立ち入り制限区画に入った一同は、そのまま目的の場所に向かった。無限書庫の立ち入り制限区画は無重力区画で、飛行魔法を修得していないと移動は慣れないだろう。
ヴィヴィオがミウラを補助し、アインハルトとジークの近くには冬也が居る。
ハリーの近くには、彼女の舎弟(妹?)とエルスが居る。そうやって、一同は該当の場所に向かっていく。
「えっと……私達が探す本があるのは……」
「あ、ここですね」
「見ての通り、迷宮型です!」
三人はテンション高めで、一同の前に現れた巨大な扉を指差した。それを見て、微笑ましい気分のミカヤ、エルス、ヴィクター達。そして扉を開けて
「とりあえず、ありそうな場所は八ヶ所程にまで絞りこみましたから……別れて探しましょう!」
「ただ、中は迷路みたいだから……」
「皆、デバイス出してなー」
「ビーコン登録して、迷ったら連絡を……迎えに行く」
はやてと冬也の言葉を聞いて、デバイスを持っているメンバーは二人に近寄る。だが、ヴィヴィオとアインハルトは向かわない。すると、アインハルトが申し訳なさそうに
「すいません、ヴィヴィオさん……ヴィヴィオさんのクリスは、私のティオの……」
「ああ、大丈夫ですよ!」
実はヴィヴィオのクリスは、調子が悪いティオの面倒を見るために今はヴィヴィオから離れているのだ、
直ったら、リィンが持ってきてくれる手筈になっている。
「それじゃあ、組分けは……」
組分けは、以下になった。
ハリー組・エルス
ミカヤ・リオ
ヴィクター・コロナ・ユミナ
アインハルト・ジーク
ヴィヴィオ・ミウラ・剣士郎
各組は古代ベルカが読める人物を最低一人居るようにし、検索魔法は慣れが必要な為に、検索魔法が使えるヴィヴィオ達はバラバラに別れた。
先に探し終わった組は、他の応援か他の場所に回ることにした。
子供達は中に入り、ノーヴェ、冬也、はやての三人は入り口で待機していたのだが
「……なんか、変な感じせえへんか?」
「確かに……何やら、違和感があるな……」
「本当ですか? ……ジェットは異常無しって言ってますが……」
はやてと冬也は違和感を感じ、怪訝そうな表情を浮かべた。実はこの時、既に内部にヴィヴィオ達以外の人物が侵入していて、既に動き始めていた。
「ここが、私達が担当する区画ですね!」
「中々の量だな……これは、苦労しそうだ」
「ふわぁ……凄い本の数ですね……」
ヴィヴィオとミウラ、剣士郎が担当するのは円形の部屋で、その壁一面が全て本棚になっていた。ミウラと剣士郎は検索魔法は使えないために、もし一冊ずつ調べるとしたらかなりの時間が掛かっただろう。
「私にお任せです! 検索魔法は得意なんで!」
「流石、現役の無限書庫司書だね……俺は補佐に回ろう」
「あ、ボクも手伝います!」
ヴィヴィオが検索魔法で探し始め、ミウラと剣士郎はヴィヴィオの検索魔法で出てきた本の確認を始めた。そして、ある程度探していた時
「はれ?」
「ヴィヴィオさん? どうしました?」
「今一瞬、リオから通信が……直ぐに切れたんですけど……」
「なに?」
どうやらリオがヴィヴィオに通信してきたようだが、直ぐに切れてしまったらしい。それが気になったヴィヴィオは、リオに通信を繋げようとしたが、中々繋がらない。
「……二人とも、念のために構えて……」
嫌な予感を感じ、剣士郎は二人に注意喚起しようとした。その直後、ドアを突き破って誰かが突入してきた。それを見て、剣士郎は直ぐ様デバイスを展開し突入してきた相手の一撃を防いだ。
「誰だ!?」
「剣士郎さん!?」
「え、何事!?」
剣士郎に斬りかかったのは、短い白髪が特徴の少年だった。年齢的には、剣士郎と同年代なのは間違いないだろう。
「くっ……!」
「人斬り抜刀斉……! ようやくだ、ようやく……! 我が先祖の復讐が叶う!!」
最初は押され石像に押し付けられた剣士郎だったが、辛うじて弾き飛ばした。すると、相手は憎しみが籠った声と目をしていた。
「あれ……確か、雪代悟選手!?」
相手の顔を見て、ヴィヴィオが相手の名前の言った。ほぼ同時に、剣士郎も
「まさか……綾の!?」
「貴様が、その名前を言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
剣士郎がある名前を言った注意、相手。雪代悟は、激昂しながら再び突撃してきた。剣士郎は得意の先読みで受け流そうとしたが、悟は刀身に蹴りを叩き込んで斬撃の速度を加速させた。
「なっ!? があぁぁぁぁぁ!?」
予想外の加速に、剣士郎は受け流し損ねて、大きく吹き飛ばされて石像を破壊。そのまま壁に激突した。
だが剣士郎は、直ぐに壁から離れた。そこに、悟が追撃を加えて、壁に刀身がめり込んだ。
「あの剣……柄はリオのに似てるけど……刀身は、刀!?」
ヴィヴィオは悟のデバイスが、剣士郎やミカヤと同じ刀だと気付いた。しかし、相手の戦闘技法は見たことないもので、かなり独自性が強かった。どちらかと言うと、 リオが使う春光拳に近かった。
「剣士郎さん!」
「こいつは、俺が! もう一人に気を付けろ!!」
剣士郎は悟の一撃を受け止めると、ヴィヴィオに忠告した。その時になってヴィヴィオは、もう一人居ることに気付いた。
その人物も、ヴィヴィオは知っていた。
「貴女は、ファビア・クロゼルグ選手!?」
異彩の選手、ファビアだった。
過去の因縁が、振り掛かる。