魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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目覚める力

「ギン姉……マックス兄……」

 

姉からの最後の通信が有った場所に到着したスバルが見たのは、三人の戦闘機人と音、吸収の五人の足下で血まみれで倒れている二人の姿だった

 

しかも、三人の戦闘機人の内二人は、途中で一度交戦した二人だった

 

そんな光景が信じられず、スバルは首を振りながら後退りして

 

「あ……あ……アアアァァァァ!!」

 

と叫び声を上げた

 

それと同時に、スバルの足下に普段展開しているのと違う魔法陣が展開された

 

それは、ディエチ達戦闘機人と同じ魔法陣だった

 

「スバル!?」

 

「これは、一体……」

 

僅かに遅れて到着した古菲と楓は、スバルの変わりように驚きながらも状況の把握に勤めた

 

そして、二人の視界に入ったのは、意識を失っているらしいギンガをトランクに詰めて逃げようとしている戦闘機人

 

ノーヴェとウェンディの姿だった

 

「返せ……! ギン姉を返せぇぇぇぇ!」

 

スバルは叫びながら、有り得ない速度で突撃した

 

それに反応したのは、スバルと同じ格闘型の戦闘機人

 

ノーヴェだった

 

「らあっ!」

 

「アアアァァ!」

 

二人は全く同じタイミングで、ほとんど同じ軌道を描いて回し蹴りを繰り出した

 

その結果、二人の蹴りは空中でぶつかり合い、二人のデバイスたるマッハキャリバーとジェットエッジが火花を散らした

 

その直後大きな爆発が起きて、二人は大きく吹き飛ばされた

 

「があっ!?」

 

「あぐっ!?」

 

二人はそれぞれ、真反対の壁にめり込んだ

 

「くっそがぁ……!!」

 

ノーヴェは悪態を吐きながら立ち上がろうとしたが、それより早くスバルが態勢を立て直し

 

「邪魔……するなぁぁぁぁ!」

 

と叫びながら、更に出力を上げた

 

そのタイミングで、ノーヴェは立ち上がってスバルに再び攻撃しようとした

 

だが、長い銀髪に右目に眼帯を付けた小柄な少女が一歩前に出て

 

「ノーヴェはウェンディと共に撤退しろ。タイプゼロ・セカンドは、姉が捕縛する」

 

と言った

 

「だけどチンク姉……アイツ、厄介な能力を持ってる! 触れられたらヤバい!」

 

ノーヴェは目の前の少女、戦闘機人チンクを心配してか、そう忠告した

 

するとチンクは、両手に何本もの投げナイフを出して

 

「大丈夫だ……姉ならば、触れずに戦える!」

 

と言うと、そのナイフを全て投げた

 

そのナイフを無視して、スバルはチンクに向かって突撃した

 

だが、スバルがナイフのど真ん中に来た瞬間

 

「IS……ランブル・デトネイター!」

 

とチンクが告げた直後、チンクが投げたナイフが全て爆発した

 

「ぐっ!?」

 

爆風に呑まれて、スバルは再び吹き飛ばされた

 

この時点で、スバルが展開していたバリアジャケットはボロボロだった

 

だがそれでも、スバルは止まらない

 

今にも逃走しようとしているウェンディとノーヴェを見ると、拳を握り締めて

 

「ギン姉!」

 

と叫ぶと、ウェンディ達の方へと向かった

 

「ウェンディ、ノーヴェ、早く行け!」

 

チンクはそう言いながら、指を鳴らした

 

すると、スバルの前にナイフが大量に現れて一気に起爆してスバルは爆発に呑まれた

 

チンクの言葉に頷き、ノーヴェは駆け出してウェンディはボードに乗ると

 

「IS、エリアル・レイブ!」

 

と言った

 

そして、ウェンディが乗ったボードが飛び去ろうとした

 

その時だった

 

一発の魔力弾がウェンディのボードと、ギンガの入っているトランクを繋ぐ鎖に直撃し、破壊した

 

「なっ!?」

 

まさか破壊されるとは思ってなかったのか、ボードを飛ばしていたウェンディは驚愕の表情を浮かべながら振り向いた

 

そして、魔力弾の飛んできた方向を見ると、撃ったのは、血に濡れた体を瓦礫で支えながら愛機を構えていたマックスだった

 

「惚れた女……渡すかよ!!」

 

マックスはそう言うと、トランクを掴むためか戻ろうとしていたウェンディに愛機を向けて撃った

 

〈バーストショット!〉

 

マックスが放った魔力弾は、ウェンディの少し手前で炸裂し、弾数を増やした

 

「うわっと!?」

 

避けきれないと判断したのか、ウェンディはボードから降りてボードを楯のように構えて耐えた

 

「ムチャをするアル!」

 

「だが、好都合でござる!」

 

吸収と音の二人と交戦していた古菲と楓の二人がそう言った直後、楓が分身をウェンディとトランクの間に向かわせた

 

そして、その分身体の楓は一本のクナイを天井に突き刺した

 

すると、人差し指と中指を口元で立てながら

 

「爆!」

 

と詠唱した

 

その直後、クナイの柄尻に結ばれていた糸の先に有った札が大爆発

 

天井を崩落させた

 

「しまったッス!」

 

ウェンディは楓の狙いに気付いたが、時既に遅し

 

崩落した天井が積み重なり、通路を塞いだ

 

すると、スバルと交戦していたチンクの前にウィンドウが開いて

 

『チンク姉、ごめんなさいッス! タイプゼロ・ファーストの入ったトランクを奪われたッス!』

 

とウェンディが言うと、チンクは舌打ちしてから

 

「仕方ない……撤退する!」

 

と告げた

 

だが、それより早くスバルが

 

「邪魔だあぁぁぁ!」

 

と雄叫びを上げながら、チンクに対して拳を繰り出した

 

回避が間に合わないと判断したのか、チンクは右手を前に出して、障壁を展開した

 

最初は拮抗したものの、数瞬後に耐えきれなくなって爆発した

 

「ぐあっ!?」

 

「ガハッ!?」

 

爆発により二人は大きく吹き飛ばされて、チンクは瓦礫に、スバルは壁に激突した

 

「ガッ……グッ……なんて一撃だ……」

 

チンクはそう言いながら立ち上がろうとするが、ダメージでかなかなか立ち上がれなかった

 

その間に、スバルが煙の中から現れたのだが、変わり果てた姿だった

 

バリアジャケットの上着とトレードマークだった鉢巻きが無くなり、左腕も半ばから千切れかけていて、中から金属やコードが露出していた……

 

「ギン姉を……返せよぉ!」

 

スバルはそんな様相になりながらも、まだ前に進もうとした

 

だがその時、スバルの近くに楓の分身体の一体が現れて

 

「落ち着くでござる! ギンガ殿は助けたでござる!」

 

とスバルに告げた

 

「えっ……?」

 

その言葉にスバルは呆然として、僅かに視線を動かした

 

すると、楓の分身体のもう一体が、ギンガをトランクから救出しているのが、スバルの視界に入った

 

「ギン姉……良かったぁ……」

 

スバルは安心した様子で呟くと、力が抜けたように座り込んだ

 

その間に、音と吸収、更にチンクは足下の影に沈むように姿を消した

 

それを確認した二人は、他に敵が居ないか確認した後に、ギンガ達の治療を開始

 

その時になって、遅れていたなのはとティアナが合流

 

二人はなのは達に仔細を説明した

 

なおこの戦いにより、スバルのデバイス

 

マッハキャリバーは致命的な損傷により機能を停止

 

しばらく修理に回されることが決まった


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