魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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地下と上空の戦闘 その3

地下での戦いは、佳境を迎えようとしていた

 

ルーテシアの実力が高く、人数の多いフォワード陣と拮抗していた

 

レリックケースはなんとか確保したが、フォワード陣は柱の影に隠れて話し合っていた

 

「これからどうする、ティア?」

 

「あの子達を捕まえたい所だけど、今はレリックケースの確保が先だしね……」

 

「それだったら、今こっちに来てるヴィータ副隊長を待った方がいいんじゃねえか?」

 

スバルとティアナの話を聞いて、マックスがそう言った

 

すると、ティアナは頷いて

 

「はい。ヴィータ副隊長を待って、指示を仰ぐべきですね」

 

ティアナがそう言ったタイミングで

 

『よし、お前達。いい判断だ』

 

そのヴィータから、通信が来た

 

「ヴィータ副隊長!」

 

『私も居るですよ!』

 

スバルが驚きの声を上げると、リインからも通信が来た

 

「リイン曹長まで……」

 

「今、お二人はどこですか?」

 

呆然としているスバルを無視して、ギンガが問い掛けた

 

そのタイミングで、弾幕を張っていたルーテシアにアギトが近づき上を向いて

 

「ルールー、何かが近づいてくる……魔力反応……デケェ!」

 

と、驚愕の声を上げた

 

その直後

 

「でぇりゃああああ!」

 

天井をぶち抜いて、ヴィータが現れた

 

しかも、ヴィータはそのままガリューにアイゼンを振るった

 

ガリューは両腕を交差させて防ぐが、ヴィータは満身の力を込めて

 

「ぜりゃああああ!」

 

雄叫びと共に振り抜いた

 

さすがに防ぎきれなかったらしく、ガリューは柱を壊して吹き飛んだ

 

その直後、リインがヴィータが開けた穴から飛び出してきて

 

「捕らえよ! 凍てつく足枷! フリーレン・フェッセルン!」

 

氷結系束縛魔法で、ルーテシアとアギトを覆うように捕まえた

 

ヴィータはそれを確認すると、肩越しに背後を見て

 

「おう……無事か、お前ら」

 

と、なんともカッコいいことを言った

 

「みんな、無事で良かったですよ~」

 

そんなヴィータの隣に、リインが安心した表情を浮かべながら飛んできた

 

「ヴィータ副隊長……やっぱ強ーい……でも、局員が公共の施設を壊しちゃっていいのかな……?」

 

「ま、まぁ……この辺はもう廃棄都市区画だし……」

 

呆然としたスバルの言葉に、ティアナがそう返すと

 

「……う、ぅん……」

 

キャロの瞼が、僅かに震えた

 

「あ、キャロ……」

 

「クキュルー!」

 

キャロが起きたことにエリオが気付くと、フリードが心配そうに鳴きながらキャロに近寄った

 

その時、撃破したのか確認しに行ったヴィータが

 

「ちぃっ! 逃げられた……」

 

「こちらもです! 逃げられました……」

 

リインもヴィータと同様に、ルーテシアとアギトに逃げられたことに気づいた

 

その数秒後、大きな揺れが起きた

 

「なんだ!?」

 

「地震か!?」

 

いきなり揺れたことに、武と冥夜が驚いていると

 

「大型召喚の気配があります……たぶん、それが原因です……」

 

エリオに助けられながら、キャロがそう言った

 

キャロの言葉を聞いたヴィータは、数瞬考えると、視線をスバルに向けて

 

「ひとまず脱出だ! スバル!」

 

「はい! ウィングロード!」

 

ヴィータの意図に気づき、スバルはウィングロードをヴィータが開けた穴に向けて螺旋階段のように展開した

 

「スバルとギンガが先行しろ! 私が最後に飛んでいく!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

ヴィータの指示に従い、全員は脱出のための準備を始めた

 

そんな中、スバルはティアナに近づいて

 

「ティア、この後も戦闘が続くことを考えると……」

 

「ええ、わかってる。考えがあるわ……」

 

スバルの言葉を遮って、ティアナはそう言うと、近くに落ちていたキャロの帽子を拾い上げ

 

「キャロ、ほら、帽子」

 

と手渡した

 

「あ、ありがとうございます」

 

キャロは帽子を受け取ると、頭に被った

 

「ねぇ、レリックの封印処理、お願いできる?」

 

「は、はい。やれます!」

 

キャロの返事を聞いて、ティアナは頷くと

 

「それとね、少し考えがあるんだ。手伝ってくれる?」

 

と、キャロに提案した

 

場所は変わって、上空

 

そこでは、はやてが次々と砲撃を放ち、ガジェットやドールを纏めて撃破していっていた

 

中には、はやてを撃破しようと接近してきたドールが居たが、当麻の二丁拳銃からなる弾幕により撃破された

 

「さあ、後何機や!?」

 

『9編隊……いえ、8編隊に減りました!』

 

はやての問い掛けにシャーリーが答えると、別のウィンドウが開き

 

『幻術パターンの解析、出来始めてます!』

 

『観測隊からの報告……複合識別作業、順調です!』

 

『現在、完成している解析データを体長陣と当麻さんに優先的に送信中』

 

『誤差範囲も想定して、複数のパターンを送信開始!』

 

アルト、ルキノ、茶々丸、千雨の順に報告した

 

各自の報告を聞いて、はやては笑みを浮かべて頷くと

 

「うん! さすがは、機動六課のオペレーター陣や!」

 

と言うと、シュベルトクロイツを構え直して

 

「さあ、ガンガン行くよ! 照準よろしく!」

 

『はい!』

 

はやての言葉にシャーリーは、笑みと共に答えた

 

更に場所は変わり、時空管理局地上本部

 

「なんだ? 何事だ!?」

 

と声を荒げたのは、時空管理局地上本部ツートップの片割れ

 

武闘派のリーダーたる、レジアス・ゲイズ中将である

 

そのレジアスに付き従っているのは、彼の娘にして副官を勤める、オーリス・ゲイズである

 

「これは今現在、廃棄都市区画にて行われている遺失物管理部機動六課の戦闘です」

 

オーリスがそう言うと、海上上空の戦闘映像が映った

 

「戦闘を行っているのは、SSランクの魔導士です」

 

「ん? ……地上本部にSS? ワシは知らんぞ!?」

 

レジアスが声を荒げると、オーリスは淡々とした口調で

 

「それはそうでしょう。本来の所属は海上本部の所属で、出向扱いです」

 

オーリスはそう言うと、新しくウィンドウを開いた

 

「今砲撃を放っているのは、機動六課部隊長の八神はやて二等陸佐です」

 

「八神はやて……あの八神はやてか!?」

 

オーリスの告げた名前を聞いて、レジアスは眉を上げた

 

「はい。その八神はやてです」

 

オーリスが肯定すると、レジアスは机を強打した

 

「中規模次元震の根源……犯罪者ではないか!?」

 

「八神はやて二等陸佐自身の執行猶予は終えていますし、今は精力的に働いております」

 

「同じことだ! 奴は犯罪者にすぎん!」

 

レジアスは声を荒げながらそう言うと、どっかりと椅子に座った

 

「問題発言です。公の場では控えてください」

 

「わかっている!」

オーリスの忠告をレジアスは聞き流すと、腕組みをして

 

「まったく……海の連中は何時もそうだ! 再発性を軽く見過ぎている!」

 

レジアスはそう言うと、画面に映し出されているはやてをじっと見てから

 

「機動六課の構成はどうなっている」

 

と、オーリスに問い掛けた

 

オーリスは頷くと、更に新しいウィンドウを開いた

 

「まず、部隊長として八神はやて二等陸佐。分隊長として、高町なのは一等空尉とフェイト・T・ハラオウン執務官。副隊長として、八神二等陸佐固有戦力の二名。これらを筆頭に各分野並びにバックヤードスタッフ並びにフォワード隊員は新人ばかりです」

 

オーリスの報告を聞くと、レジアスは鼻で笑った

 

「何かあったら、簡単に切り捨てられる編成だな。犯罪者には打ってつけではないか」

 

レジアスの言葉をオーリスは聞き流すと、また別のウィンドウを開き

 

「ここに、機動六課が保護した次元漂流者達による部隊も加わっております」

 

「次元漂流者の部隊か……どうせ、大したことはなかろう」

 

「そして、この部隊の創設には海上本部のクロノ・ハラオウン提督とリンディ・ハラオウン提督並びに、聖王騎士団所属のカリム・グラシアが許可を出しています」

 

オーリスのその報告を聞いて、レジアスは舌打ちした

 

「ちっ……英雄気取りの海の若僧が……」

 

レジアスはそう吐き捨てるように言うと、部隊構成とリンディやクロノ達の写真を睨みつけながら数秒間黙考してから

 

「今度、お前自らが率いて査察に行け。何か問題が一つでも有ったら、即査問だ」

 

レジアスはそう言うと、立ち上がり歩き出した

 

「そうすれば、海の連中に対するいい交渉カードになるかもしれんからな!」

 

「はい」

 

オーリスはそんなレジアスを見送りながら、静かに敬礼した

 

 


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