魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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逆転と郷愁

ルーテシアとファビアが戦い始めてから、数分。ルーテシアは危機に陥っていた。当初はソニックアクションで翻弄、更にはファビアには初めて見せた召喚魔法で優勢に戦っていたが、ファビアが切り札たる悪魔合身という強化魔法を使い、ルーテシアを押し始め、重力魔法で押し潰してから使い魔の一体に槍を投げさせた。

 

(こりゃ、マズい ……)

 

とルーテシアは思い、轟音を立てながら槍が突き刺さり煙が立ち込めた。勝ったと思ったファビアは、上から見ていたのだが、煙が晴れると驚いた。

ルーテシアが無事だったこともだが、ルーテシアを助けたのがデバイスを起動したアインハルトだったからだ。

 

「クラウス……つっ!?」

 

嘗ての覇王の名前を言った直後、横から接近してくる気配に気付いたファビアだったが、デバイスを起動したヴィヴィオからの一撃を受け、更にバインドで縛られた。

 

「ふう……大丈夫、ルールー?」

 

「いやぁ、助かったよ、二人共」

 

「いえ、先に助けてもらったのは、此方です」

 

残心してからヴィヴィオが問い掛けると、ルーテシアはヒラヒラと手を振りながら謝意の言葉を言って、脇に抱えていたアインハルトはゆっくりとルーテシアを降ろした。その時ルーテシアは、自分の胸元から振動を感じて、視線を向けた。すると、ファビアと交戦した際に回収していたミウラが封じられていた瓶の中のミウラが、起きて瓶を叩いていた。

 

「あ、忘れてた」

 

ミウラのことをすっかり忘れていたルーテシアは、瓶の蓋を開けてミウラを解放すると、シーツを手元に召喚し、ミウラの体に掛けた。

 

「ようやく出れましたー」

 

「いやぁ、ごめんね。ミウラ。すっかり忘れてたよ」

 

ルーテシアが謝罪すると、ミウラは手を振って

 

「いえ! 簡単に捕まってしまった、ボクが原因ですから!」

 

と告げた。その時、アインハルトは下で何かが光ったことに気付いて、光った場所に視線を向けた。そこには、瓦礫の隙間に挟まる形で2つの瓶が有り、中にはそれぞれ、ハリー達とミカヤ、リオの姿があった。

のだが、ハリーがイレイザーの準備を進めていたのだ。

 

「よっしゃぁ!! イレイザーの発動準備完了だぁ!」

 

ハリーのイレイザーは、発動するのに約5分掛かる。そしてハリーは、瓶の中でずっとイレイザーの準備をしていたのだ。しかし、そんなハリーにエルスが

 

「ま、待ってください。ハリー選手! 今は、ヴィヴィオ選手があの子を説得しようとしてますから!」

 

とハリーを止めようと試み、ハリーの舎妹達も同意するように頷いてヴィヴィオを指差した。

確かにそこでは、ヴィヴィオがファビアに対して、説得しようとしていた。

だが、ハリーは怒り心頭といった様子で

 

「うるせええぇぇ! こちとら、何分間も裸でこの中に閉じ込められてて、頭にきてんだよぉぉぉぉ!!」

 

と声を張り上げ、エルスと舎妹達は思わず抱き合った。

そして、その光景を見ていたミカヤはハリーを止められないと悟り

 

「ダメだ……ああなったハリーは、止められない」

 

「は、はいぃ……」

 

そう言って、リオを抱き締めた。

その直後

 

「ぶっ飛べやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ハリーは2つの瓶を射線に入るようにしつつ、更にはファビアも狙ってイレイザーを放った。

 

「ヴィヴィオさん!」

 

「ふえ? うわっと!?」

 

アインハルトが名前を呼んで警戒すると、振り向いたヴィヴィオは接近してくるイレイザーに気付き、ファビアを抱えて横に飛んだ。

瓶が砕けた数瞬後、解放された面々は直ぐ様デバイスを展開し

 

「よーし、ヴィヴィ。ちょっとそこどけ」

 

ハリーはファビアを睨みながら、魔力弾を形成した。それを見たヴィヴィオは、慌てた様子で

 

「ま、待ってください。ハリーさん! 今、何とか説得しますから!」

 

とハリーを止めようとした。だが、ハリーは

 

「せめて、一発はぶん殴る!」

 

と拳を握り締めながら、炎を纏わせた。

 

「だから、待ってください! 何か理由がある筈なんです! 大事な理由が!」

 

ヴィヴィオがハリーを止めてる間に、ファビアは逃げようとした。だが、素早くアインハルトが羽交い締めにして

 

「逃がしませんよ」

 

「よっと……魔力手錠、ON♪」

 

ハリーが拘束すると、素早くルーテシアが魔力を封じる手錠を着けて、ファビアは強制的に強化魔法を解除されて、更には使い魔達も吐き出され、その勢いのまま使い魔達は逃げようとしたが

 

「はい、あんたらも動くなっ!!」

 

とルーテシアが召喚し、先回りさせた虫達により押さえ込まれた。そこに

 

「うぅー……チビッ子ぉ、何処行ったぁ?」

 

と少し情けない声を挙げながらジークが現れたのだが、何故か小さくなっていた。そんなジークを見て、アインハルトは呆然とした表情で

 

「……チャンピオン?」

 

「はわぁ!? ハルにゃん!?」

 

ハルにゃんというのは、ジークが付けたアインハルトの愛称である。その理由は、アインハルトのデバイスたるティオの見た目がまるで仔猫のようだから、らしい。

 

「うぇ、ジーク? なんだその姿は?」

 

「うぅ……あの子にヤられてもうて……」

 

ハリーに説明しながらジークは、アインハルトに支えられてファビアに近寄り

 

「もう……イタズラはアカンよ、このチビッ子」

 

と軽く、ファビアの額を小突いた。その直後、ファビア、ジーク、アインハルト、ヴィヴィオの脳裏にある光景が過った。

それは、遥か過去。自分達の先祖の記憶であり、今と同じ光景だった。


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