魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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短いです


少女の名前は

翌日、なのははシグナムが運転する車に乗っていた

 

「すいません、シグナムさん。わざわざ運転してもらって……」

 

「構わん。車は主はやての車だしな」

 

なのはが感謝していると、シグナムは運転しながらそう言った

 

すると、後部座席から

 

「あのさ……一つ質問があるんだけど?」

 

と、ユーノの声が聞こえた

 

「なんだ、スクライア?」

 

「なんで僕はこんな扱いなのかな!?」

 

シグナムが問い掛けると、ユーノはジタバタと暴れながら抗議した

 

しかし、抗議するのも仕方ないだろう

 

なにせ、ユーノは今現在、バインドでグルグル巻きに縛られた状態で後部座席に転がっているのだから

 

ちなみに、縛っているバインドの色はオレンジ色を中心に白と若草色だった

 

それから見るに、アルフとはやてとシャマル辺りが犯人だろう

 

「なんか、朝起きたら六課に居るし、気づいたらバインドで縛られてたし、しかもそのまま車に放り込まれたよね!?」

 

ユーノがまくしたてると、なのはは苦笑いを浮かべた

 

なんせ、彼女は友人達の手際の良さに驚くと同時に管理局員として悩んだからだ

 

確かに、愛しの彼氏と居れるのは嬉しい

 

だが、管理局員としては無限書庫司書長を拉致していいのかな?

 

と、悩んだのだ

 

ちなみに、今彼女達が向かっているのは聖王教会系列の病院である

 

理由は今朝方に教会から、あの女の子が目覚めた

 

という連絡を受けたからだ

 

その時、通信画面が開いて聖王教会騎士団に所属しているシスター・シャッハの姿が映った

 

「はい」

 

『すいません! こちらのミスで、あの女の子を見失いました!』

 

シスター・シャッハの報告を聞いて、シグナムは軽く目を見張ると真剣な表情を浮かべて

 

「わかりました。急行します」

 

と言うと、車の屋根の上にパトライトを出現させて車を一気に加速させた

 

そして十数分後、三人が乗った車は件の病院に到着した

 

すると、病院の玄関付近に居たシスター・シャッハが駆け寄ってきて

 

「申し訳ありません! こちらの不手際で、対象を見失いました!」

 

と勢いよく頭を下げた

 

「お気になさらず。して、状況は?」

 

シグナムが問い掛けると、シスター・シャッハは病院を見上げながら

 

「一般病棟に居た患者達の避難は完了し、隔離病棟の封鎖も完了しました。それに魔法の発動も確認されなかったので、まだ中に居る筈です」

 

と答えた

 

それを聞いて、なのはが

 

「それでは、私達が中庭を探しますので、シャッハさん達は内部を探してください」

 

と言った

 

「はい、わかりました!」

 

なのはの言葉を聞いて、シャッハは病院内に駆け込んでいった

 

それを三人は見送ると、中庭へと向かった

 

そして探していると、ユーノとなのはの近くの草村からあの女の子が姿を表した

 

女の子はなのはとユーノを見ると、怯えた様子で後退りした

 

その時だった

 

「逆巻け! ヴィンデルシャフト!」

 

という声が聞こえて、二人の頭上を一陣の風が駆け抜けて、女の子の前に着地して現れたのはシスター・シャッハだった

 

彼女はデバイスであるヴィンデルシャフトを展開しており、両手には武器である双剣を構えている

 

女の子はシャッハに怯えて、尻餅を突いた

 

シスター・シャッハはその女の子に対して、油断なくヴィンデルシャフトを構えながら

 

「お二人とも、離れてください!」

 

と言った

 

シスター・シャッハが怖いのか、女の子は涙を滲ませてシスター・シャッハから離れようとした

 

それに気づいて、なのはがシスター・シャッハの肩に手を置いて

 

「待ってください、シスター・シャッハ。怯えてるじゃないですか」

 

「ですが、あの女の子は危険かもしれないんですよ?」

 

なのはの言葉にシスター・シャッハが抗議していると、次にユーノがシスター・シャッハに歩み寄って

 

「だからと言って、怖がらせても意味はありません。僕達に任せてください」

 

と言った

 

数秒すると、シスター・シャッハはヴィンデルシャフトを下ろして

 

「わかりました……」

 

と言って、下がった

 

それを確認すると、なのはとユーノはゆっくりと女の子に歩み寄って

 

「ごめんね、怖がらせて」

 

「いきなり居なくなって、探してたんだよ」

 

と優しく語りかけた

 

そして、なのはが女の子を立ち上がらせてから砂を叩いて落としていると

 

「ママとパパ……居ないの」

 

と呟くように女の子は言った

 

「そっか……それは大変だね」

 

「だったら、僕達も一緒に探してあげるよ」

 

二人はそう言いながら、シスター・シャッハに念話を開始した

 

《シスター・シャッハ、この子のことは私達に任せてください》

 

《どうやら、両親が居ないから不安になって探していたみたいですね》

 

《そうですか……わかりました》

 

シスター・シャッハはそう返答すると、デバイスを収納して下がった

 

その間に、ユーノはなのはが途中で買ったぬいぐるみを使って女の子を慰めていた

 

そして、女の子が泣き止んだのを確認すると

 

「僕の名前はユーノ・スクライア。彼女は高町なのはって言うんだ。君の名前は?」

 

と名乗ってから、女の子に名前を聞いた

 

すると、女の子はぬいぐるみを抱き締めながら

 

「……ヴィヴィオ」

 

と呟くように名乗った

 

「そっか……うん、可愛い名前だね」

 

なのはが誉めると女の子、ヴィヴィオはようやく笑みを浮かべたのだった

 

それからなのははシグナムに連絡を取り、数分後に合流

 

ヴィヴィオの検査が終わるまで、待っていた

 

検査が終わると、ヴィヴィオは疲れたのかあてがわれた病室で眠った

 

眠っているヴィヴィオを見ながら、なのはは頭を優しく撫でていた

 

すると、ヴィヴィオは目尻に涙を滲ませながら

 

「ママ……パパ……」

 

と呟いた

 

ヴィヴィオの寝言を聞いて、なのははヴィヴィオの頭を優しく撫でながら

 

「ママはここに居るよ……」

 

と優しく語りかけた

 

すると、それまで黙って見ていたユーノはそんななのはを優しく抱き締めた

 

そして、なのははヴィヴィオを機動六課で預かることを決めたのだった


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