魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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ここから、少しばかりオリジナル展開が混じります


運命の分岐点

ホテル・アグスタ警備任務の翌日

 

早朝訓練後だった

 

新人達は朝食を食べるために、談笑しながら歩いていた

 

その時、少し俯いていたティアナが顔を上げて

 

「あたし、訓練が終わった後に自主練するから……」

 

と告げた

 

すると、それを聞いたメンバーは

 

「私も付き合うよ、ティア」

 

「僕も付き合います!」

 

「わたしも付き合います!」

 

と次々賛同するが、ティアナは首を振って

 

「ううん、疲れてるだろうから、あたし一人でするわ……ありがと」

 

とやんわりと、拒否した

 

それを見ていた武は、既視感を覚えて、刹那や楓、古菲は危機感を覚えた

 

場所は変わり、休憩フロア

 

そこには、シグナム以外の隊長陣が集まって休憩していた

 

そして、なのはが飲み物を買って取り出した時だった

 

「なあ、ティアナになにがあったんだ?」

 

と、ヴィータが呟いた

 

ヴィータの呟きを聞いた隊長陣の視線が、ヴィータに集まった

 

「確かに、新人はもっと強くなりたい、って傾向が強ぇーよ。だけど、ティアナの場合は常軌を逸してる。一体、なにがあったら、ああなるんだよ」

 

ヴィータの話を聞いて、なのはとフェイトは辛い表情をした

 

そしてなのはが座り、フェイトに目配せすると

 

「あのね……ティアナには執務官志望のお兄さんが居たんだ……」

 

と、ウィンドウを開きながら話し始めた

 

「過去形ってことは、まさか……」

 

ネギが小声で問い掛けると、フェイトは頷いて、ウィンドウを全員の前に表示した

 

そこに映っているのは、ティアナと同じオレンジ色の髪が特徴の青年だった

 

「名前はティーダ・ランスター一等空尉。執務官志望の人で所属は首都航空隊。享年は二十一歳」

 

その頃、隊長陣は知らなかったが、新人達も同じことを食堂で話していた

 

なお、ティアナは手早く食べ終わると食堂を後にした

 

「ティアのお兄さんはね、優秀な空戦魔導士だったんだ。それがある日、地上部隊からの応援要請を受けて、違法魔導士の追撃を行ったんだけど相手の攻撃を受けて、墜落。それが原因で死んじゃって、しかも、相手には逃げられちゃったんだ……しかもね、元上官の人が酷い発言をしたの……」

 

スバルがそこまで言うと、それまで黙って聞いていたエリオと武が口を開いた

 

「酷い発言?」

 

「なんて言ったんだ?」

 

二人の問い掛けに、スバルは数瞬躊躇うと辛そうに

 

「首都航空隊として、あるまじき失態だ。死んででも捕まえるべきで、逃がすとは無能の証だ……って感じにね……」

 

スバルがそう言った直後、机を強く叩いた音が響いた

 

驚いて視線を向けると、冥夜が両拳を机に突いて立ち上がっていた

 

それを見た武は、冥夜の肩に手を置くと

 

「冥夜、落ち着け」

 

と、落ち着くように促した

 

「わかっているが……」

 

冥夜は憤りを露わにしながらも、ゆっくりと腰を下ろすと両手を握り締め、口を開いた

 

「亡くなったティーダ一等空尉は、守るために勇敢に戦ったはずだ。それなのに、その人を貶すなど……」

 

と冥夜が悔しそうに語ると、武が

 

「だな……それに、すぐに応援部隊を出さなかった上官にも責任がある」

 

と断言した

 

武の言葉を聞いたスバルは頷いて

 

「うん……武の言った通りに、その上官は責任と問題発言を問われて更迭されたんだけどね……ティア、その時の発言で傷ついちゃったと思うんだ……尊敬していた唯一の家族が死んじゃって、しかも無能扱いされて……」

 

「だからでしょうね。ティアナさんが強くなろうと焦っているのは」

 

スバルの言葉を聞いた刹那がそう言うと、楓が頷いて

 

「うむ……兄の代わりに、自分達の魔法は強いと証明したいのでござろう」

 

楓がそう言うと、武は頭を掻いて

 

「こりゃ、ティアナをちゃんと見といたほうがいいな。ほっとくと、ロクなことが起きない」

 

と言うと、全員は頷いた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

新人達が話し終わったタイミングで、隊長陣も話し終わっていた

 

そして休憩を終わらせて、全員は自分の仕事や作業をするために休憩フロアを後にした

 

そして、なのはが一人で歩いていると

 

「なのは」

 

「なのはさん」

 

冬也とネギが、後ろから声をかけた

 

すると、なのはは振り向いて

 

「どうしました?」

 

と、二人に問い掛けた

 

問い掛けられた二人は、互いの顔を見て頷き

 

「なのは……新人達にお前の教導の意味を教えたらどうだ?」

 

と冬也が言うと、なのはは訝しげに

 

「どういうことですか?」

 

と問い掛けると、ネギが

 

「なのはさんに何があったのか、ユーノさんに聞きました」

 

と言うと、なのはは目を見開いて固まった

 

「不躾かもしれんが……なのは、お前は後悔しているんだろう? かつて、無茶したことを」

 

冬也がそう言うと、なのはは一回大きく深呼吸して

 

「そう……ですね……その通りです」

 

と認めてから、視線を二人に向けて

 

「私は、あの子達に無茶をしないでいいように、教導しています」

 

静かに、だが、ハッキリと告げた

 

すると、二人は確信したように頷き

 

「やっぱりですか……」

 

「俺達はユーノから話を聞いたから分かるが、あいつらは分かっていないだろうな」

 

冬也がそう言うと、ネギがなのはを見つめて

 

「なのはさん。なのはさんの今現在教の導は基礎を重視していますよね? ティアナさんはそれを不満に思ってると思います。理由としては、自分がちゃんと強くなっているのか分からないからです」

 

ネギの言葉を聞くと、なのはは苦い顔をした

 

「恐らくだが、無茶な自主練習すら始めてしまうだろう。それが理由で、無茶なことすらしてしまうかもしれない。だから、そうなる前に、話し合え」

 

冬也がそう言うと、なのはは胸の前で両手を合わせて

 

「はい……わかりました」

 

と、呟いた

 

なのはの返事を聞いた冬也は満足そうに頷いて、背を向けると肩越しに

 

「ああ、そうだ……ユーノとも話し合えよ。ではな」

 

と言うと、もと来た道を戻っていった

 

「ユーノ君とも?」

 

冬也の言葉を聞いたなのはが首を傾げていると、ネギがなのはの服を軽く引き

 

「ユーノさんは、なのはさんに魔法を教えたことを後悔してました」

 

と、なのはに告げた

 

告げられた内容を聞いて、なのはは固まって

 

「そんな……どうして……」

 

と、悲しそうに呟いた

 

「なのはさんに魔法を教えたから、なのはさんが大怪我を負ってしまったと、言ってました……責任を感じてるんだと思います」

 

「ユーノ君……違うのに……」

 

ネギの言葉を聞いて、なのはは目尻に涙を滲ませた

 

そんななのはを見て、ネギは

 

「なのはさん……なのはさんなら、大丈夫です。ですから、話し合ってください。僕達、人間は会話での解決が出来るんですから」

 

と言ったのだった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は経ち、深夜

 

夜間訓練も終わり、シャワーを浴びて、夕食を食べ終わった新人達は疲れから眠っていた

 

ただ一人を除いては

 

敷地内の一角で、ティアナは一人で黙々と自主練習をしていた

 

自主練習しているティアナの額や着ているTシャツには汗が滲んでおり、既に長時間に及んで練習していることがわかる

 

そして集中力が切れたのか、ミスしてティアナが動きを止めたタイミングで

 

「もう止めとけよ」

 

と声が掛けられて、ティアナが振り返るとその先には

 

「ヴァイス陸曹……」

 

ヘリパイロットのヴァイスが、缶コーヒー片手に立っていた

 

「ほれよ」

 

「ありがとうございます……」

 

ヴァイスが缶コーヒーを一つ投げると、ティアナは受け取り感謝してから開けて口に含んだ

 

「一体、何時間やるつもりだ?」

 

ヴァイスがそう問い掛けると、ティアナは顔をしかめて

 

「……見てたんですか?」

 

と、問い掛けた

 

するとヴァイスは、肩をすくめて

 

「ヘリの整備をしながら、スコープで時々な……」

 

と言ってから、コーヒーを一口含み

 

「で、お前は何時間やるつもりだ? 体を壊すぞ?」

 

と、注意した

 

すると、ティアナは飲み終わった缶コーヒーを置いて

 

「コーヒーありがとうございます……」

 

と、訓練していた位置に立つと

 

「限界まで続けます……自分、非才の身なので」

 

と言って、自主練習を再開した

 

それを見たヴァイスは、苦い顔をして頭しながら少し離れてティアナの自主練習を見始めた

 

その時

 

「やはり、無茶していましたね」

 

という、少女の声がした

 

声のした方向に、ヴァイスが視線を向けた先に居たのは

 

「刹那の嬢ちゃんか……」

 

眠っていた筈の刹那だった

 

「彼女に式神を付けて正解でした」

 

「式神?」

 

聞き慣れない単語にヴァイスが首を傾げると、刹那は頷き

 

「彼女の左側の木の上を見てください」

 

「あん?」

 

刹那に言われて、ヴァイスは言われた場所をよく見た

 

すると、そこには小さい刹那が居た

 

「ありゃあ……小さい刹那?」

 

「はい、あれが式神です。チビ刹那と言います」

 

刹那の説明を聞いたヴァイスは、感心した様子で頷くと

 

「つーか、まんまじゃねぇか」

 

と、呆れた様子でため息を吐いた

 

すると刹那は、苦笑いを浮かべて

 

「他に名前が思い浮かばなかったもので……」

 

と、頭を掻いて

 

「あれには、ティアナさんが外に出たら追跡するようにと、命令しといたんです。そして、ある程度超えたら、私を呼ぶようにと」

 

「そうかい……んで、お前さんは寝ないのか?」

 

刹那の説明を聞いたヴァイスは、刹那に視線を向けたて問い掛けた

 

すると刹那は、肩をすくめて

 

「私達は、一日二日寝なくても、活動出来るように鍛えてますから」

 

と、返した

 

「そりゃ凄いこって……そんじゃ、俺はそろそろ寝るわ。後は頼むぜ?」

 

「はい、承りました」

 

ヴァイスが背を向けながら言うと、刹那は頷いた

 

その後、ティアナは一時間程して部屋に戻り、それを確認した刹那も部屋に戻った

 

そして三日後、なのははフォワード陣をある一室に集めていた

 

「あの……なのはさん……訓練は?」

 

と、スバルが手を上げながら問い掛けた

 

理由としては、普段だったら既に早朝訓練の時間だからである

 

「今日はね、皆に聞いてほしいことがあるんだ……私の教導の意味を……」

 

なのはが真剣な表情で言うと、全員は姿勢を正した

 

そして、過去が語られる

 


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