ユミナがチームナカジマのサポーターとなった翌日、湾岸公園。
「つーわけで、つい昨日チームのサポーターになった」
「ユミナ・アンクレイブです! よろしくお願いします!」
『よろしくお願いします!』
ユミナが挨拶すると、ヴィヴィオ達も元気よく挨拶した。その後、特訓を始めた。とは言え、試合直前なので、本格的な特訓は無し。やっても、軽めのスパー位に限定した。そうして、先に終えたアインハルトと剣士郎の二人を、軽くマッサージしたのだが
「緋村君……正直に答えて……緋村君の技の中に、凄く負担の大きい技があるでしょ?」
とユミナが、真剣な表情で問い掛けた。その問い掛けに剣士郎は、僅かに間を置いてから
「まあ、確かにあるが……」
「可能な限り……というか、出来るだけ使わないで……今成長期なんだから、下手に使ったら二度と剣を持てなくなるよ」
剣士郎の返答を聞いたユミナは、真剣な表情のままそう告げた。すると、ノーヴェとディエチが
「ディエチ、気付いたか?」
「気付かなかった……剣士郎君とは、割りと一緒に居たのに……」
と会話している。どうやら、初めて触ったのに気付いたことに驚いているようだ。
「まあ、奥義はあまり使わないが……」
「それは、飛天御剣流の奥義ということですか?」
剣士郎の言葉が気になったのか、休憩のタイミングでディードが現れた。
「ええ……飛天御剣流奥義……まさに一撃必殺の技ですが……あれは、確かに負担がかなり大きい技です……元々飛天御剣流は機動性に重点を置いているので、負担は他の剣技より高いです……実際、俺の記憶の中には奥義を使い続けたために体を壊した使い手が居たというのもあります……」
「やっぱり……」
剣士郎の説明に、ユミナはどこか納得した様子で
「緋村君の剣、凄く高く跳んだり、体の捻りが凄いし……あんなの、体の負担が強いに決まってるよ」
と剣士郎に詰め寄った。剣士郎は、少し仰け反りながらも
「アンクレイブ……近いんだが」
と両手を軽く挙げて、ユミナを制止した。するとユミナも、自分がどういう体勢か気付いたらしく、顔を赤くして
「ご、ごめん……」
と離れた。そして、少し距離を取ってから
「とにかく、その奥義ってやつは使わないようにね? それで緋村君が体を壊したりしたら、目も当てられないんだよ?」
「わかっている……俺とて、まだ暫くは刀を置く気は無いからな……」
「ん、ならよし」
剣士郎の返答に満足したのか、ユミナは笑みを浮かべた。その後、チームナカジマは全員が見事に初戦を突破した。
「本当、皆凄いね! ヴィヴィオちゃんのカウンター、コロナちゃんのゴーレム、リオちゃんの春光拳、アインハルトさんの覇王流、緋村君の飛天御剣流! 皆、直ぐに相手を倒してたね!」
「えへへー♪ ノーヴェの指導の賜物です!」
ユミナの言葉に、ヴィヴィオは嬉しいのと恥ずかしいという表情を浮かべながら、ノーヴェを見た。しかしノーヴェは、気恥ずかしい様子で視線を反らしている。
するとヴィヴィオが、思い出したように
「あ! もうすぐ、ミウラさんの試合だ!」
と手を叩いた。それを聞いて、全員で試合会場に向かった。既に、ミウラには応援メッセージは送っているが、やはり見ておきたいのが本音である。そして、そんなミウラの初戦の相手は
「ミカヤさんだ!? 都市本戦出場常連のベテラン選手だよ!」
都市本戦常連選手、ミカヤ・シェベル。その実力は折り紙付き。初戦の相手としては、かなりハードである。
だが、大会は既に始まっていて、入場も終わっている。ならば、戦わないという選択肢は存在しない。やるならば、全力で挑む。
「ミウラさーん! 頑張ってぇ!!」
ヴィヴィオ達が応援した時、試合開始のゴングが鳴り響いた。