「今の映像は……」
映像が終わると、クロノは視線を武に向けた
すると武は、目元を押さえてから
「……今のは、俺と冥夜が参加した最後の一大反攻作戦……桜花作戦です」
と言った
「桜花作戦?」
カリムが首を傾げると、武は頷いて
「ユーラシア大陸、中国は新彊、ウィグル自治区に存在するBETAの巣、通称、オリジナルハイヴを攻略する作戦です……」
武は複雑な表情を浮かべながら、説明を始めた
「そもそも、BETAとはなんなんだ?」
クロノが問い掛けると、武は一回冬也に視線を向けて
「冬也隊長、BETAに関するデータは残ってませんでしたか?」
と問い掛けた
すると、冬也は頷いて
「残っている……夜叉」
と夜叉に視線を向けた
すると、夜叉は頷いてから再び映像を映し出した
そこに映し出されたのは、生理的嫌悪感を増徴させる存在だった
「これは?」
カリムが問い掛けると、武は憎しみが籠った眼でその映像を見ながら
「こいつらがBETAです。正式にはBeings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of humanrace……人類に敵対的な地球外起源種の略称です」
「これが、BETA……」
武の説明を聞いて、なのはは泣きそうな表情を浮かべた
恐らく、以前武から聞いた話を思い出したのだろう
恩師が目の前で食い殺されて、元の世界に逃げたらまた恩師が殺されて、幼馴染が瀕死の重傷を負ったことを
「俺たちが居た世界では、第二次世界大戦において日本帝国は条件降伏をして終戦を迎えました。BETAが確認されたのはその数年後です。最初に確認されたのは、火星でした」
「火星!?」
「火星でBETAは確認されたんか!?」
武の説明を聞いて、フェイトとはやての二人が驚愕の声を上げた
火星は生物の生活環境には適しておらず、生物が住むには過酷過ぎるのを知っているからだ
「その後、BETAは月面にて確認されて、地球以外にて生命体を確認した人類は歓喜してBETAに対して何とかコミュニケーションを取ろうとしました……ですが、接触に向かった部隊からの交信が途絶。そして、最悪の事件が起きてしまいました……」
「最悪の事件?」
「それは、一体……」
カリムとクロノが問い掛けると、武は数瞬間を置いてから
「通称、サクロボスコ事件……月面に建設された恒久月面基地プラトーワンがBETAに襲撃されて全滅したんです」
と説明した
武の説明を聞いて、ほとんどのメンバーは目を見開いて固まった
「そして、そこを皮切りに人類とBETAの戦争が始まりました……」
「戦争……」
「人類とBETAのか……」
武の説明を聞いて、カリムとクロノは手を組んだ
「月は地獄だ……」
「その言葉は?」
武の呟きを聞いて、はやてが問い掛けた
「当時、月面にて指揮を執った将官の言葉です……一方的に被害が拡大する様を見て言ったそうです」
「それほどまでに酷かったということか……」
クロノが呟くと、武は頷いて
「しかし、戦線を維持出来ずに月面から撤退……その数年後、BETAの落着ユニットが先ほど説明したオリジナルハイヴの場所に墜落……そこから、人類の絶望的な消耗戦が始まりました……人類は僅か三十年で人口を六十億人から約十億人にまで減少……ユーラシア大陸は約九割がBETAに占領されました……」
「たった、三十年で……」
「そこまで、やられたんか……」
続く説明を聞いて、フェイトやはやて達は瞠目した
たった三十年で、人類がそこまで追い込まれたことに信じられなかったのだろう
「人類は国連を中心になんとか戦線を構築し、台湾、樺太、フィリピン、日本からなる極東絶対防衛線にて耐えてました……そして、2001年の12月25日に日本は佐渡島に存在したハイヴ……日本呼称で甲21号ハイヴ……通称、佐渡島ハイヴの攻略作戦にて人類は一斉に反攻に打って出ました……俺と冥夜が初めて参加した大規模作戦ですね」
武がそこまで言うと、はやてが首を傾げて
「国連が中心? ……アメリカが中心やないんか?」
と問い掛けた
「アメリカは確かに、戦力としては世界でも最大級です……ですが、世界ではアメリカは否定されてました……特に、日本ではね」
と語った
「アメリカが否定されていた?」
「どうして?」
フェイトとなのはが問い掛けると、それまで黙っていた冥夜が拳を握り締めて
「アメリカは……日本を見捨てた」
と憎しみが籠もった声で呟いた
「日本を……」
「見捨てた……?」
はやてとなのはは呆然と呟いた
「1998年……日本にBETA群が侵攻を開始……同年、佐渡島にハイヴが建設されるとアメリカは日米安保条約を一方的に破棄して、日本から撤退……そして2000年に発動された明星作戦にて、アメリカ軍は何の通告もなしに五次元破壊爆弾……通称、G弾を二発投下……結果、作戦区域に展開していた日本帝国軍、国連軍、大東亜連合軍に甚大な被害が出ました……確かに、G弾により横浜に作られたハイヴは攻略できました……ですが、それにより横浜は恒久的に重力異常が起きてしまい、草木一本生えない土地と化しました……」
「G弾……?」
「どういう代物なんや?」
G弾がどういうものか分からず、なのはとはやては問い掛けた
「簡単に言いますと、起爆した範囲の物質をえぐり取り、どこかに飛ばすんですよ……確かに、核爆弾と違って放射能は出ません……ですが、えぐり取られた物質はどこに行くのか分からず、しかも、恒久的に起こる重力異常により草木一本生えない土地に変わるんです……そんな物を何の事前通告も無しに投下されて、戦力を消し飛ばされて、それを我が物顔で戦果として言われて、挙げ句の果てにはそれを世界中のハイヴに対して集中運用しようと、アメリカは言ったんですよ……その結果が、地球の破滅に繋がると知らないで……」
「武くん、それは……」
武の話を聞いて、なのはは思わず立ち上がった
「構いません……まず、皆さんに先に言っておきます……俺は見た目通りの年齢ではありません」
武はそう言うと、以前になのはやティアナに語ったのと同じ内容を話した
そして
「ある世界では、アメリカ軍が主導した作戦でユーラシア大陸にG弾を集中運用して、ユーラシア大陸と日本列島が海に沈みました……」
と言い終わると、武は冥夜に視線を向けて
「ごめんな、冥夜……これが、俺の秘密だ……」
と言った
すると、冥夜は首を振って
「いや、言ってくれてありがとう……それに、その話を聞いて得心したよ……武は最初から普通ではなかったからな」
と納得していた
しかし、なのはと冥夜以外のほとんどが絶句していた
そのあまりにも、悲惨にして凄惨な話に
「何回もループしていたなんて……」
「あまりにも、酷すぎるやろ……」
フェイトとはやてはあまりの悲惨な事実に、涙を滲ませながら口元を手で覆った
だが、ネギと冬也はどこか納得した様子で
「それで納得しました……武さんの精神力の高さ」
「ああ……それに、適応力と戦闘力の高さもな」
と呟いた
「以上が、俺に関することです」
武がそう締めくくると、クロノは頷いて
「これで、幻想殺し、雷を纏う、蒼き装甲の各英雄は分かった……後は……」
「反旗を翻した英雄……ですね」
とクロノに続いてカリムが言い、二人の視線が冬也に集中した
「ああ……間違い無く、俺のことだろうな……」
冬也はそう言いながら、目を細めた