返したのだ

 

そんな何気ない当麻の気遣いに、はやては惹かれていった

 

だから気づけば、はやては当麻を好きになっていた

 

だから時々遠回しにアプローチをしたが、当麻が鈍感過ぎて気づいてくれなかった

 

だったら、もはや直球勝負しかあるまい

 

「な、なあ。当麻君……」

 

はやてが緊張した様子で呼ぶと、当麻は不思議そうに

 

「なんだ?」

 

とはやてに視線を向けた

 

はやては当麻に向き直ると、深呼吸してから

 

「あんな、当麻君……大事な話があるんよ……」

 

と言った

 

そんなはやての話を聞いて、当麻は

 

(やっべー……とうとう、私、上条さんも年貢の納め時が来てしまわれたか?)

 

と思っていた

 

なにせ当麻としては、彼がこの機動六課に来てから度々はやてと何かしらのトラブルが起きていた

 

例えば

 

はやての私室には個人用のお風呂が有るのだが、はやてが入ってることに気付かず、当麻乱入とか

 

当麻がトイレから出たら、はやてが寝起きで下着姿だったとか

 

ようは、ラッキースケベが多発し、その度にはやての拳が炸裂していた

 

ただ当麻の経験からしたら、全て一発だけで終わる訳がない。と思っていた

 

だから、はやてが顔を赤らめながら深呼吸したのを見て、内心で身構えた

 

(やっぱり、インデックスみたいな頭ガブガブの刑ですかー!?)

 

と驚愕していた直後

 

「当麻君……君のことが好きです!」

 

とはやては告白した

 

それから、タップリ数秒間当麻は固まってから、周囲を見回し始めた

 

「……なにしてるんや?」

 

なかなか返事をもらえないはやてが問い掛けると、当麻は見回しながら

 

「いや、カメラと看板はどこかなぁって……」

 

と答えた

 

その直後、はやての眉間に青筋が浮かんで

 

「ドッキリカメラでも、ビックリカメラでもないわ! 本当の乙女の告白や!!」

 

と突っ込んだ

 

「う、嘘だぁ!! 上条さんは騙されないのことよ!? 絶対、どこかにカメラが有ると見た!!」

 

当麻はそう返すと、凄い勢いで周囲を見回した

 

次の瞬間、ブチィ! と、何かが盛大に切れる音が響いて

 

「乙女の純情を疑う奴は……」

 

はやてはそう言いながらシュベルト・クロイツを展開し、高々と掲げ

 

「夜天に代わってお仕置きやぁ!!」

 

と当麻目掛けて振りかぶった

 

「待ってください、はやてさんや! 私は確かに、幻想殺しなぞを持っておりますが、物理は防げないわけでー!?」

 

二人が落ち着くまで、少々お待ちください(ドッタンバッタン)

 

十数分後、二人はなんとか落ち着いた(当麻はボロボロ)

 

「ほ、本当に、告白だったんでせうね……」

 

当麻が息絶え絶えにそう言うと、はやては頷いてから

 

「せやで……まったく……疑うなんて、酷いやんか……」

 

と溜め息混じりに言った

 

すると、当麻はまるで産まれたての小鹿のように立ち上がりながら

 

「いやぁ……上条さんは、告白されたのは初めてなんですのことよ……」

 

と言った

 

それを聞いたはやては、内心で

 

(当麻君、何人の女の子を泣かせたんや……)

 

と呆れた

 

そして、当麻に体を向けてから

 

「それで、当麻君の返事はどうなんや? こっちは、恥ずかしい思いをして告白したんや」

 

と問い掛けた

 

すると、当麻は少し考えてから

 

「なあ、はやて……俺はな、記憶喪失なんだ……」

 

と喋りだした

 

「記憶喪失……やって?」

 

「ああ……あの年の夏休み……大体、8月からしか記憶は無いんだ……」

 

はやてが呆然と問い掛けると、当麻はそう説明した

 

「どうやら俺は、インデックスって女の子を守って脳の記憶野にダメージを受けたらしい……気付いたら、自分の学区の病院に居た……そして、あのカエル顔の先生……冥土帰しから説明を受けて、俺は演じることにしたんだ……上条当麻を」

 

当麻がそう言うと、はやては目を見開いて

 

「上条当麻を……演じるやって?」

 

と呟くように言った

 

すると、当麻は頷いて

 

「インデックスを悲しませないために、俺は記憶を失う前の上条当麻を演じたんだ……」

 

当麻が其処まで話すとはやてはゆっくりと歩み寄ってから、当麻の頬を優しく包むようにしてから

 

「だからどうしたん? それも当麻君やんか……」

 

と囁くように言った

 

「はやて……」

 

当麻が動揺して固まっている間に、はやては当麻を見つめて

 

「確かに、今の当麻君が演じたかもしれへん……けど、それは当麻君がその子を泣かせたくなかったからやろ? だったら、それも当麻君や……違うか?」

 

はやての言葉が予想外だったのか、当麻は俯いて

 

「だが俺は……インデックスだけじゃなく、周りの奴らを騙して……」

 

と呟くように言った

 

すると、そんな当麻の頭をはやては優しく抱きしめて

 

「確かに、当麻君は騙したかもしれへん……けど、それは周りの人達を悲しませたくなかったからやろ? その思いを、ウチは否定せんし、当麻君の思いを否定しようとする奴から当麻君を守ったる……だから、もうええんやないか?」

 

はやてがそう言った直後、当麻の目から涙が零れた

 

それは、当麻の心の涙だった

 

記憶を失う前の知人達を騙していた、という罪悪感から来る涙だった

 

当麻が歯を食いしばって泣いていると、はやては当麻の頭を優しく撫でながら

 

「今は、泣いてええんよ……な」

 

と囁いた

 

その言葉に甘えるように、当麻は静かに泣き続けた

 

そして当麻が泣いていた間、はやては当麻の頭を優しく撫で続けた

 

その後、当麻は泣き止むと

 

「返事は、落ち着くまで待ってくれ」

 

と返した

 

そしてはやてだが、当麻の頭を抱き締めた時に内心で

 

(あ、あかん! 今、凄い大胆なことをしとる! しかしここまで来たら、女は度胸や!!)

 

と自身を鼓舞していたのだった


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