魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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strikers編
集う英雄達


「うーん、なんだろこれ」

 

赤毛に小さい眼鏡を掛けた少年。ネギ・スプリングフィールドは、手に持っている木箱をいろいろな角度から見ながら首を傾げていた

 

その木箱には、ラテン語の書かれた札が貼られている

 

「さっきから何を唸ってるのよ、ネギ」

 

そんなネギの背後に現れたのは、この部屋の同居人の1人

 

足首あたりまで伸ばしたツインテールが特徴の少女。名前は神楽坂明日菜である

 

「ああ、明日奈さん。実は先日、クウネルさんから鑑定を依頼されたんですよ」

 

「鑑定~?」

 

「はい、この魔道具の鑑定です。なんでも、昔父さんが封印したらしいんですが、どんなものか忘れてしまったようです」

 

「ふーん、なるほどね~」

 

明日奈は、ネギの背後から手を伸ばして、木箱を”札ごと”掴んだ

 

すると、札が破けた

 

「あ! 明日奈さん! 魔法無効化能力《マジックキャンセル》!」

 

「あ!」

 

明日奈はネギに言われて、しまった! という表情をした

 

なぜ、封印の札が突如破けたのか

 

それは、彼女の能力<魔法無効化能力>に起因する

 

これは、彼女の体質的な能力で、善悪関係なく魔法を無効化してしまうのだ

 

それが、封印だとしても

 

「ど、どうしよう!」

 

明日奈は慌てて、木箱を机の上に置く

 

「と、とりあえず! 封印を!」

 

ネギは慌てて、近くに立て掛けてあった愛用の杖を握る

 

すると、ドアが開く音が聞こえて

 

「やっほー! ネギくーん! 遊びに来たよー!」

 

「ネギせんせー! 頼まれてた本、持ってきましたー!」

 

「これで、調べられるはずです」

 

「やっほー! なんか、スクープの予感がしたから来たよー!」

 

「お、おい! 放せよ! ロボ子!」

 

「放したら逃げるでしょう、千雨さん」

 

と、にぎやかに10数人の足音が響く

 

「あ、どうぞ!」

 

ネギは条件反射的に、意識を木箱から逸らして返事をしまった

 

すると、木箱が開き光が、視界を白1色に染めた

 

「まぶしい!」

 

「お嬢様!」

 

そして、光がやむと

 

そこには、誰も居なかった……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「う、ううん……」

 

ある場所で、仰向けに倒れていた男が眼を覚ました

 

その男は、黒色を基調にした軍服を着ていて、方には英語で大きくUNと書かれている

 

「ここは、どこだ……?」

 

男、白銀武は起き上がると周囲を見回した

 

「これは、火事か?」

 

武は足元に転がっていた炭を見て呟く

 

武が居る施設は天井も、壁も黒く染まっていて人気もない

 

「俺は確か、桜花作戦が成功して、夕呼先生と話してて元の世界に戻る現象が起きたのは覚えてる」

 

と、周囲を見回しながら呟く

 

「うーん。ここがどこか分かればいいんだけど……、ん? なんだ、あれ?」

 

と、武はある方向に大きな物体が倒れてることに気付いた

 

「まさか……そんな!?」

 

武はその物体に気付いて、走り寄った

 

「武御雷《たけみかづち》……!」

 

それは、彼の世界で普及していた陸戦兵器のロボット

 

しかも、その機体は彼の知り合いが乗っていた機体だった

 

「まさか……」

 

武は大破状態の胸部によじ登って、コクピット横の小さい蓋を開けて緊急パスワードを入力した

 

すると、コクピットがせり出してきた

 

武はコクピットが完全に出たのを確認すると、中を覗き込んだ

 

「やっぱり、冥夜か!」

 

中には、白い強化装備を装着している藍色の髪の少女が寝ていた

 

武は中に入り込むと肩をゆすった

 

「冥夜! しっかりしろ! 冥夜!」

 

「う、あ……」

 

武がゆすると、少女の瞼が震えた

 

「う、……武? 武なのか!?」

 

冥夜と呼ばれた少女は、武に気付くと武の肩を掴んだ

 

「国連太平洋方面第11軍横浜基地A-01連隊第9中隊所属、白銀武少尉だ」

 

武は分かりやすく、自分の所属を告げながら敬礼した

 

「武なのだな……ここは?」

 

冥夜は安堵すると、武に問いかけた

 

「すまんが分からない」

 

武は首を振った

 

「そういえば、桜花作戦はどうなったのだ?」

 

「成功したさ……生き残ったのは、俺と霞だけだったけどな…」

 

「なに!? 鑑はどうした!?」

 

「純夏は…発作で死んだ」

 

「そうか……」

 

2人は俯いていた

 

すると

 

「皆さん! しっかりしてください! 皆さん!」

 

と、少年の声が聞こえた

 

武と冥夜は胸部から降りると、周囲を見回した

 

すると、少し離れたところに10数人の女子と赤毛の少年がいた

 

「えっと、君達?」

 

武は意を決して、話しかけた

 

「え? えっと、あなた達は?」

 

「ああ、すまない。俺の名前は白銀武」

 

「私の名前は、御剣冥夜だ」

 

「では、武さんと冥夜さんって呼びますね。僕の名前はネギ・スプリングフィールドといいます」

 

と、ネギは2人の名前を聞くと、礼儀正しく挨拶した

 

「それで、あの。ここは、どこですか?」

 

「すまんが…」

 

「俺達にもわからないんだ」

 

「そうですか……」

 

ネギは、武と冥夜から聞くと落ち込んだ

 

3人が俯いていると

 

「あー、君達?」

 

ネギたちは、声のした方向を見た

 

そこには、漆黒の死に装束と侍の鎧を合わせたような格好の男が居た

 

ただ、男の左肩と右足には折れた刃が刺さっていて、腹部には出血もあった

 

「あなたは?」

 

「ああ、すまない。俺の名前は神代冬也《かみしろとうや》と言う」

 

「僕は、ネギ・スプリングフィールドです」

 

「俺は白銀武だ」

 

「私は御剣冥夜です」

 

「よろしく。それでなんだが、ここがどこか分かるか?」

 

「いえ、すいませんが……」

 

冬也の質問に、ネギは首を振った

 

「そうか……それと、あそこに倒れてる少年は、君達の知り合いかな?」

 

冬也が指差した先には、右腕だけが露出している学生服を着て倒れている、黒髪ツンツン頭の少年が倒れていた

 

武が警戒しながら、近づいて確認する

 

「おいおい、コイツ。体が凄い冷たい! 早く温めないとマズイぞ!」

 

その少年は、体をひどく冷やしていて、早急に温める必要があった

 

「そうか、それはマズイな。さて、どう…伏せろ!」

 

冬也の警告に、武、冥夜、ネギの3人は機敏に反応して倒れるように伏せた

 

すると、全員の頭上を青い光線が走った

 

「なんだ!? BETA《ベータ》か!?」

 

武は頭を両手で覆いながら、声を上げた

 

「BETAというのは知らんが。恐らく違うな」

 

全員の視線の先には、楕円状の機械が浮いている

 

「なんだありゃ? シミュレーターのドローンに似てるが…」

 

「さあな。だが、友好的ではないのは確かだ」

 

「待ってください。あれだけじゃないようですよ…」

 

4人は周囲を見回した

 

気付くと周囲には、同じ物体が大量に存在していた

 

「このままでは、そこで気絶してる子達が危ないな」

 

「そんな! 僕の生徒たち…仲間たちには攻撃させませんよ!」

 

「よく言ったネギくん。さて、武と冥夜はそこに居ろ。俺とネギくんが対処する」

 

「そんな!」

 

「あんたは怪我してるじゃねーか! それに、子供に戦わせるなんて!」

 

「大丈夫です! 僕は戦えます!」

 

「この程度ならば、大丈夫だ。それに、君達は魔法は使えないだろ?」

 

冬也は腰の刀を抜きながら、問いかけた

 

「魔法?」

 

「聞いたことないな……」

 

「話してないのに、よく分かりましたね?」

 

「君から、魔力を感じたのでな」

 

「なるほど、ということは。あなたも魔法使いですね?」

 

「まあな。さて、来るぞ!」

 

冬也が言うと同時に、ガジェットが攻撃してきた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ある海上の上空を2つの人影が、高速で飛んでいた

 

片方は茶髪のツインテールに白を基調にして、青いラインが入ってる制服を着ている美女だ

 

この女性の名前は、高町なのはと言い。時空管理局では有名な魔法使いで、通称エース・オブ・エースと呼ばれている

 

もう片方は綺麗な金髪をツインテールにしている赤眼の美女だ

 

名前はフェイト・T・ハラオウンと言い、同じように時空管理局では有名な魔法使いだ

 

通称、心優しき閃光と呼ばれている

 

「ねえ、はやてちゃん。本当にあそこなの?」

 

なのはとフェイトの左側面には、通信画面が開いており、画面にはショートカットの茶髪が特徴的な美少女が映っている

 

名前は八神はやてという

 

『せや。元第8臨海空港跡地。そこで小規模やけど、数回次元震動を検知しとる』

 

元第8臨海空港跡地

 

そこは今から4年前の

 

新暦71年に起きた、大規模火災で廃棄された施設である

 

そこで起きたとある理由で、はやては自分の部隊を持つことを決意したのだ

 

そして、さまざまな協力者の支援もあって、足掛け4年後の今年

 

新暦75年にようやく、1年間限定だが部隊の設立が認められたのだ

 

それが、古代遺失物管理部機動六課なのだ

 

なのはとフェイトはそれぞれ、分隊長を務めている

 

2人が飛んでいると、新しい通信画面が開いた

 

その通信画面には、眼鏡を掛けた茶髪の女性が映っていた。名前はシャリオ・フィニーノ。通称、シャーリーである

 

『割り込み失礼します! なのはさん、フェイトさん。緊急事態です!』

 

「どうしたの?」

 

「なにがあったの?」

 

切羽詰った様子で言ってきたシャーリーを見て、ただ事じゃないと気付いたのだろう。なのはとフェイトは問いかけた

 

『元第8臨海空港跡地にガジェット反応です! 数は30! しかも、現在何者かと交戦中なんです!』

 

「ええ!?」

 

「映像まわせる?」

 

なのはは驚くが、フェイトは冷静に聞く

 

『はい! 映像まわします!』

 

シャーリーが映っていた画面が消えると、別の画面に映像が映った

 

その映像には、両手に刀を持って戦っている冬也と

 

雷光を纏って、まさしく光の速さで戦っているネギが映っている

 

「子供!?」

 

「それに、この男性。大怪我してる!」

 

なのはは、ネギが子供なことに驚き、フェイトは冬也が大怪我してるのに、戦ってることに驚いた

 

「でも、この2人……」

 

「うん。実戦慣れしてる……」

 

2人は驚くが、2人の戦いを見て眼を細める

 

それも仕方ないことだろう。ネギと冬也は高速で接近戦を挑んだと思った次の瞬間には、後退して背中合わせになって射撃魔法で弾幕を張って、結界を守っている

 

『なのはちゃん、フェイトちゃん。早く向かってくれるか?』

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

はやてに言われて、2人は速度を上げて目的地に向かった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「倒しても、倒しても減らないですね!」

 

「確かにな! だが、諦めるわけにはいかんだろ!?」

 

「ですね!」

 

ネギと冬也は背中合わせで、ネギは魔弾の射手《サギタ・マギカ》を放ち

 

冬也は、銃剣形態の2丁で銃撃を行っている

 

「しかし、この機械」

 

「なかなか、魔法が効きにくいですね」

 

2人は、ガジェットに魔法が効きにくいことに気付いた

 

そして、結界内部

 

「ちくしょう! 俺達にも魔法ってやつが使えたら!」

 

「ああ。彼らだけに戦わせないものを……」

 

武は拳を地面に打ち付けて、冥夜は悔しそうに呟いた

 

すると、武の懐からノイズが聞こえた

 

「なんだ?」

 

武は不思議に思って、懐に手を入れた

 

そして、出したのは

 

「無線機?」

 

「それは、国連軍で使ってたものだな」

 

小型の無線機だった。裏面にはUNの文字が書かれている

 

「そういや、持ってたな」

 

武は縋る思いで、スイッチを押した

 

「誰か、聞こえるか!」

 

すると

 

『へ? 誰ですか?』

 

と、若い女性の声が聞こえた

 

「よっしゃ! 繋がった! 俺の名前は白銀武と言います! 誰でもいいので、救援をお願いします!」

 

『白銀武くんだね? 今どこに居るか、分かるかな?』

 

武はそれを聞くと、もう1回周囲を見回すが

 

「すいません、わからないです。ですが、楕円形の機械に襲われてるんです! 今は、偶然出会った少年と男性が戦ってくれてますが、数が多いんです! それに、至急治療が必要な人も居るんです!」

 

武は1回周囲を見回して、場所を特定しようとしたが、無理だった

 

『わかった。武くんが居るのは、多分、元第8臨海空港跡地だね。もう着くから、頑張って!』

 

「はい!」

 

と、武が返事をした。その時だった

 

突如、天井を桜色の閃光が突き抜けた

 

「な、なんだ!?」

 

武は想像してなかったことに、驚いている

 

すると、天井の穴から2人の女性。なのはとフェイトが中に入ってきた

 

「スターズ1接敵《エンゲージ》!」

 

「ライトニング1、同じく接敵《エンゲージ》!」

 

なのはとフェイトは、冬也とネギの近くに着地して、魔法で攻撃を開始した

 

「さっき、通信をくれた、武くん! どこ!?」

 

なのはは砲撃をしながらも、視線を左右に巡らせて武を探した

 

「ここです!」

 

武は結界内で、手を振る

 

それをなのはは見ると

 

「(結構強い結界だ)しばらくその中でジッとしてて! その中なら安全だから!」

 

なのははそう言うと、砲撃に集中した

 

「はい!」

 

そして、数分後

 

「ガジェットの全滅を確認!」

 

なのはは愛機、レイジングハートを振りながら宣言した

 

「私達は、時空管理局機動六課の者です。大丈夫ですか?」

 

とフェイトは、冬也に近づきながら聞いた

 

 

 

こうして、魔法世界《ムンドゥクス・マギクス》を救った英雄、ネギ・スプリングフィールド

 

BETAから地球と人類を救った英雄、白銀武

 

仲間と世界を守るために、第三次世界大戦に身を投じた、上条当麻

 

自分の命を捨ててまで戦い続けた男、神代冬也

 

そして、機動六課が出会った

 

これは、4人の英雄とその関係者達。そして機動六課の1年間に起きた、ある事件の記録である

 




よろしくお願いします!!

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