魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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ホテルアグスタ編 その1

「それじゃあ、今わかっとる情報を教えておくな」

 

そう言ったのは、ヘリの天井に手を突いているはやてである

 

今現在、機動六課のメンバーはヘリに乗り、ホテル・アグスタに向かっていた

 

そのヘリ内部で、今回の任務の主旨と一連の主犯を教えていた

 

「これまでの一連の事件の主犯格は、この男……名前はドクター、ジェイル・スカリエッティ」

 

フェイトが名前を言うと同時に、全員の前にウィンドウが開いた

 

そこには、これまでスカリエッティが起こしたと思われる事件のデータとスカリエッティの全身写真が表示されていた

 

「この男はドクターの異名の通り、人体実験に異様な熱意を持ってる男で、これまでの事件関連で広域指名手配されてる次元犯罪者だよ」

 

そう言っているフェイトの顔は真剣な表情だが、目には複雑な感情が入り混じった光が満ちている

 

「今後は、この男を中心に捜査していくから、そのつもりでな」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

はやての言葉に全員は返事したが、キャロがシャマルの足下に積まれているケースに気づき

 

「あの、シャマル先生……そのケースは?」

 

と、ケースを指差して質問した

 

「あ、これ? フフフ……はやてちゃん達のお仕事着♪」

 

キャロからの質問に、シャマルは笑みを浮かべて、楽しそうに返答した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ホテル・アグスタ ロビー

 

そこでは、オークションに招待した客の受付を行っていた

 

「いらっしゃいませ」

 

受付を行っていたホテルスタッフは、視界に新たな客が見えると、頭を下げた

 

そんな男の視界に入ったのは、オークションへの招待状ではなく、管理局員を示すIDカードだった

 

「あっ!」

 

受付係は驚愕の声と同時に、顔を上げた

 

「こんにちは、機動六課です」

 

そこに居たのは、ドレス姿のはやて、フェイト、なのはの三人とスーツ姿の冬也と当麻。そして、赤毛の青年だった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

今回の機動六課の任務は、ホテル・アグスタで行われるオークションに合わせての警備だった

 

この任務に先立ち、機動六課からは副隊長のシグナムとヴィータ。並びに、楓が警備態勢の把握を兼ねて先行していた

 

そして、主力部隊の新人達が外に展開

 

隊長陣が内部から警備することになったのだ

 

だが、隊長陣が着ているのはドレスやスーツである

 

これは訳があり、ホテル・アグスタから管理局に警備の依頼があった際に指定されたのである

 

ホテル内部、特にオークション参加者の目に入る場所を警備する場合は正装姿のみ受け付ける

 

更に、大人数は受け付けないとしたのだ

 

これに困った管理局は、最近限定設立された機動六課に着目

 

機動六課の前線人数は民間協力者を入れても、約二十名足らず

 

しかも、部隊長のはやてと分隊長のなのはとフェイトの三人は、管理局でも飛びっきりの美少女である

 

それらの理由により、機動六課が選ばれたのだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

ホテルロビー

 

ホテルロビーの端にはやて達、隊長陣と冬也と当麻。そして、赤毛の青年が居た

 

「うぉー……スーツなんて着たことないから、すげー違和感」

 

「俺もだ」

 

当麻の言葉に冬也は同意を示していた

 

当麻は学生だったため、普段から学生服しか着ておらず、冬也は戦場育ち故にこういったスーツは初めてだった

 

「当麻くん、似合っとるで」

 

「冬也さんも、スーツ姿が似合ってますよ」

 

そんな二人を、はやてとフェイトは誉めた

 

「あんがとよ、はやても似合ってるぜ」

 

「フェイトも、十分に似合っている」

 

当麻と冬也の二人はお礼としてか、それとも素直な気持ちか

 

はやてとフェイトのドレス姿を誉めた

 

誉められた二人は顔を赤くして

 

「あ、ありがとうな……」

 

「ありがとうございます……」

 

俯きながら、返答した

 

数秒後、はやては咳払いすると視線を赤毛の青年に向けて

 

「それにしても……驚いたで、ネギくん」

 

と、赤毛の青年こと、ネギに声を掛けた

 

「あははは……」

 

ネギは苦笑いで、返答するしかなかった

 

しかし、ネギの年齢は10歳で見た目も子供のはずなのに、目の前に居るのはどう見ても、十代後半の青年だった

 

なぜ、そんな姿なのか

 

それは、今から少し前である

 

回想開始

 

「ネギくん……本当に、このサイズでいいの?」

 

そう言いながらシャマルが差し出したのは、冬也並サイズのスーツだった

 

どう見ても、ネギには大きい

 

「はい、大丈夫です。カモくん、アレを」

 

「合点でさ、兄貴!」

 

ネギが言うと、カモはどこからか、ビンを取り出して

 

「青いアメ玉赤いアメ玉、年齢詐称薬ー!」

 

某機械猫調で名前を告げた

 

「なにソレ?」

 

「簡単に言いますと、変装アイテムです」

 

「青いアメ玉を舐めると大人に、赤いアメ玉を舐めると子供になれるんだよ」

 

なのはからの問い掛けに、ネギとカモが答えた

 

「メル○ちゃんか! メ○モちゃんか!」

 

ネギとカモの説明を聞いて、はやては思わず突っ込んでいた

 

余談だが、はやてが突っ込みを入れた時、隊舎に居た千雨も頷いていたとか

 

そして、スーツを着てから青いアメ玉を含んだのが、今のネギの姿である

 

以上、回想終了

 

そして、隊長陣は二人一組で行動することにした

 

はやてと当麻がロビーで

 

フェイトと冬也が一階と二階

 

なのはとネギが会場を

 

それぞれ回ることにした

 

「オークション開始まで、後どれくらい?」

 

《三時間二十七分です》

 

フェイトが問いかけると、バルディッシュは簡潔に答えた

 

すると、冬也が懐に手を入れて

 

「さすがに、このホテル全体は見きれないな……」

 

と呟くと、懐から人型に切られた紙束を取り出した

 

「冬也さん、それは?」

 

「まあ、見ていろ」

 

フェイトからの問いかけに冬也はそう答えると、持っていた紙束を空中にほうった

 

それにより、紙束は空中でバラけた

 

それを見た冬也は、口元に右手を持って行き、人差し指と中指を立てて

 

「オン!」

 

と、呟いた

 

すると、空中を舞っていた紙が様々な動物や虫の見た目に変わった

 

「やることはわかっているな?」

 

冬也が問いかけると、ソレらは頷いた

 

頷いたのを冬也は確認すると

 

「では、散れ」

 

冬也の命令を聞いて、ソレらは様々な方向に向かって消えた

 

「冬也さん、今のは?」

 

「今のは式紙だ」

 

フェイトからの問いかけに、冬也はスーツの襟元を直しながら答えた

 

「式紙……ですか?」

 

「ああ、陰陽道でいう使い魔みたいなものでな。簡単な命令なら遂行できる」

 

冬也からの説明を聞いて、フェイトは頷いて

 

「なるほど、そういうのもあるんですね」

 

「ああ、今のはホテル全体に散開させて監視を命じたんだ」

 

「なるほど、監視の穴を埋めるんですね?」

 

「その通りだ」

 

冬也とフェイトは話しながら、歩き続けた

 

「あれ?」

 

フェイトと冬也が曲がり角を通り過ぎると、そこに立っていた二人の男性のうち、金髪ポニーテールでメガネを掛けた男性がフェイトを視線で追った

 

「どうしました、先生?」

 

そんな様子が気になったのか、前に立っていた緑髪の男性が問いかけた

 

「ああ、いえ、別に……」

 

問いかけられた金髪の男性は、慌てて首を振った

 

場所は変わって、外

 

そこには、ティアナとスバルの二人が居た

 

(でも今日は、八神部隊長の守護騎士団。全員集合かぁー)

 

暇だったのか、スバルがティアナに念話を繋げた

 

(そうね……スバルは結構詳しいわよね? 八神部隊長や副隊長達の事)

 

周辺への警戒を怠らずに、ティアナはスバルに問いかけた

 

(うーん、父さんやギン姉から聞いたことぐらいだけど、八神部隊長が使っているデバイスが魔導書型で、それの名前が夜天の書って事。副隊長達とシャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有しついる特別戦力だって事。で、それにリイン曹長を合わせて、六人揃えば無敵の戦力って事……まあ、八神部隊長達の詳しい実状とか能力の詳細は特秘事項だから、私も詳しくは知らないけどね)

 

聞いた話と言いながらも、かなり詳しくスバルは説明した

 

(レアスキル持ちは皆そうよね……)

 

スバルの説明を聞いたティアナは、少し声のトーンを落とした

 

(ティア、何か気になるの?)

 

ティアナの変化に気づいたのか、スバルが問いかけた

 

(別に……)

 

(そう、じゃあ、また後でね)

 

スバルは深く詮索せずに、そばを離れた

 

(六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ……八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員がオーバーSランク、副隊長でもニアSランク……他の部隊員達だって、前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり……あの歳でもうBランクを取ってるエリオとレアで強力な竜召喚士のキャロは、二人共フェイトさんの秘蔵っ子。危なっかしくはあっても、潜在能力と可能性の塊で優しい家族のバックアップもあるスバル)

 

ティアナはそこで一旦思考を止めて、視線を横に向けた

 

そこには、武と冥夜。そして明日菜が居た

 

(極めつけが民間協力者の人達……ネギは計測不能なほどの魔力とあの光速戦闘、明日菜は魔力完全無効化能力で魔法が効きにくいし、楓はありえない程の身体能力と独特の戦闘技術を有していて、古菲は凄腕の格闘家。刹那は刀捌きが優れている。武と冥夜は軍人だったから、卓越した戦闘能力と連携プレーで追随を許さない)

 

ティアナはそこでまた一旦思考を止めると、僅かにホテルに視線を向けて

 

(当麻は幻想殺しで魔法を完全に消すし、冬也さんはフェイトさんと互角の戦闘能力……やっぱり、この部隊で凡人なのはアタシだけか)

 

そこでティアナは俯いたが、すぐに頭を振って

 

(そんなの関係ない! 証明するんだ! ランスターの弾丸は全てを撃ち抜くってことを!!)

 

ティアナはそう意気込むと、警備に意識を集中させた

 

こうして、警備は始まった

 

この時は予想だにしなかった

 

この後に、襲撃とトラブルが起きようとは……

 

 


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