魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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終わった後

本を読み終わった一同は、地上本部を介して管理局本部から出て帰宅することになった。しかし、時間も時間だった為に大人達が送ることもあって、地上本部の前で集まっていた。その時、アインハルトが足下に居たアスティオンを抱き上げて

 

「では、私は近くなので……この辺で」

 

と断り、帰り始めた。

 

「あ、アインハルトさん……!」

 

ヴィヴィオは声を掛けるが、アインハルトは止まることなく肩越しに振り向いて

 

「また来週……学園で……」

 

とだけ言って、去っていった。

 

「はい、また来週!」

 

ヴィヴィオには、それだけ言って見送ることしか出来なかった。何故ならば、その背中から悲しみを感じ取ったからである。

事実、アインハルトは声を押し殺して泣いていた。その後、少しすると何人かの大人達が車に乗って戻ってきて

 

「さて、剣士郎君は病院に行くよ」

 

とディエチが、剣士郎に告げた。それを聞いた剣士郎は、首を傾げながら

 

「しかし、八神司令の回復魔法で……」

 

「それでも行くよ。あれだけ大怪我したんだから、検査するよ」

 

「……分かりました」

 

剣士郎が最後まで言う前に被せる形で、ディエチが言い、それを聞いた剣士郎は頷くことしか出来なかった。

その後、剣士郎はディエチが運転する車で病院に向かい、検査で一日入院することになり、それに伴って試合の棄権を決めた。

そして棄権に関しては、襲撃してきた相手たる雪代悟も一緒だ。しかも悟の場合は襲撃犯になり、殺す気で攻撃してきて、剣士郎は重傷を負った。

襲撃したもう一人、ファビア・クロゼルグもDSAAは棄権となる。しかし此方は、襲撃したとは言えども怪我人らしい怪我人は実質居ないことから情状酌量の余地は十分にある。

恐らくは、良い友人になるだろう。

しかしこれで、チームナカジマは全員が敗退したことになる。

翌日の早朝、それを理解したヴィヴィオ、リオ、コロナの三人は悔しさから泣いた。

しかし、敗北は大会参加者のほとんどが経験することであり、負けなしというのは優勝した選手だけになる。

重要なのは、その敗北を糧にするか否かである。

そしてヴィヴィオ達は、再起することを決めた。

次は、もっと上を目指そう。そして何時かは、都市大会本選に出る。そして、優勝を目指す。

それを自分たちのコーチたるノーヴェに告げ、次の為に更に特訓に励むことにした。

その後、ヴィヴィオに勝ったミウラは更に快進撃。

なんと二人に勝ち、多くの記者に囲まれて記者会見がされた。

しかし、最後の相手が悪かった。なんと、ジークだったのだ。ミウラも奮闘したものの、10代最強のチャンピオンには敵わなかった。

だが、初出場では非常に高い成績に着目され、再び記者達に囲まれた。

そして少々時間は進み、ヴィヴィオ達の制服も冬服に切り替わり、季節は秋になった。ヴィヴィオ達は特訓しつつ学業も頑張っていた。

確かに選手ではあるが、本来は小学生であり、学生の本分は学業である。

そんなある日、ヴィヴィオはアインハルトに模擬戦を申し込んだ。

今回で二度目の二人きりの模擬戦。

今回の模擬戦だが、ヴィヴィオはかなり気合いが入っていた。練習相手に、自身の母親たるなのはにお願いした程だ。

そんな中、剣士郎はと言うと

 

「はーい、そのままねー!」

 

「うぐぐぐ……」

 

ユミナに施術を施されていた。この理由は、悟との戦闘時に奥義。天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)を放ったからだ。

天翔龍閃の反動は凄まじく、剣士郎の体に大きなダメージを与えていたのだ、剣士郎はそれを表に出さないようにしていたが、以前に施術した際に剣士郎から天翔龍閃は凄まじい負担が掛かることを聞いていた。

そして剣士郎はそんなユミナの目前で、天翔龍閃を放っていた。

確かに剣士郎は病院で、生活になんら支障は無いという診断をされた。だがそれは、日常レベルでの話であり、試合や戦闘となるとまだ無理と言えるものだった。

ユミナはそんな剣士郎の回復の助けになればと、剣士郎の自宅に訪れて施術しているのだ。

 

「あの奥義……本当に凄い負担なんだね……こんなに、全身にダメージが……」

 

「神速を旨とする流派だからな……全身を酷使する……ぐうっ……」

 

ユミナの施術に、剣士郎はうめき声を漏らしながら任せていた。剣士郎も、今のままではダメだと思っていたからユミナに任せているのだ。

そして剣士郎は

 

「それで……アインハルトの様子は……どうなんだ……?」

 

「……少し、落ち込み気味だった……やっぱり、ご先祖様のことを気にしてるみたいだったよ……」

 

剣士郎からの問い掛けに、ユミナは少し気落ちした様子で答えた。ユミナだが一日前にアインハルトの家を訪れており、同じように施術したりマネジメントをしたりしたのだ。その時に、アインハルトの様子を確認していた。

 

「剣士郎君は……」

 

「俺は、アインハルトやファビア、雪代のようにはっきりと覚えている訳では無いから、そんな強くは思いは無いが……気にならないという訳でもない……」

 

ユミナが最後まで言う前に、剣士郎は自分の考えを口にした。記憶継承には個人差があり、ファビアやアインハルト、悟に関してはかなりはっきりと覚えていた。

それに対して、ジークはほぼ技術のみ。剣士郎は技術を中心に記憶が多少という感じである。

しかしユミナは、剣士郎から悲しみを感じていた。

そしてユミナは、自分に出来ることがないのか考えながら施術を続行した。


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