魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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英雄の条件 その3

「それで、反旗を翻した英雄というのは……?」

 

カリムが問い掛けると、冬也は少し間を置いてから

 

「まず前提として、俺は人ではない」

 

と言った

 

「冬也さん、それは……」

 

フェイトが立ち上がるが、冬也は片手を上げて制してから

 

「俺は人間をベースとした人型生態兵器……人間を殺すために作られた兵器だよ」

 

冬也の説明を聞いて、カリムとクロノは驚愕で固まった

 

「そして、俺を含めた人型生態兵器を開発したのが、先日現れた男、ロンドだ」

 

冬也が説明していると、夜叉がウィンドウを開いて写真を表示させた

 

「人型生態兵器……」

 

「そのロンドの目的はなんなんだ?」

 

クロノが問い掛けると、冬也は一瞬間を置いてから

 

「奴の目的は……人類の抹殺」

 

と語ると、クロノとカリムは絶句していた

 

「奴はそのために、俺を含めて人型生態兵器を作った……その中でも優秀な七体を七大罪と呼んでいた」

 

「七大罪?」

 

冬也の説明を聞いて、カリムが問い掛けた

 

「強欲、傲慢、暴食、嫉妬、怠惰、色欲、憤怒の名前を与えられた七体だ。俺は傲慢の名を与えられた」

 

冬也の説明を聞いて、カリムはハッとした表情を浮かべて

 

「まさか、罪を従えし愚者とは……」

 

と言うと、冬也は頷いて

 

「間違いなく、俺の他の六体とロンドのことだろうな」

 

と肯定した

 

「他の六体のデータは、後に提出しよう」

 

「ああ、助かる」

 

「そのデータがあれば、戦えます」

 

カリムがそう言うと、冬也は首を振って

 

「戦うのは止めておいたほうがいい」

 

と言った

 

「どうしてだ?」

 

「クロノ君、彼らは全員がオーバーSランクなんだよ」

 

クロノの問い掛けに対してなのはが答えると、クロノとカリムの二人は目を見開き

 

「全員がオーバーSランク!?」

 

「彼らだけで、戦争が出来るわね……」

 

と言った

 

「実際、俺達七体でロンド率いる組織と戦争をしていたよ」

 

「たった七人で、戦っていたのか?」

 

「あまりに無謀では……」

 

冬也の話を聞いて、クロノとカリムは心配そうな表情を浮かべた

 

「他に居たのは、同胞だが、戦いたくないと言った子供達でな……さすがに、戦場には出したくなかったよ……」

 

「子供達というのは、何歳位だったんですか?」

 

フェイトが問い掛けると、冬也は少し思い出すように時間を置いて

 

「大体、七歳位から十歳位だったか……俺達が面倒を見ていたよ……他の連中は、俺達を化け物呼ばわりしていたしな」

 

と答えた

 

するとフェイトは、膝の上に置いていた拳を握り締めた

 

優しい彼女としては、子供達ですら化け物呼ばわりした奴らを許せないのだろう

 

「この世界に来る直前、俺達七体は00作戦に臨んでいたよ」

 

「00作戦?」

 

冬也の告げた作戦名を聞いて、武が首を傾げた

 

「生還率0、生存率0から取った作戦名だよ」

 

「そんな……」

 

冬也の説明を聞いて、フェイトは悲しげな表情を浮かべた

 

「元々、俺達はロンドを殺した後は生きるつもりなど無かったんだ……だがどういう訳か、俺は生き残ったがね」

 

冬也がそう言うと、場は静まった

 

生き残るつもりは無かった

 

その言葉に、フェイトは怒りを覚えた

 

冬也は、雪音の想いを理解してないと

 

「ふざけないでください……っ!」

 

フェイトは静かにそう言いながら、立ち上がった

 

「む?」

 

フェイトの言葉が聞こえて、冬也は視線をフェイトへと向けた

 

そこに居たのは、怒りの表情を浮かべたフェイトだった

 

「冬也さんは、何もわかっていません! 雪音さんが、どういう想いであのメッセージを託したのか!!」

 

「フェイト……? 少し、落ち着きなさ」

 

妹の怒りを静めようと、クロノが声を掛けるが、フェイトはクロノをキッと睨んで

 

「お兄ちゃんは黙ってて!」

 

「はい……」

 

フェイトの眼力に負けて、クロノは大人しく椅子に座った

 

「雪音さんは、冬也さんを一人にさせない為に、あのメッセージを残したんですよ!?」

 

「だが俺は、人では……」

 

フェイトの言葉に冬也がそこまで言うと、フェイトは手を大きく振るって遮り

 

「誰が何と言おうと、冬也さんは人間です!」

 

と断言した

 

「そうでないと……雪音さんが可哀想ですよ……」

 

フェイトが涙混じりに言うと、冬也が困惑した様子で

 

「なぜ、そこまで?」

 

と問い掛けた

 

冬也の問い掛けに対してフェイトは数瞬すると、冬也を見つめながら

 

「私は……冬也さんが……好きですから」

 

と告げた

 

フェイトの告白に、冬也を含めたほとんどのメンバーは目を丸くしたが、クロノは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がって

 

「待て、フェイト! いきなり、なにを!」

 

と叫ぶが、フェイトはそんなクロノに視線を向けて

 

「お兄ちゃん、今は黙ってて」

 

と告げた

 

この時、フェイトから尋常ではないプレッシャーが放たれており、はやては後に

 

『あの時のフェイトちゃん……阿修羅すら凌駕する存在感やったわ』

 

と言っている

 

そんなフェイトのプレッシャーに負けて、クロノはすぐにその場で正座して

 

「はい……すいませんでした」

 

と静かになった

 

何とも、威厳の無い兄であった

 

「それに、冬也さんが人ではないと言うのなら……私も人ではありません」

 

フェイトがそう言うと、なのはが立ち上がり

 

「フェイトちゃん、それは……!」

 

と声を荒げたが、フェイトは首を左右に振って

 

「なのは、いいの……」

 

と止めた

 

「どういうことですか?」

 

フェイトの言葉に疑問を覚えて、ネギが問い掛けた

 

「私は……アリシア・テスタロッサのクローンなの……」

 

フェイトのその言葉に、冬也を含めた四人が息を呑んだ


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