魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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因縁

リオとハリーの戦いは、リオがハリーを追い詰める程に善戦したが、ハリーが対ヴィクター用に新しく用意していた魔法で敗北した。これで、チームナカジマの初等部組は全員敗北。

これで残ったのは、中等部の剣士郎とアインハルトの二人になった。

その翌日、初等部三人は何時もの癖で早く起きてしまい、ランニングしていた。

試合というのは、本人の技量と運の両方により、試合展開は変わる。そして、大会では一回の敗北で終わってしまう。負けたことが無いというのは、優勝した人物のみになる。誰もが一度は敗北を経験し、それを糧に強くなっていく。

三人は一回泣いてから、また強くなろうと誓った。

今度は、より良い成績を目指して。

それから数時間後、試合会場。

これからアインハルトは、いよいよ10代最強と名高き相手、ジークと戦う。

ジークリンデ・エレミア、次元世界最強と名高き選手で、大会に出てからの公式敗北記録は、昨年の不戦敗しかない。正に、10代最強と言えるだろう。

アインハルトは、そのジークとの戦いに緊張していた。

 

(本当に、私の拳は世界最強に届くのだろうか……)

 

アインハルトは、ノーヴェ達との訓練を始めてから自分はそれなりに強くなったと自覚している。しかし、それが通用するかはわからない。

 

(いえ、諦める訳にはいかない……届かせます!)

 

「緊張するな、アインハルト……何時も通りにやれ」

 

緊張していることに気付いたノーヴェが、アインハルトの肩を軽く叩きながら励ました。その時

 

「両選手、リングへ!」

 

と審判が、促してきたのでアインハルトとジークはリングに上がった。そして相対し、審判が何時もの確認をしてくる。怪我は無いか、正々堂々ルールに乗っ取り戦うこと。それを聞いたアインハルトとジークは頷き、そして、白線の位置まで下がった。

それを確認した審判は、二人が構えたのを確認してから

 

「……ファイトっ!!」

 

と試合開始の合図を告げた。

この時アインハルトは、この試合が自分だけでなく、古代ベルカに関係するとは、予想もしていなかった。

試合が始まって約2分が経過したが、アインハルトはジーク相手に苦戦していた。

ジークの戦闘スタイルは、遠近両立型。しかも非常に高いレベルで纏まっており、近接戦闘は乱打と間接技、更に投げと近接射撃を織り混ぜて戦うために隙がまったくない。そして遠距離も、濃密な弾幕を形成し更に高い精度の誘導性能を有している。

しかし、誘導弾はアインハルトには効かなかった。

なにせアインハルトは、魔力弾を投げ返すことが出来る。アインハルトが魔力弾を投げ返すと、試合会場全体で驚愕の声が上がった。

ジークの猛攻に苦しめられたアインハルトだったが、何とか一矢報いた。すると、ジークは一度距離を取り

 

「うん、キミの力量はわかった……ほな、ここからは本気で行くよ」

 

と告げた。そう、今までジークは本気ではなかった。何故ならば、ジークはまだデバイスの真の形態を見せていなかった。

ジークは今まで、動きやすさ重視で装甲らしい装甲は無かった。しかし、本来は両手と前腕を覆う形の手甲がある。ジークはそれを展開し、ある構えを取った。それを見た瞬間、アインハルトだけでなく、ヴィヴィオと剣士郎の脳裏にある光景が浮かんだ。

それは、ある意味で前世と言えるだろう。正確には、古代ベルカの記憶と技術を継承したから思い出した(・・・・・)、というべきか。

それは、古代ベルカの緒王戦乱期。特に、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトに関する記憶だった。

ヴィヴィオは初めて見て、剣士郎は久しぶりに先祖の記憶を見て倒れかけた。

 

「ヴィヴィオ!?」

 

「ヴィヴィオさん!?」

 

「緋村君!?」

 

倒れそうになった二人だが、ヴィヴィオは片膝を突いた状態で、剣士郎は咄嗟に柵を掴んで耐えた。

 

「い、まの……」

 

「そうか……彼女の先祖は……エレミアか……!」

 

ヴィヴィオは初めてのことに困惑し、剣士郎はどこか納得した様子で、呟いた。すると、ユミナが

 

「緋村君、ジークリンデ選手のことを知ってるの?」

 

と問い掛けてきた、彼女は格闘技ファンの為に、10代最強のジークのことを知っていた。

 

「俺が知ってるのは、正確には彼女の家柄のことだ……エレミア……古代ベルカの緒王戦乱期、エレミア家は通称で黒のエレミアと呼ばれていた……エレミア家独自の魔法格闘戦技……それが、エレミアクランツ」

 

剣士郎がそこまで説明を終えた時

 

「エレミアアァァァァァアア!!」

 

普段は物静かなアインハルトが、喉が張り裂けんばかりの怒声を上げながらジークに突撃した。そこからアインハルトは、まるで怒り狂った猛獣のようにダメージを無視して攻撃する。

 

「アインハルトさん!」

 

「ストラトスさん!?」

 

普段からは想像も出来ないアインハルトの姿に、ヴィヴィオ達は驚いた。ノーヴェ達も冷静になるよう声を掛けるが、アインハルトは聞かずに猛攻する。

すると、アインハルトの拳を掴んだジークが至近距離で魔力弾を撃ち込み、吹き飛ばした。

その一撃は、アインハルトに大ダメージを与えた。

このまま試合を続行するのは、余りにも無謀と誰もが思った時、第1ラウンド終了を知らせるゴングが鳴った。

ここから、古代ベルカ緒王戦乱期の因縁が始まった。


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