魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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遅くってすいません


鉄板焼きと真情

夕方

 

場所 海鳴市郊外湖畔のコテージ

 

「やっと着いたー」

 

「運転させて、すまんな。フェイト」

 

「いえ、大丈夫です」

 

全員二台の車から全員降りると、背伸びしたりしていた

 

すると、カバンから出てきたフリードが鼻をひくつかせ

 

「キュクー!」

 

「どうしたの、フリード?」

 

多少興奮した様子のフリードに、キャロが問い掛けていると

 

「なんか………」

 

「いい匂いが……」

 

と、フォワードの大食いコンビが気付いた

 

「ああ、はやてちゃんが準備してるのかもね」

 

と、なのはが言った時

 

坂道を車が走ってくる音が聞こえた

 

全員がそちらに視線を向けると、ちょうど一台の車が止まり

 

「ヤッホー!」

 

「みんな、お仕事してるか?」

 

「お姉ちゃんズ参上ー」

 

と、喫茶翠屋で別れたばかりの高町美由希を含めて三人現れたが

 

一人だけ、子供が居た

 

しかも

 

「犬耳と尻尾……ワンコ素体?」

 

「誰かの使い魔かな?」

 

と、ティアナとスバルが首を傾げていたら

 

「フェイトーー!」

 

「アルフ!」

 

アルフと呼ばれた少女は、フェイトに飛びついた

 

「フェイト、フェイト、フェイト!」

 

「元気そうだね、アルフ」

 

「元気!」

 

オレンジ髪に犬耳と尻尾の女の子

 

アルフはフェイトに抱き着いたまま、尻尾をブンブンと振っていた

 

すると、それを見ていた冬也が

 

「アルフだったか? 君はフェイトの使い魔なのか?」

 

と、アルフに問いかけた

 

すると、アルフはうなずきながら

 

「そうだ。あたしはフェイトの使い魔だ!」

 

と、胸を張りながら宣言した

 

すると、武が首をひねりながら

 

「あの、使い魔ってなんです?」

 

と、フェイトに問いかけた

 

「使い魔っていうのはね、魔導士が動物とかと契約して誕生する大切な相棒なんだ」

 

「なお、その契約内容は千差万別でな。ささいな理由でも構わん」

 

フェイトの説明を冬也が補足すると、アルフは武に近づいて

 

「で、アタシはフェイトと契約してるんだ! ちなみに、犬じゃなくって狼だからな?」

 

アルフの言葉に武は驚いた顔で

 

「犬じゃないんだ!」

 

「狼だ!」

 

アルフにとっては、至極失礼なことを口走った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

全員がコテージに近づくと、匂いが強くなり、ある音が聞こえてきた

 

そして、新人達の視線はその発生源に向けられて

 

「八神部隊長!?」

 

「八神部隊長と当麻が鉄板焼きを!?」

 

「料理なら私達がやりますから!」

 

と、驚きと遠慮から駆け寄るが

 

「ん? 構へんよー、料理は元々得意やしな」

 

「おうよ。それに、お前らは設置と捜索任務で疲れてるだろ? 任せとけ」

 

はやてと当麻の二人は、首を左右に振って料理を続行した

 

すると、先に戻っていたヴィータがウサギの人形を脇に抱えながら現れて

 

「はやての料理はギガウマだぞ? 遠慮しないであやかっとけ」

 

と告げた

 

すると、シグナムがシャマルに近づいて

 

「シャマルよ。お前は手出ししなかっただろうな?」

 

というシグナムの言葉を聞いて、シャマルは口を尖らせて

 

「当麻くんに止められたわよ………」

 

と、不満そうに呟いた

 

「なに?」

 

シャマルの言葉に、シグナムは視線を当麻に向けた

 

すると、当麻は苦い顔をしながら

 

「こんなもんを入れようとしたからな……全力で止めた……」

 

と、袋を取り出した

 

その袋の中には

 

虹色のキノコが大量に入っていた………

 

それを確認したシグナムは、両手を当麻の肩に置いて

 

「よくやった上条!」

 

当麻をほめていた

 

「一応事実確認するが、シャマル先生って料理は?」

 

「本人は否定するが、下手だ」

 

「違うもん! シャマル先生、お料理下手なんかじゃないもん!!」

 

シグナムの言葉に、シャマルは全力で否定するが

 

「黙れ。今まで何回、ザフィーラがお前の作ったモノを食べて倒れたと思っている」

 

シグナムの言葉を聞いた当麻が、視線をヴィータに向けて

 

「マジか?」

 

と聞くと、ヴィータは視線を上に向けて

 

「大マジだ………」

 

と、眼から一筋の雫を垂らしながら告げた

 

それを聞いた当麻は視線を動かして、なのはとフェイトを見た

 

「…………」

 

「…………」

 

二人はそろって苦笑い

 

最後に隣のはやてを見ると

 

「…………」

 

顔を上に向けて、敬礼していた

 

死んでない

 

ザフィーラは断じて死んでない

 

当麻は、そんな二人の反応を見て

 

(シャマルだけは絶対に、調理場に立たせないようにしよう……)

 

と、心に固く誓った

 

だが、当麻は知らない

 

後に、彼女の作ったモノが原因でトラブルが発生するなど……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、調理が終わり並べられて全員食べ始めた

 

「うまい!!」

 

「そうだな。合成食材とは大違いだな」

 

「合成食材ってなに?」

 

武と冥夜の言葉を聞いたアリサが首をかしげながら、聞いてきた

 

「俺達の世界で普及している食材です」

 

「タンパク質を合成して作る食材で、風味などは本物に近い擬似食材です」

 

それを聞いたすずかは驚いた様子で

 

「私達と年も近いのに、君達は大変だったんだね……」

 

と、呟いた

 

すると、美由希、アルフと一緒に来た茶髪ショートカットの女性

 

エイミィ・ハラオウンが机の上を見て

 

「あれ? もう飲み物が無い?」

 

と、声を上げた

 

すると、それに同調するように

 

「およ? 冬也はんも居らへんな?」

 

と、はやてが周囲を見回した

 

すると、それを聞いたスバルが湖の方向を指差しながら

 

「冬也隊長でしたら、湖の方向に行きましたよ?」

 

それを聞いたはやては

 

「もしかしたら、ジュースを取りに行ってくれたんかな?」

 

と、首をかしげた

 

すると、フェイトが立ち上がって

 

「私も取りに行って来るよ」

 

と、湖の方向へと体を向けた

 

その時、エリオとキャロが立ち上がり

 

「フェイトさん! そんなこと、僕達が行きますよ!」

 

「そうです! だから、フェイトさんは休んでてください!」

 

と、フェイトを引き止めるが、フェイトはそんな二人を優しげに見下ろして

 

「ううん、大丈夫だよ。私よりも、エリオやキャロのほうが休んでて。アリサ、ジュースはどこに置いてある?」

 

フェイトが聞くと、アリサは湖の方向を指差しながら

 

「湖に浸けてあるわ! 近くに大きな岩があるから、目印として探して!」

 

「わかった、ありがとう!」

 

アリサに返事をすると、フェイトは駆け出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「バルディッシュ、冬也さんの場所は?」

 

<2時の方向、距離900です>

 

フェイトがバルディッシュに問いかけると、バルディッシュは簡潔に答えた

 

「ありがとう!」

 

<いえ、構いません>

 

フェイトはバルディッシュにお礼を言うと、バルディッシュに言われた方向に駆け出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「えっと………あ、居た。冬也さ……っ!」

 

フェイトは大岩の近くで冬也を見つけたので、声をかけようとした

 

が、それは止まった

 

理由は………

 

(な、なに? 今の……)

 

フェイトに眼に映ったのは、静かで穏やかな湖畔ではなく

 

燃え盛る炎

 

力なく倒れている人々

 

地面に突き刺さっている、数えるのが馬鹿馬鹿しい程の武器

 

そして、血が滴る刀を両手に持っている冬也

 

そう、あれはまるで………

 

(戦場みたい……)

 

だが、それもすぐに消えて、そこには普通の景色が写った

 

すると、冬也が振り向き

 

「ああ、フェイトか……どうした?」

 

と、微笑みながらフェイトに問いかけた

 

「冬也さんが居なかったので、探しにきたんです。ジュースも取りにきたんですが」

 

「そうだったか、すまんな………」

 

冬也は謝ると、視線を湖に向けた

 

フェイトは、そんな冬也の隣に立つと

 

「どうしたんですか?」

 

と、冬也に問いかけた

 

「いや、なにな……酷く場違いな気がしてな……」

 

「場違い……ですか?」

 

冬也の言葉に、フェイトは首をかしげた

 

「俺は、戦場しか知らず…戦うことしか知らず…傷つけることしか知らず…殺すことしか知らない……」

 

「それは……」

 

フェイトはなにか言おうと口を開いたが、結局、なにも出なかった

 

すると、冬也は視線を上に上げて

 

「俺は、この世界で…どうしたらいいんだろうな………」

 

と、悲しそうに呟いた……


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