魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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三岩窟の試練 終

結果から言うと、ノーヴェとリンナの企みは大成功した。チームナカジマの面々は自分たちの欠点を自覚し、試練を突破。そしてタオは、格闘家に戻った。

タオは実は、華鳳拳の門下生だったのだ。

しかしある日、アイリンとの訓練中にタオの魔法。傀儡魔法が暴走し、髪による攻撃がアイリンに怪我を負わせてしまった。

怪我自体は大したことなかったのだが、アイリンはタオの魔法に怒り、更にタオ自身もアイリンに怪我を負わせてしまった事を理由に華鳳拳道場から去り、タオの腕前を惜しんで、リンナがタオを引き取り、家政婦のような事をしていた。

それからタオは、自身の傀儡魔法を《自分から大好きな格闘を奪った呪い》と考えて、嫌っていた。

だが、タオの傀儡魔法に気付いたのが、同じ傀儡魔法を使うコロナだった。

タオの傀儡魔法は髪という膨大な数を操る為に、魔法を使う脳に大きな負荷が掛かり、意識を失いかけた状態で使うから、加減が出来なかった。

しかし、コロナのように意識して使う量を操作すれば、加減が出来るという事が分かった。

そしてタオは、傀儡魔法によって操った髪。憑き髪を自分で扱えるようになり、春光拳道場の門下生として復帰した。

そして、三岩窟の最奥からは、それぞれチームナカジマのジャージ、グローブ。そして、新型の魔力負荷バンドを見つけた。

 

「これ、緋村先輩の分です!」

 

「ありがとう、三人共」

 

それを剣士郎は、ヴィヴィオ、リオ、コロナの三人から受け取った。その時

 

「お、()った!」

 

「皆、お待たせー」

 

とジークとシャンテが現れた。

 

「シャンテにチャンピオン!」

 

「どうして、ここに……」

 

まさかジークも居るとは思ってなかったヴィヴィオ達は、驚いていた。すると、シャンテが

 

「あたしはイクスを連れてきたんだけど、チャンピオンの方はこっちに特訓相手が来てるらしくてね」

 

「それを説明したら、お爺さんが案内してくれたんや」

 

「ん? まさか……」

 

ジークの言葉に、リオが一人の人物に思い当たったらしい。すると

 

「ワシじゃよ」

 

とレイが現れた。

 

「やっぱりお爺ちゃん!」

 

「総師範!」

 

『えっ!?』

 

リンナとアイリンの言葉に、シャンテとジークは驚いていた。まさか、案内してくれた人物が春光拳の総師範とは、予想していなかったらしい。

 

「そ、総師範って……」

 

「拳仙、レイ・タンドラ……?」

 

「そうじゃよ」

 

シャンテとジークの言葉に、レイは暢気に頷いて、シャンテとジークは慌て始めた。すると、リオとリンナが

 

「もう、お爺ちゃん茶目っ気はダメだって!」

 

「先に自己紹介って、何回も言ったじゃんか!」

 

とレイの肩を叩き、レイは笑っているが、痛そうな音がしている。ちなみに、ジークと一緒に来ていたエドガーが妹のクレアに怒っていた。

クレアは少々楽しい事を優先してしまう事があり、今回はそれが原因で執事業(アイリンの予定管理)に支障を来してしまったから、怒っていた。

すると、レイがポンポンと手を叩いて

 

「よい機会じゃから、乱取りするかの。ワシ、リンナ、アイリンとそちら全員で」

 

と提案をしてきた。

 

「よ、よろしいんですか? 総師範」

 

「構わん構わん。中々無いからの、こんな機会は。たまにはやっても」

 

ノーヴェが恐る恐る問い掛けると、レイはのほほんと答えた。確かに、そうそう無い機会だろう。

三岩窟の近くには、かなりの広さを誇る洞窟もあり、そこは昔、道場が出来るまでの組み手場だったらしい。

そこで全員で乱取りが始まり、得難い経験が出来た。

その後、師範達が集まり

 

「さて……ノーヴェ師範の所の子供達は、面白い子達が多いの」

 

とレイが語り始めた。

 

「そうですわね。あのヴィヴィオさんもですが、コロナさんも……そして、古流の使い手のお二人」

 

「アインハルトと剣士郎ですね。確かに、あの二人はチームの中でも頭一つ抜けてますね」

 

アイリンの言葉に、ノーヴェは二人の力量を思い出した。チームナカジマの中では、二人の力量は頭抜けている。

 

「アインハルトちゃんは神撃に片足突っ込んでるね。あの威力、骨に来るよ」

 

「そして、剣士郎さん……彼は、神眼にもう踏み込んでる」

 

神撃と神眼とは何か。

それは、春光拳においての極致。

神撃は力の局地的で、防御関係なく一撃で相手を行動不能にする一撃。

神眼は、相手の些細な行動から次の動きを見切り、確実な回避かカウンターを可能にする。

 

「あの歳で、それ程の域……もしや二人は、過去の記憶持ちかの?」

 

「はい……アインハルトは覇王イングヴァルト……緋村は人斬り抜刀斎と呼ばれた剣士の記憶を受け継いでます」

 

レイからの問い掛けに、ノーヴェは軽く答えた。

とはいえ、本当に軽くである。流石に、過去が過去な為に当たり障りない程度だ。

 

「そして、リオは言わずもがなじゃな」

 

「うん。あの子は、神撃に至るね……それでコロナちゃんだけど、あの子。マネージャーに興味津々みたいだね」

 

「あら、それは勿体ないですわね。タオを凌駕する傀儡魔法が使えますのに」

 

実はコロナだが、選手からは身を引いてマネージャー業に勤しもうかと考えているらしい。

彼女の性格を考えると、確かに向いていそうではある。

 

「そしてヴィヴィオちゃん……」

 

「あの子は、魔力資質も身体も……格闘家には向いておらんな……可哀想じゃが……」

 

「それは、ヴィヴィオ自身も自覚しています。後方魔導師向きと」

 

以前にシャンテもディードに言っていたが、ヴィヴィオの魔力資質と身体は本来はシャマルやユーノに近い後方魔導師向きなのだ。

ヴィヴィオ自身もそれを自覚し、過酷な道になると分かっていながら格闘家への道を選んだ。

それはやはり、格闘技がすきだからだろう。

 

「ま、ワシらは子供達の選択を見守り、導くのが役割じゃよ」

 

「はい」

 

レイの言葉に、ノーヴェは頷いた。

夜、ヴィヴィオは一人で中庭にて星空を見上げていた。

そこに、レイが現れ

 

「迷いかな、ヴィヴィオちゃんや」

 

とレイが声を掛けた。


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