魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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新たな仲間

会談から数日後、冬也は整備室で作業をしていた

 

その傍らに居るのは、陸士の茶色い制服を着たディエチだった

 

今の彼女の立場は観察処分者であり、近くに六課所属の魔導師が居るなら、六課隊舎内は自由に行動して良いとなっている

 

そして冬也が今行っているのは、そんなディエチの武装の改修である

 

まず、持ち運びし易いようにと、砲身が伸縮

 

更に、非殺傷設定への対応である

 

それらの対応は本来ならば、シャーリーの仕事である

 

だが、今日はシャーリーは別の仕事があって、それが無理であった

 

その内容とは、訓練場でのことだ

 

今日からこの機動六課に、新しい仲間が来たのだ

 

「みんな凄いね! いつもこんなハードな訓練をしてるの?」

 

と言ったのは、スバルと一緒にストレッチをしているスバルの姉

 

ギンガである

 

「うん……大体はね。出動が掛かった日以外はずーっと訓練漬けで、時々で隊長達と模擬戦」

 

「つか、その隊長達との模擬戦が一番キツいんだが……」

 

スバルの言葉を聞いて、体を解しながらもう一人の新しい仲間

 

マックスが苦々しく言った

 

シャーリーはこの二人のデバイスをシミュレーターに対応させるために、訓練場に来ていたのだ

 

そして、柔軟も終わって解散しようとした時

 

「なのはママー!」

 

というヴィヴィオの声が聞こえて、全員は視線を向けた

 

その方向には子守役のザフィーラを置いて、駆け寄ってくるヴィヴィオの姿があった

 

「ヴィヴィオ!」

 

「危ないから、転ばないようにね!」

 

なのはは手を振りながら名前を呼び、フェイトはヴィヴィオに忠告した

 

その光景を全員が微笑ましく見ていると

 

「うん! あうっ!」

 

言われた傍から、ヴィヴィオは転んだ

 

「あっ! 大変!」

 

「待った! 綺麗に転んだし、地面も柔らかいから大したダメージは無いよ」

 

転んだヴィヴィオを見て、フェイトが慌てて駆け寄ろうとしたが、それをなのはが制止した

 

そして、その場でしゃがむと

 

「ほら、ヴィヴィオ。こっちにおいで。なのはママはここに居るよ」

 

と言った

 

なのはの声に反応してか、ヴィヴィオは顔を上げたが、グズり始めた

 

「なのは、ダメだよ。ヴィヴィオはまだ小さいんだから!」

 

見てられなかったのかフェイトはそう言うと、ヴィヴィオのほうに駆け出した

 

だが、フェイトが到着するよりも早く、別の人物

 

ディエチを従えた冬也が、転んでいたヴィヴィオを抱き上げて

 

「大丈夫か、ヴィヴィオ?」

 

と問い掛けた

 

「冬也さん、ありがとう」

 

先日の件がまだ恥ずかしいのか、フェイトは顔を赤らめながら冬也に感謝した

 

そして、近寄ってきたなのはは呆れた様子で

 

「まったく。冬也さんもフェイトママも優し過ぎです」

 

と言うが、冬也からヴィヴィオを抱き変わったフェイトは少し怒った表情で

 

「なのはママは厳し過ぎです」

 

と苦言を呈した

 

冬也は二人の会話が理解出来ないのか、首を傾げた

 

そんな一連の光景を見て、ザフィーラを愛でていた《ザフィーラは若干迷惑そう》眼鏡を掛けた童顔の女性

 

マリエル・アテンザことマリーが

 

「ねえ、あの女の子は?」

 

と近くに居たシャーリーに問い掛けた

 

するとシャーリーは笑みを浮かべて

 

「なのはさんとフェイトさんの子供」

 

と説明した

 

「へぇ……ええええっ!?」

 

マリーは一瞬納得しかけたようだが、すぐに驚愕の声を上げた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数十分後、食堂にて

 

「なぁんだ。そういうことかぁ」

 

慌てたマリーがなのは達に突撃しようとしたので、シャーリーは慌てて補足説明を食堂にて行った

 

「そう。なのはさんとフェイトさんが、ヴィヴィオの保護責任者になってるの」

 

二人が話し合っている視線の先では、なのはとフェイト、冬也とディエチ、更にはフォワード陣、ギンガとマックスが複数の机を使って食事していた

 

「うーん……相変わらず、いい腕だね。当麻は」

 

「本当に」

 

当麻作の料理を食べて、スバルとティアナがそう話し合っていると、なのはが当麻を手招きして

 

「上手い手を考えたね、上条くん」

 

と囁くように言うと、当麻はグッと親指を立てて

 

「上条さんの主夫力を舐めてはいけませんのことよ!」

 

と自信満々に告げた

 

なのはが誉めた理由は、ヴィヴィオが食べている料理にある

 

ヴィヴィオはまだ子供なので、定番でピーマンが嫌いである

 

それを当麻は、丸々のピーマンの中に肉を詰めたのだ

 

「うー……ピーマン嫌い!」

 

ヴィヴィオは涙を滲ませながら言うが、フェイトとなのはが

 

「ヴィヴィオ、好き嫌いしないの」

 

「ヴィヴィオが残すと、作ってくれた上条くんが悲しむよ?」

と言うと、ヴィヴィオはうーうー言いながら、少しずつ崩しながら食べ始めた

 

「……どうする?」

 

「……イタダキマス」

 

そんな光景を見ていて、エリオの皿にニンジンを移そうとしていたキャロも自分で食べた

 

「そういえば、冬也さんは嫌いな食べ物とかは無いんですか?」

 

フェイトが思い出した用に問い掛けると、冬也は一口飲み込んでから

 

「まあ、好き嫌い出来る環境ではなかったな」

 

と言った

 

冬也の話を聞いて、フェイトが悲しそうな表情をしていると

 

「ただ、雪音が作ってくれた料理はおいしかったな」

 

と懐かしむように呟いた

 

それを聞いて、フェイトは安心した表情で

 

「それは良かったです」

 

と頷いた

 

《なんでしたら、作った料理をお教えしましょうか?》

 

《お願い》

 

裏で、夜叉とフェイトがこんな念話をしていたのを、冬也は知らない


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