魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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ここでも、オリジナル展開です


動き出す勢力 その3

フェイト達は、周囲に現れた人物達を見て固まっていた

 

全員、頭のてっぺんから足先まで黒いマントで覆われているので顔まではわからない

 

だが、全員が並大抵の実力ではないのはすぐに察した

 

声を聞くまで近付かれていることに気付かせず、冬也の左腕を斬り飛ばし、あまつさえ、ただの蹴りで人間を砲弾のように飛ばした

 

何より、全員から発せられている威圧感(プレッシャー)がハンパではない

 

少しでも気を抜いたら、一撃で殺される

 

そういう確信が、なのは達にはあった

 

すると、トーレの隣に新たに一人現れて

 

「今の内に、引け」

 

とトーレに告げた

 

声から察するに、年老いた男だろう

 

「……わかった。ディエチを回収してくれるか?」

 

トーレがそう言うと、その男は捕まっているディエチを一瞥して

 

「捕まるようなグズは知らん……」

 

と拒否した

 

「貴様っ!」

 

男の言葉を聞いて、トーレは激昂して男を睨んだ

 

男は、そんなトーレの怒気をサラリと受け流し

 

「簡単に捕まるような奴、我々の計画には不要だ……邪魔になるし、ああなっては簡単に取り返せん」

 

と言った

 

男の言葉を聞いて、トーレは唇を噛んで数秒間黙ると

 

「……わかった……ディエチは諦める」

 

と言うと、クアットロに肩を貸して立たせて姿を消した

 

男はそれを見送ると、なのは達を見回した

 

そして、近くに居たヴィータに気づいて

 

「貴様……闇の書の守護騎士の一人! 鉄槌の騎士か!?」

 

と声を張り上げた

 

男の言った《闇の書》という言葉を聞いて、ヴィータは目を見開いた

 

(こいつ、もしかして!?)

 

ヴィータがそう思っている間に、男は近くのビルの屋上に居たシグナムを見つけて

 

「そちらは、烈火の将か!」

 

と叫んだ

 

そして最後に、はやてが持っている夜天の書を見つけ出した

 

「ああ……なんという僥倖! 我が五十年の悲願……ようやく叶う!」

 

男はそう言うと、はやてを睨み

 

「我が一族を滅ぼした恨み……ここで晴らすぞ闇の書!」

 

と声高に宣言した

 

そして、男の言葉を聞いて、はやて達は固まった

 

目の前に居る男は、闇の書によって人生を歪められた人間の一人なのだと

 

そう思っただけで、息が詰まった

 

その時だった

 

冬也が埋まっていた瓦礫の山が吹き飛び、冬也が高速で飛び出してきた

 

「ロンドオオォォォ!」

 

冬也は叫ぶように男の名前を呼びながら、男に突撃した

 

その声から感じたのは、激しい憎しみ

 

(あの冬也さんが、感情を露わに!? それに、ロンド!?)

 

その名前は、夜叉が教えてくれた冬也達の人生を歪めた男の名

 

冬也が振るった刀は、男、ロンドの前に滑り込んできた人物によって防がれ、冬也はカウンターを叩き込まれて吹き飛んだ

 

しかし冬也は空中で体勢を立て直すと、フェイトの隣に着地した

 

「冬也さん……」

 

フェイトが心配そうに声を掛けるが、冬也は反応せずに持っていた刀を地面に突き刺し、ある方向に右手を伸ばした

 

その直後、右掌に斬り飛ばされた左腕が冬也の右手に収まった

 

冬也はその左腕を、無造作に切断面にくっつけた

 

その直後、くっつけた部分が光り輝きすぐに収まった

 

光りが収まったのを確認すると、冬也は右手を離した

 

すると、左腕はくっついており、冬也は確認の為か軽く左腕を回したり握ったりした

 

そして問題ないのを確認したのか、冬也は左腕を上に伸ばした

 

すると、もう一本の刀がどこからか飛んできた

 

冬也はそれを掴むと、地面に突き刺していた刀を抜いて構えた

 

「ロンド……」

 

「久しいな……傲慢(スペルビア)

 

冬也とロンドは互いの名前を呼びながら、互いを睨んだ

 

「十数年近くに渡って、貴様を殺すことだけを願ってきたよ……」

 

「やはり、貴様は駄作だな……貴様にその体と能力を与えたのは、我だと忘れたか? 親不幸者め」

 

冬也に対して、ロンドは吐き捨てるように告げた

 

「貴様が親など、まっぴら御免だ……それに、貴様を許せない理由が増えた」

 

冬也がそう言った直後、冬也の右腕が霞んだ

 

その直後、冬也を蹴飛ばした人物のマントが切り刻まれて、その人物の姿が現れた

 

鍛え上げられた肉体に、腰辺りまで伸びている黒髪

 

そして何より、特徴的な中国の民族衣装のようなバリアジャケットと顔を覆っている機械のマスク

 

その姿を見て、冬也が

 

「やはり、(ワン)か……」

 

と呟いた

 

「王さん……?」

 

その名前を、フェイトは知っていた

 

以前に写真で見た冬也の仲間の一人

 

だが、冬也は死んだと言っていた筈……

 

「貴様……一体、何回俺達を弄べば気が済むんだ!!」

 

冬也は叫びながら、左手の刀を突きつけた

 

「死体まで使うなど、大概にしろ貴様!」

 

と怒鳴った

 

冬也の言葉を聞いて、フェイト達は息を呑んだ

 

つまり、自分達を囲んでいる六人は死んだ冬也の仲間達

 

それを、ロンドが何らかの方法で操っているということ

 

「クックック……むしろ、誇りに思ってほしいね……死してなお、我の役に立てるのだからな!」

 

「貴様……っ!」

 

ロンドの言葉に冬也が拳を握り締めていると、ロンドは嘲るように

 

「しかし、いいのかな……隊長ががら空きだぞ!」

 

「なに!?」

 

ロンドの言葉に冬也は驚愕し、フェイトは気付いた

 

最初に影の中から現れた敵が、その姿を消していた

 

そして先ほど、ロンドは何て言っていた?

 

フェイトが顔をはやての方に向けると、その敵がはやての背後に現れていた

 

しかも、既に影を放とうとしていた

 

それに気づいて、ヴィータとシグナムが動こうとしたが、間に合わない

 

影がはやての胸部を穿とうとした、まさにその時

 

ガラスが砕けるような音が、その場に響き渡り、影が砕けた

 

影を砕いたのはもちろん、はやての護衛役の当麻だった

 

当麻は右手で影を壊すと、左手で影使いを殴り飛ばした

 

そして、右手を握り締めながら

 

「ロンド……お前に何があって、どんな思いで生きてきたのかは知らねえ……だけどな……神代達の人生をメチャクチャにして、はやての思いを否定して、何も思わないってんなら……お前のその、ふざけた幻想をぶち殺す!」

 

と大声で宣言した

 

当麻の言葉を聞いて、ロンドは額に手を当てながら

 

「ククク……何も知らないくせに、喚くな……貴様らを殺したいが、あ奴からの依頼は達成した……」

 

ロンドがそう言っている間に、いつの間にか六人全員がロンドの近くに集まっていた

 

「逃げるのか?」

 

「今はまだ、時ではない……時が来たら、戦ってやる……」

 

ロンドが言い終わった直後、七人を影が覆い尽くして消えた

 

「……シャーリー、追える?」

 

なのはが問い掛けると、通信画面が開いてシャーリーが残念そうにしながら

 

『ダメです……一瞬にして、反応をロストしてしまいました……』

 

と言った

 

それを聞いて、ネギが

 

「あれは恐らく、影を使った転移魔法かと思います……相手の技量がかなり高いので、魔力の漏れもなかったですし……」

 

と告げた

 

すると、はやてが気を持ち直して

 

「相手を逃がしたんは痛いなぁ……」

 

と呟き、それに便乗して

 

「ごめん、はやて……レリックも奪われた……」

 

と呟いた

 

すると、ティアナが手を上げて

 

「それなんですが……実は、私達で少しばかり策を練りまして」

 

と言いながら、キャロを手招きした

 

キャロはティアナの隣に来ると、被っていた帽子を脱いで

 

そこには、一輪の花が付いたカチューシャがあった

 

それを見てはやてが首を傾げていると、ティアナが指をパチンと鳴らした

 

その直後、花付きカチューシャはレリックへと変わった

 

「確かに、レリックケースは本物です」

 

「でも、敵に奪われた時のことを考えて、中身を取り出してレリックに直接厳重封印を掛けてから、敵と直接交戦する機会の少ないキャロの帽子の中に隠したんです」

 

スバルとティアナが続けて説明すると、はやては親指をグッと立てながら

 

「フォワード陣、ナイス判断や!」

 

と賞賛した

 

「それに、敵を一人捕縛したのは大きいですね」

 

武はそう言いながら、バインドで拘束しているディエチを見た

 

そして、なのは達は視線を冬也に向けた

 

冬也はロンド達が逃げてから、一言も喋っていない

 

だが、その背中から溢れんばかりに怒気を感じた

 

そんな冬也を、なのは達は初めて見た

 

冬也は常に冷静で、感情を表情に出さなかった

 

その冬也が、初めて怒りを露わにしてロンドに切りかかった

 

更に、ロンドが呼んだ《傲慢》という言葉

 

その事を冬也に聞くべきか、なのは達は悩んでいた

 

すると、フェイトが冬也に近づいて

 

「冬也さん……全て、聞かせてくれますか?」

 

と問い掛けた

 

フェイトが問い掛けると、冬也は深く深呼吸をしてから

 

「本当なら、俺だけで片を付けようと思っていたのだが……そうも言ってられなくなったな……」

 

と言ってから、全員を見回してから

 

「全て話そう……俺の……いや、俺達のことを……」

 

と言った


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