魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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予想外と痛み

試合当日、第二会場。

そこでは剣士郎が、純射砲撃型の魔導師。リュカ・オールター。

身軽な動きが特徴の相手で、一度だけだが都市本戦にも出場したことのある選手である。

 

(中々早い……しかも、射撃も的確……中々にヤりづらい……)

 

剣士郎はそう考えていたが、それは相手たるリュカも同じだった。

 

(なに、この少年! こっちの出だしを読まれて、殆ど避けられてる! どんな感覚と目をしてるの!?)

 

実はこの試合、始まって2分が経過しているのだが、互いに直撃は無く、ダメージも無かった。

 

『なんという試合だぁぁ!! 互いに機動重視な選手なだけあり、狭いリングをところ狭しと駆けながら、互いに一撃も入っていない! 予想していなかった試合展開!! この試合、目が離せません!!』

 

司会は熱狂した様子だが、選手側からしたらどうでもいいことである。二人は更に攻撃していくが、中々当たらない。互いに機動先を予想しているのだが、互いに高い機動故に簡単に回避していた。まさに、千日手状態。

結局、一撃も当てられないままに第1ラウンドは終わった。

ここまで互いにダメージが入らないというのは、中々無い展開である。恐らくだが、この大会の歴史の中でも非常に珍しいのではなかろうか。

剣士郎は、セコンド役のディエチとユミナの所に戻り

 

「やれやれ……一撃も入れられないとは、予想してなかった」

 

と呟いた。それを聞きながら二人は、剣士郎を用意してた椅子に座らせて

 

「いいから、早く休んで」

 

「あんなに走ってたんだから、休まないと」

 

と剣士郎を労り始めた。ディエチはドリンクを手渡し、ユミナは剣士郎の足や腕のマッサージを始めた。そして剣士郎は、ドリンクを一口飲むと

 

「それで、アッチはどうなってますか?」

 

と問い掛けた。剣士郎が言ったアッチとは、コロナとアインハルトの試合のことである。すると、ディエチが

 

「それなんだけど……コロナちゃんが、アインハルトちゃんに善戦したんだ」

 

「……予想外でした」

 

ディエチの告げた内容に、剣士郎は素直に驚いていた。剣士郎の評価では、コロナの方が不利であった。リングという狭いフィールドでは、コロナの魔法は不向きと評価していたのだ。しかし実際は、コロナがアインハルトに善戦した。つまりは、コロナに秘策が有ったということになる。

 

「コロナちゃんとアインハルトさんのことが気になるかもしれないけど、今は自分の試合に集中しよう? 緋村君も有利とは言えないんだから」

 

「確かにそうだな」

 

ユミナの言葉に、剣士郎は同意した。互いにダメージ無しとはいえ、相手の方が経験は豊富。一瞬の隙を突かれて、倒される可能性もある。

 

「……一応、手はあります……賭けになりますが……」

 

「試合に関しては、ノーヴェから剣士郎君に任せていいって聞いてるから聞かないけど……無理だけはしないでね」

 

ディエチの言葉に頷いた直後、レフェリーが

 

「セコンドアウト! 選手、リングへ!!」

 

と声を上げながら、両腕を素早く動かした。それを見た剣士郎は、椅子から立ち上がり、リングに上がった。

そして剣士郎は、リング中央の白線まで進み、リュカと相対した。

距離は、約3m。剣士郎からしたら、刀で斬るには思い切り飛び込まないと届かない距離。しかし、射撃型のリュカからしたら目と鼻の先と言える距離。

二人が定位置に立ったのを確認したレフェリーは、下がって

 

「ファイト!!」

 

と腕を交差させた。その直後、二人はほぼ同時に動いた。リュカは一気に10個近い魔力弾を展開し布陣。

そして剣士郎は、強く体を左に捻った。

 

(さあ、何をしてくるのか……)

 

リュカは様子見を含めて、魔力弾を発射しようとした。その直後、リュカからしたら剣士郎は予想してなかったことをした。

 

「飛天御剣流……飛龍閃!!」

 

なんと剣士郎は、鞘から刀を飛ばしたのだ。

 

「なっ!?」

 

まさか自分の武器たる刀を飛ばすとは予想してなかったリュカは、驚愕で一瞬固まり、慌てて迎撃。魔力弾の一発を、迫ってくる刀に向けて放った。

その一発が当たり、刀は上に飛んでいった。

 

「危なかった……って、相手が居ない!?」

 

刀を迎撃する際、リュカはミスを犯した。リュカは刀を迎撃する為に、刀に意識を集中させ、視線を向けた。

その結果、剣士郎から目を外してしまったのだ。

剣士郎は、リュカの真上に飛んで刀を掴み

 

「飛天御剣流……龍墜・翔閃!!」

 

隙だらけだったリュカの頭に刀を振り下ろし、着地するとまるでバネのように跳ね上がって、顎を打ち上げた。

まともに喰らったリュカは、足がガクガクになっていた。そして、技を放った剣士郎が着地した時、リュカのセコンドがタオルを投げ入れた。

その意味は、降参。リュカのセコンドが、リュカがもう戦えないと判断し、投げ入れたのだ。

その直後、ゴングが鳴り響き

 

『決まったぁぁぁ! 勝者、緋村選手! まさか、自身の武器たる刀を飛ばすという大胆な技を使ってきました! その後、痛烈無比な連撃に、オールター選手のセコンドがたまらずタオルを投げ入れました!』

 

司会が熱く語る中、剣士郎は医療班に運ばれていくリュカとセコンドに対して、頭を下げていた。そして、ディエチとユミナの所に戻ると

 

「いきなり刀を飛ばした時は、驚いたよ……」

 

「あれが、緋村君が言ってた手だったんだ。あれも、飛天御剣流の技なんだ?」

 

「はい。飛龍閃と言います。土龍閃と同じ数少ない遠距離技です。まあ、相手が上じゃなく横に弾いていたら、鞘を使うしかなかったですが」

 

ユミナの問い掛けに、剣士郎はバリアジャケットを解除してから返答。そして、気になっていたのか

 

「それで、アッチは……」

 

「さっき終わったよ。アインハルトの勝ち」

 

「そうですか」

 

ディエチの告げた結果を聞き、剣士郎は目を伏せた。こう言ったら悪いが、アインハルトの勝利自体は剣士郎も予想していたことだ。予想外だったのは、コロナが善戦したということ。

 

「それで、緋村君の次の試合なんだけど、それは来週になったよ。対戦相手は、初参加の……あ、この人。雪代悟選手だって」

 

ユミナの告げた相手の名前を聞いた剣士郎は、ズキリとした頭痛を感じた。


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