魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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運命への分かれ道

時は経ち、運命の別れ道たる意見陳述会の前日

 

機動六課隊長のはやては、全員に半日の休暇を与えた

 

ディエチから教えられた情報から、スカリエッティ達が襲撃してくるのが、終わる直前の早朝と分かったからである

 

だが、誰も外に出ないで隊舎で静かに過ごした

 

そして、全員考えてることは同じだった

 

なんとしても、未然に防ぐ

 

そして、午後に入るとはやてからの通達で、全員のデバイスのリミッターが解除されることに決まった

 

はやての決定を聞いて、なのはが難色を示した

 

だが、はやての万全を期したいという言葉を聞いて、渋々と従った

 

そして問題の配置だが、万が一を考えて冬也が隊舎に待機することが決まった

 

これは、ディエチが居ることも考慮した結果である

 

地上本部へは、他のメンバー全員が行くことになった

 

その中には、本来だったら交代メンバーの楓と古菲の二人も居た

 

そして、夜七時半

 

なのは達はヘリコプターで向かうために、屋上へと集まり乗っていった

 

その時、その屋上に寮母のアイナの付き添いでヴィヴィオがやってきた

 

「ヴィヴィオ? なんで、ここに?」

 

なのはが近づきながら問い掛けると、アイナが

 

「どうも、なのはさんが居なくなるのが不安になったみたいです」

 

と言った

 

すると、なのははどこか納得した様子で頷きながら

 

「そっか……この時間に居なくなるのは、初めてだったね」

 

と言いながら、ヴィヴィオの前でしゃがみ込んで、ヴィヴィオの頭を撫でながら

 

「大丈夫だよ。なのはママは、すぐに帰ってくるよ」

 

と言うと、ヴィヴィオは不安げではあるが頷いた

 

それを見て、なのはは頷くと立ち上がって

 

「アイナさん。ヴィヴィオをよろしくお願いします」

 

と頭を下げた

 

「はい。お任せください」

 

なのはの願いを聞いて、アイナは微笑みながら頷いた

 

そんな屋上では、フェイトが冬也と話していた

 

「冬也さん……隊舎をお願いします」

 

「ああ、任せておけ。必ず守ろう」

 

フェイトの願いを聞いて冬也がそう言うと、フェイトは冬也を見つめながら

 

「冬也さんも、絶対に生きてください」

 

と言った

 

フェイトの言葉に冬也は一瞬驚くが、すぐに微笑みを浮かべて

 

「ああ、了解した」

 

と答えた

 

あの会談の日以来、冬也に変化が起きていた

 

以前よりも笑顔が増えて、多少だが面倒見もよくなっていた

 

特に、エリオとキャロには気をかけている様子で、二人もそんな冬也に懐いているようだった

 

ちなみに、フェイトはその事に関しては、冬也が少し羨ましかったりした

 

閑話休題

 

そして数十分後、出撃したメンバー達は思い思いに居た

 

それはヘリパイロットだったヴァイスも同じで、ヘリに背中を預けて星空をぼーっと眺めていた

 

すると、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてきて

 

「ヴァイス陸曹、差し入れです」

 

とティアナが、飲み物が入ったポットとビニール袋を片手にやってきた

 

「これ、差し入れです」

 

「お、ありがたいね」

 

ヴァイスはティアナから差し入れを受け取ると、サンドイッチを食べながらポットの蓋を使ってコーヒーを飲んだ

 

ティアナはそれを見てから、自分用の飲み物をポケットから取り出して

 

「あのヴァイス陸曹……気に障ったらすいません」

 

「ん?」

 

ティアナが小声で謝ると、サンドイッチを飲み込んだヴァイスが首を傾げながらティアナに視線を向けた

 

「シグナム副隊長から聞きました……ヴァイス陸曹は昔、武装隊でも凄腕のスナイパーで、エースだったって……」

 

ティアナのその話を聞いて、ヴァイスは一瞬動揺したが、すぐに何時もの飄々とした表情を浮かべて

 

「エースなもんかい。魔力量は少なくってバリアジャケットは形成出来ないし、ヘマでミスショットして、今じゃあ、銃すら持てないヘリパイロットだ」

 

と言った

 

「ヴァイス陸曹……」

 

ヴァイスの言葉を聞いて、ティアナは悲しそうな表情を浮かべた

 

すると、ヴァイスはティアナの頭に手を置いて

 

「俺のことよりも、自分のことを心配してろ。そんなんじゃあ、またミスショットするぞ?」

 

と言った

 

「わかりました。それでは、私は戻ります」

 

「おう、差し入れあんがとよ」

 

ティアナが敬礼してから走り去ると、ヴァイスはコーヒーを飲みながら

 

「全部、昔の話さ……そうだろ、ストームレイダー」

 

〈そうですね〉

 

ヴァイスの問い掛けに対して、ストームレイダーは淡々と返答した

 

こうして夜は更けていき、運命の時間は訪れる


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