魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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ルーフェン紀行 2

「うわぁ……大きい建物……」

 

「あそこが、リオの実家なの?」

 

「そうだよ! あそこが、私の実家!」

 

山道から見える春光拳の道場はとても広く、ヴィヴィオが住んでる家の数倍はある。広場では、何十人と居る弟子達が春光拳の修練をしている。

 

「アインハルトさん。拳仙の事は知ってる?」

 

「はい、お話だけは……」

 

拳仙、レイ・タンドラ

春光拳の現総師範にして、格闘技においては負けなしと言われる最強クラスの格闘家だ。

 

「アインハルト。そこら辺、あんまり知らないよな」

 

「は、はい……」

 

「ご安心ください! 今後は私が教えます!」

 

ノーヴェの言葉にアインハルトは恥ずかしそうにし、そんなアインハルトにユミナが抱きついた。

ちなみに、アインハルトが想像する拳聖は筋骨隆々の大男だ。

すると、リオとリンナが

 

「いやいや。のほほんとしたおじいちゃんだよ」

 

「そうそう。気負いしないでね」

 

と言った。そこからまた少し歩いていると、建物の入口付近に小柄な白髪交じりの老人の姿が見えた。

それを見て、リオが嬉しそうに

 

「お爺ちゃーん!」

 

と走り出した。

 

「ん……おお、リオか」

 

呼ばれた老人。レイは振り向きながら、リオに気付いた。

だがその時、ほぼ全員が同じ景色を幻視した。

青空に原っぱ。そして海という、平穏な景色だった。

 

「わーい! 久しぶり!」

 

「おお。元気にしとったか」

 

リオがジャンプすると、レイは見事にキャッチしクルクルと回っている。その光景を見ながら、ヴィヴィオ達は

 

「今の……」

 

「一体……」

 

と不思議そうにしながら、目元を擦った。

すると、レイが

 

「お友達も、みんなよう来たの~」

 

のほほんとした様子で声を掛けてきた。

すると、全員で一斉に

 

『初めまして!』

 

と頭を下げた。

 

「ほっほっ。まあ、そうかしこまらんでええよ。長旅でお疲れじゃろ。部屋で一休みするとよかろうな」

 

「うん! じゃあ、案内してくる!」

 

レイの言葉に従い、リオとリンナはヴィヴィオ達を呼んで部屋に案内を始めた。するとノーヴェ達保護者組が、レイに近づき

 

「総師範。ご無沙汰しています」

 

「おお、ノーヴェ師範か。リオが世話になっとるの」

 

「と、とんでもないです」

 

実はノーヴェは春光拳の技も習得しており、師範代の資格を有しているのだ。

 

「……で、今回引率を手伝ってもらってる」

 

「聖王教会シスター、ディードです」

 

「教会騎士団執事のオットーです」

 

「ミカヤ・シェベルと申します。ミッドチルダで抜刀居合術を学んでいます」

 

ノーヴェが手招きすると、初めてレイに会った三人が自己紹介をした。

 

「リオの祖父のレイ・タンドラじゃよ。春光拳の師範をやっとる。気軽に【じーちゃん】とでも呼んでおくれ」

 

『いえいえいえいえ!!』

 

レイはのほほんと催促するが、余りに恐れおおくて四人は荷物を落としながら断った。

そんな事になってるとは露知らず、部屋に案内されてる一同は

 

「レイ総師範って、すごく優しそうな人だね」

 

「あははー。のんびり屋さんではあるね」

 

コロナの言葉に、リオは笑みを浮かべながら肯定する。すると、ヴィヴィオ達が

 

「それでね、さっき総師範の後ろに不思議な景色が見えたんだけど」

 

「私もです」

 

「本当に? どんな景色?」

 

ヴィヴィオとアインハルトの言葉に、リオは問い掛けた。

 

『とても綺麗な空と風と……』

 

「草原も見えたな」

 

「はい! あと、海です!」

 

「そうそう!」

 

ヴィヴィオとアインハルト、剣士郎とミウラの言葉を聞いてリオはコロナとユミナに

 

「コロナとユミナさんも見えた?」

 

「うん!」

 

「それになんだか、ふわっとあったたかかった……」

 

全員の言葉を聞いて、リンナが嬉しそうに

 

「そっか。そういう景色が見えたのは、みんなが優しい良い子だからだね」

 

と朗らかに答えた。

 

「え、ええと……?」

 

「ま、多分滞在中に分かると思うよ。な、リオ」

 

「うん! きっと、すぐに分かるよー」

 

リンナはそう言って、ある部屋の鍵を開けて

 

「さ、ここがみんなが泊まるお部屋だよ! あ、剣士郎君は別ね」

 

「わー!」

 

「凄ーい!」

 

「別部屋で良かったです」

 

剣士郎は別部屋のようだが、内装は似たものだろう。

中に入った一同は、部屋の内装を見て

 

「ルーちゃんが見たら、闘志を燃やしちゃいそうだねー」

 

「ホテルアルピーノがまた増設されちゃうかも……」

 

と半ば確信していて、後日写真を見たルーテシアが予想通りに増設するのは、完全に余談だ。

その後、剣士郎はリンナに部屋に案内された。


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