魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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地下と上空の戦い

『事故現場で私達が見つけたのは、生体ポッドと破壊されたガジェットの残骸でした』

 

『ポッドは大体、六歳くらいの子供が入れるサイズです……更には近くになにか重い物を引きずったような痕跡も確認しました。それと、この生体ポット……自分には見覚えがあるんです』

 

ギンガに続けて、マックスがそう報告すると、はやてと通信画面上のカリムが険しい表情を浮かべて

『はやて、私にも見覚えがあるわ』

 

「奇遇やな、カリム。私もや……」

 

二人はそう言うと、軽く頷いてから同時に

 

「『人造魔導士計画の生体ポッド……』」

 

苦い表情を浮かべながら、呟いた

 

その頃、地下水道

 

「人造魔導士計画?」

 

冥夜が聞いたことのない言葉を聞いて、首を傾げた

 

「そう。産まれたばかりの子供に薬物投与だとか、機械を埋め込んだりだとかをして人工的に魔導士を生み出す計画。それが、人造魔導士計画」

 

「倫理的な問題は勿論、今の技術じゃどうしたって色んな無理が生じる。コストも合わない……だから、よっぽど頭がどうかしてる連中でもない限り、手を出したりしない技術のはずなんだけど……」

 

スバルに続いて、ティアナが補足説明すると、武が唇を噛んで

 

「どの世界でも、そんなことをする馬鹿が居るのかよ……っ!」

 

怒りを滲ませた声を漏らした

 

「武、どういうことだ?」

 

武の言葉を聞いて、冥夜が問い掛けると、武は視線を向けて

 

「詳しくは、後で話す。今は、目の前の敵に集中しろ」

 

それを聞いた冥夜は、一瞬逡巡するが

 

「わかった」

 

と言って、視線を前に戻した

 

その時、ケリュケイオンが光り

 

〈警告、敵機接近!〉

 

警告を発した

 

「ガジェットとドールが来ます! ガジェットが6、ドールが12!」

 

「臨戦態勢! 周辺警戒!」

 

キャロの言葉を聞いて、ティアナが鋭く指令を出した

 

そのティアナの指令を聞いて、全員は背中合わせの陣形を取った

 

その直後、戦闘が始まった

 

場所は変わり、海上

 

「おっし! いい調子だ!」

 

「リインも絶好調です!」

 

敵機を撃破し続けているヴィータが上機嫌に言うと、リインも嬉しそうに両手を上げた

 

そんなリインを見て、ヴィータは微笑むと

 

「ガンガン行くぞ! さっさと片付けて、他のフォローに回らねぇと」

 

「はいです! ……ん? あれは……」

 

ヴィータの発言にリインは返事をすると、ある方向に視線を向けた

 

リインの視線を追い、ヴィータが同じ方向を見ると、そこにはかなりの数のガジェットⅡ型とドールの機影が見えた

 

「……増援?」

 

増援を見たヴィータは、違和感を感じて首を傾げた

 

その頃、少し離れた海上ではなのは達も違和感を感じていた

 

「これは……」

 

「……なに?」

 

「……なんだ?」

 

「……変な感覚です」

 

なのは達が口々に違和感を言っている上空では、三つ編みにした茶髪にメガネを掛けた女が居た

 

「フフフ……IS、シルバーカーテン。嘘と幻の銀幕芝居に踊ってもらいましょ♪」

 

女がそう言いながら右手を掲げると、右手が光った

 

場所は戻って、なのは達

 

なのは達が放った魔法は、次々とガジェットやドールを撃墜していくが、当たったと思いきや魔法がすり抜けていった

 

「実機と幻影の混成部隊?」

 

「これじゃあ、ちょっとキリがないね……」

 

フェイトの言葉を聞いて、なのはが愚痴を零すと、冬也達が近づいてきて

 

「俺でも見分けがつきにくい……」

 

「このままでは……」

 

「ジリ貧ですね……」

 

なのはと同じように、愚痴を零した

 

場所は変わって、機動六課ロングアーチ

 

「ガジェット及びドール反応増大! そんな……嘘でしょう!?」

 

「落ち着いて! もう一回観測! 誤認じゃないの!?」

 

悲鳴を上げたアルトに落ち着くように言うと、シャーリーは再度観測するように促した

 

「ダメだ! こっちじゃあ、全部本物って出る!」

 

「しかし、前線の隊長陣からは実機と幻影の混成部隊と報告が上がってます」

 

千雨が怒鳴るように言うと、正反対に茶々丸は淡々と事実を告げた

 

「八神部隊長、これは!?」

 

「マズいんじゃねぇか!?」

 

グリフィスに続けて当麻が言うと、はやては手を組んで険しい表情を浮かべた

 

数分後、海上戦闘区域

 

「なのは、このままじゃあ……」

 

「うん……防衛ラインを突破されない自信はあるけど、らちがあかないね……」

 

ガジェットやドールからのミサイル攻撃を防ぎながら、なのはとフェイトは苦い表情を浮かべた

 

その時、近くのガジェットとドールが爆散して冬也やネギ、刹那の三人が現れて

 

「現状では、手の撃ちようがないな……」

 

「ですね……相手の幻影、かなり精巧で見破れません」

 

「だからといって、このままでは……」

 

と険しい表情を浮かべた

 

その時、なのはが

 

「フェイトちゃん、冬也さん、ネギ君、刹那ちゃん達は、フォワード陣のフォローに向かって。ここは、私一人でなんとかするから」

 

と提案した

 

だが、それを聞いたフェイトが驚愕で目を見開いて

 

「なのは! 何を言ってるの!?」

 

と怒鳴るように問い掛けた

 

するとなのはは、追尾弾を放ちながら

 

「なんか嫌な予感がする……多分、こいつらは陽動……本来の目的は別だよ」

 

と言った

 

だが、フェイトは納得していないようで

 

「だからって、一人じゃ無理だよ! 私も残って、一緒に!」

 

と抗議するが、なのはは首を振って

 

「大丈夫。いざという時は限定解除すれば、こんな奴らには簡単に勝てるから」

 

と微笑んだ

 

それでも、フェイトは納得いかないらしく

 

「限定解除はいざという時の切り札なんだよ? 今使ったら、今度はいつ許可が降りるか!」

 

と食い下がった

 

その時、通信画面が開き

 

『その通りやで、なのはちゃん! なのはちゃんの案もフェイトちゃんの案も、部隊長権限で却下させてもらうで!』

 

ベルカ式のBJ、騎士甲冑を纏ったはやての姿が見えた

 

「はやて!」

 

「はやてちゃん、なんで騎士甲冑を!?」

 

まさか部隊長のはやてが、BJを纏って姿を見せるとは思わず、なのは達は驚いた

 

『嫌な予感がするのは、私も同じでな。クロノ君に頼んで、私の限定を解除してもらうことにしたんよ』

 

と言ったタイミングで、もう一つ通信画面が開き

 

『俺も居るぜ』

 

当麻の姿が映った

 

「当麻くん!?」

 

「当麻くん、飛行適性は無かったはず!?」

 

まさか、当麻が空を飛んでいるとは思わずになのはとフェイトは驚愕した

 

『イマジンの第二形態だとよ。なんでも、反重力(アンチグラヴィティ)飛行装置を使って、誰でも飛べるようになるんだと』

 

という、当麻の説明を聞いて

 

「葉加瀬、間に合ったか」

 

「ああ! 学園祭の時に茶々丸さんや、その妹さん達が使ってたアレですか!」

 

「そういえば、ありましたね」

 

開発に関わっていた冬也、同じ世界出身のネギ達は感嘆していた

 

『つーわけや、なのはちゃん達はヘリとフォワード陣のフォローに向かって。ここは、私がなんとかする』

 

というはやての言葉を聞いて、なのはとフェイトは数瞬黙考するが

 

「了解」

 

「お願いね、はやて」

 

と賛同した

 

「殿戦闘は任せてください」

 

「俺の得意分野だ」

 

「お任せを」

 

殿は冬也達が請け負うことになり、なのは達は行動を開始した

 

場所は変わって、ベルカ自治区 カリム執務室

 

「はやて、本当にいいのか? 今現在、使える限定解除は僕と騎士カリムの二人の二回のみだ。使いきったら、申請は簡単には通らないだろう」

 

クロノがそう言うと、はやては真剣な表情で

 

『使える力を使わないで後悔するより、使って後悔したほうがマシや』

 

と断言した

 

「わかった。ただし、市街地の近くだから完全解除は出来ない。解除出来るのは3ランクのみだ」

 

クロノのその言葉を聞いて、はやては数瞬黙考すると

 

『Sランク……それで十分や!』

 

意気揚々と言った

 

そんなはやての言動にクロノは軽くため息を吐くと右腕を前に出した

 

すると、青く発光している魔法陣が現れた

 

「八神はやて、限定解除2ランク承認。120分リリース」

 

クロノはそう言いながら、魔法陣を押した

 

すると、青かった魔法陣が赤に変わり、海上に居たはやてから白色の魔力が溢れ出した

 

その魔力の余波に、当麻は思わず手を掲げて目元を覆った

 

「スゲェ……これが、はやての限定解除か……しかも、まだ本気じゃないんだよな……」

 

当麻の呟きを無視して、はやては自身のデバイスたる夜天の書を開いた

 

「よし……久しぶりの遠距離広域魔法。いってみよか!」

 

はやてはそう言いながら、遠い戦域を睨みつけた

 

場所は変わって、地下水道

 

「空の上は、なんだか大変みたいね」

 

「うん」

 

フォワード陣はあれから数回、ガジェットやドールと遭遇し、全て撃破していた

 

その時、グリフィスからはやてが出撃したという情報を聞き、事態が大きくなってきていることを察した

 

「ケースの位置まで、もう少しです!」

 

キャロがケリュケイオンと共に確認して、全員に報告した時、少し離れた地点で爆発が起きた

 

突然起きた爆発に、フォワード陣は距離を取って、各々武器やデバイスを構えた

 

すると、爆煙の中からギンガとマックスの姿が現れた

 

「ギンガさん!」

 

「ギン姉! マックス兄!」

 

ギンガを直接知っているティアナと、マックスも知っているスバルは嬉しそうに二人に近寄った

 

「ここに来るまでの敵は、全て撃破してきたわ」

 

「一緒に、レリックを捜すぞ」

 

「「はい!」」

 

ギンガとマックスの言葉を聞いて、ティアナとスバルは嬉しそうに頷いた

 

そのギンガとマックスを、エリオとキャロが見ているとギンガとマックスが気づき、ギンガは微笑みマックスは人差し指と中指をピッとした

 

すると、エリオとキャロは敬礼し、それに倣って武と冥夜も敬礼して、明日菜と楓は頭を下げた

 

こうして、赤い結晶と一人の少女を巡る物語は加速していく


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