ハリーとアインハルトは、競技台前に立つとそれぞれ指定の位置に肘を置いて手を組んだ。
「行くぜ、覇王様……手加減抜きで」
ハリーの言葉に、アインハルトは組んだ手を強く握る事で返答した。それを確認したユミナが歩み寄り
『では、いいですか? ……レディ………ファイトッ!!』
と合図をした直後、周囲に凄まじい衝撃波が放たれた。
『こ、これは!? アインハルト選手とハリー選手の二人の魔力がぶつかり、凄まじい衝撃波となって放たれてます!!』
ユミナは司会者として解説するが、周囲に居る観客達は悲鳴を挙げていた。気付けば、ハリーの舎妹達が周囲の観客達の避難誘導を始めていて
「ほら、司会者ちゃんも離れて!!」
とユミナにも、離れるように促した。
(マジか!? 変身前のこの細腕で、こんだけの力が出せるのか!?)
そんな中、ハリーはアインハルトの力強さに驚いていた。確かに、ハリーに比べたらアインハルトの腕はかなり細い方である。
しかし、アインハルトはハリーと互角に腕相撲していた。二人は白熱し、徐々に腕に込めていた力を上げていく。
二人は気付いていなかったが、競技台がミシミシと嫌な音を立てていた。
その時、豪快な音を立てながら競技台が砕け、周囲に破片が飛び始めた。
「わわっ!?」
「飛天御剣流……龍巣閃・散」
当然、ユミナの方にも破片が飛ぶが、間に入った剣士郎によって全て弾かれた。
「無事か、アンクレイブ」
「あ、ありがとう。緋村君」
「司会っ子大丈夫!?」
「ハルにゃー!」
「リーダー!?」
ハリーの舎妹達は、素早くユミナやアインハルト、ハリーに駆け寄って全員の無事を確認した。そして競技台だが、見事にバラバラになっていた。
「あーあ……競技台が……」
「リーダー……手加減抜きにやるから……」
「オレのせいか!?」
「リーダー……今まで、何台の競技台壊しましたか?」
「……覚えてない」
ハリー達は、慣れた様子で破片の回収を始めた。
そこに、観客達の無事を伝えられたユミナが
「こうなったら仕方ないし……アインハルトさん、お休み入って」
とアインハルトに休憩に入るように、促した。
「し、しかし……」
「新しい競技台を用意するまで、腕相撲出来ないから。それに、アインハルトさん。ここまで休み無しだったから、お休みして」
アインハルトが躊躇っていると、ユミナがそう言って、アインハルトの肩を押した。
そこまで言われたら、アインハルトは言い返せずに着替えてから休憩に入ることにした。
その頃、ヴィヴィオのクラスでは
「お? なんか、隣のクラスが賑やかだね」
「本当だね」
産休に入ったなのは、休暇を取ったユーノ。育休中のフェイトと休暇中の冬也が居た。
しかし、当のヴィヴィオの姿が無い。
すると、近くに居たコロナが
「あ、それは多分。ヴィヴィオが活躍したんだと思います」
と語った。
実はヴィヴィオは、隣のクラスの出し物。
的当ての難易度エクストラのキーパーも掛け持ちしており、なのは達が来る少し前にそのクラスに呼ばれていたのだが
「いぇーい! デビルヴィヴィオの勝利ー♪」
「ちょ、ちょっと待って!?」
「さ、再戦を希望しますわ!?」
「おー。凄いなぁ」
「す、凄い……」
ヴィヴィオは、ルーテシア、ヴィクター、ミウラ、はやての四人が放ったボールを見事に、全て防いでいたのである。
なおこの後、競技台の片付けと新しいのを用意したハリー達が来て投げるが、ヴィヴィオのキーパーを突破出来なかったというのも記載しておく。
それを、コロナから聞いたなのはが
「うん。楽しんでるようで、良かった」
と笑みを浮かべた。
やはり、母親として
その後、なのは達はヴィヴィオのクラスから出て中庭側が見える窓から、ヴィヴィオ達がお弁当を食べているのを見つけて
「ふふ……ヴィヴィオ、凄い楽しそう」
「うん……嬉しそうで、本当に良かった」
と笑みを浮かべたのだった。