魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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新たな仲間

聖ヒルデ学院から、十数分後。

 

「ここが、私の家ですよ」

 

「ここが……」

 

ヴィヴィオの案内を聞いて、ユミナは一軒家。高町家を見上げていた。その時、一台の車が停まり

 

「あ、ヴィヴィオ。お帰り」

 

「あ、ユーノパパ!」

 

車の窓から顔を出したのは、ユーノだった。

 

「ユーノパパ、早かったね?」

 

「ああ、うん。今日、書架の検索システムが新しいのになるから、その影響でね。あ、そこの女の子。そこ、駐車場なんだ」

 

「あ、すいません!」

 

ユーノの言葉を聞いたユミナは、慌てた様子で駐車場から退いた。そこに、ユーノは車を止めてから車から降りた。

 

「リオちゃん、コロナちゃん、久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、ユーノさん」

 

「お久しぶりでーす!」

 

ユーノが挨拶すると、コロナとリオは元気よく挨拶。そしてユーノは、アインハルトと剣士朗に

 

「君が、アインハルト・ストラトスちゃんに、そっちが緋村剣士朗君だね? 初めまして、高町・S・ユーノです」

 

「初めまして、アインハルト・ストラトスです」

 

「緋村剣士朗です。お噂は予々」

 

「あははは、大したことない人物だよ」

 

握手しながら、会話する三人。そして最後に、ユミナを見て

 

「で、そっちの子は……」

 

「は、初めまして! ユミナ・アンクレイブです! ストラトスさんと緋村君のクラスメイトで、クラス委員です!」

 

「よろしくね。出来たら、ヴィヴィオとも仲良くしてくれると嬉しいかな」

 

「は、はい!」

 

ユーノに挨拶されて、ユミナは緊張していた。

 

(ま、まさか……あの無限書庫の総合司書長のユーノさんがヴィヴィオ選手のお父さんだなんて!?)

 

ユーノのことは、ユミナも知っていた。格闘家というわけでは無いが、それでも有名人である。無限書庫の総合司書長にして、後方支援を得意とする凄腕の結界魔導師。通称、翡翠の守護者。

ユミナが確認した中では、最高位の結界魔導師で、ユーノの結界を突破出来たのは僅か数人だけだった。その内の一人が、ヴィヴィオの母親のなのはだ。

 

(ある意味、最強夫婦!?)

 

砲撃兼攻撃担当のなのはに支援兼結界担当のユーノ。

なんとも、磐石な布陣とも言える。更に言えば、ヴィヴィオはバリバリの格闘家だ。

 

(どんな家族!?)

 

そうしている間に、全員で高町家に入ると

 

「む、帰ってきたか。お帰り、ヴィヴィオ。それにユーノも」

 

全員を、冬也が出迎えた。

 

「ただいま、冬也パパ!」

 

「やあ、冬也」

 

「今日は早かったな、ユーノは」

 

「うん。無限書庫で使う検索システムが新しいのになるからね」

 

「なるほどな」

 

ユーノの説明に、冬也は納得した様子で頷いていた。だが、ユミナは

 

(こ、今度は時空管理局唯一の攻勢部隊にして最強部隊。強襲制圧部隊の隊長の神代冬也三等空佐!? え、どういう家族構成!?)

 

と混乱していた。まあ、無理もないだろう。冬也の名前は、最早次元世界全体で有名だ。知らない者が居たら、それはモグリ位だろう。

 

「む……アインハルトと剣士朗は知っているが……そちらの少女は?」

 

「は、初めまして! ストラトスさんと緋村君のクラスメイトで、クラス委員のユミナ・アンクレイブです!」

 

「ん、ユミナか。ヴィヴィオ達と仲良く頼むな」

 

「は、はい!」

 

緊張からか、ユミナはガッチガチになっていた。そこに、止めになったのは

 

「あ、皆。いらっしゃい」

 

「お、来たねー?」

 

フェイトとなのはが現れたことだった。

ユミナとしたら、なのはは予想が付いていた。しかし、フェイトは完全に予想外だった。

 

(時空管理局執務官、心優しき閃光のフェイト・T・ハラオウン一等空尉!? あ、そういえば結婚したって雑誌にも載ってた! そのお相手は……そうだ、神代冬也三等空佐!)

 

「あれ? なんか、固まってる子が居るけど……」

 

「大丈夫?」

 

「は、はい! 大丈夫です! 初めまして! ストラトスさんと緋村君のクラスメイトで、クラス委員のユミナ・アンクレイブです!」

 

なのはとフェイトが問い掛けると、ユミナは名前を言いながら頭を下げた。そこに、剣士朗が

 

「アンクレイブ、落ち着け……」

 

「落ち着けるわけないよ!? ここに居るの、全員有名人なんだよ!? 私は一般人!」

 

確かに。この中では唯一、ユミナは普通の学生である。ヴィヴィオ達は競技選手で、ユーノは無限書庫の総合司書長。そして、他の三人は時空管理局で有名な局員だ。

緊張するな、という方が無理な話だ。

 

「にゃははー。そんな気にしなくていいよー」

 

「うん。今は私服だし、気楽にね」

 

なのはとフェイトにそう言われつつ、ユミナはヴィヴィオ達と一緒に居間へ向かった。

 

「そういえば、フェイトママ。アリシアは?」

 

「ん? そこのソファで寝てるよ」

 

居間に到着すると、ヴィヴィオがフェイトに問い掛けて、フェイトは一つのソファを指差した。そのソファでは、アリシアがスヤスヤと寝ている。

 

「アリシア、よく寝てるねー」

 

「ふふ、そうだね。夜泣きも滅多に無いし、あっても直ぐに冬也さんが対応してくれるし」

 

「……子供の面倒を見るのは、慣れている。アリシアは、ある意味で親孝行だ」

 

冬也はそう言って、アリシアの頭を優しく撫でた。

 

「えっと……フェイトさんと冬也さんのお子さん……ですか?」

 

「うん、そうだよ……私が産んだ、初めての子供」

 

ユミナの問い掛けに、フェイトは寝てるアリシアを抱き上げた。すると、アリシアがパチリと起きて

 

「あー……だ……」

 

「よく寝てたね、アリシア」

 

「だーうー」

 

上機嫌なアリシアは、笑顔を浮かべている。そんなアリシアに、フェイトは用意していた哺乳瓶を差し出して

 

「あ、皆のクッキーとかも用意してあるから、食べてね」

 

と視線を、机に向けた。確かに、机の上には幾つものおやつが用意してあった。

 

「えっと……」

 

「ほら、遠慮しないで」

 

ユミナが迷っていると、なのはが空いていた席にユミナを座らせた。

 

「紅茶で良かったか?」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

ユミナが座ると、ユミナの前に冬也が紅茶が入ったカップを置いた。

 

「あ、冬也パパ! 私にも紅茶頂戴!」

 

「ん。ヴィヴィオは、牛乳と砂糖入りだったな」

 

ヴィヴィオが手を挙げると、冬也はヴィヴィオの何時もの内容を思い出すためか口にしながら淹れた。

 

「うん、ありがとー!」

 

「構わん」

 

「ふふ。冬也の淹れてくれた紅茶、凄く美味しいからね」

 

「そうか?」

 

冬也は首を傾げながらも、フェイトに紅茶を手渡した。その時、冬也は自然と微笑んでいた。

その微笑みを見て、フェイトは

 

(昔と比べて、よく笑うようになったなぁ……うん、良かった……)

 

と思いながら、紅茶を飲んだ。

 

「さて、もう少ししたら大会も本格化するんだよね?」

 

「はい、そうです」

 

「大勢の観客の前で、試合です!」

 

なのはの問い掛けに、コロナとリオが答えた。

DSAAの規模を考えると、観客の人数も桁外れだろう。

 

「地区予選を越えたら、都市大会なんだけど……」

 

「今の私達じゃあ、夢のまた夢……」

 

「だから、一先ずは好成績を残すことが目標!」

 

「まあ、高いのも良いけど、最初は手が届くところからだね」

 

三人の宣言に、ユーノはコーヒーを飲みながら同意した。最初から高過ぎると、人は挫折する可能性が高い。だったら、最初は低くてもいい。少しずつ高く登っていけばいい。人というのは、成長するのだから。

 

「あの……だったら、私にも協力させてください」

 

ふと気付けば、ユミナはそう告げていた。全員の視線が集まると、ユミナは

 

「その……私に出来るのは、精々がマネージャー位でしょうが、手伝わせてください!」

 

と言いながら、頭を下げた。それを聞いた冬也が

 

「ふむ……ノーヴェかディエチに連絡が着くかな」

 

と通信ウィンドウを開いた。

 

『はい、ディエチです』

 

「ディエチ、今は大丈夫か?」

 

『あれ? 冬也さんからなんて、珍しいですね?』

 

「そうかもしれんな……今しがた、ヴィヴィオ達に協力したいという子が居るんだが、大丈夫か?」

 

『取り敢えず、話をさせても?』

 

「ああ、分かった」

 

ディエチの話を聞いた冬也は、ユミナに手招きした。呼ばれたユミナは、冬也と入れ替わる形でウィンドウの前に立って

 

「は、初めまして! ストラトスさんと緋村君のクラスメイトで、クラス委員のユミナ・アンクレイブです!」

 

『モニター越しだけど、初めまして。ディエチ・ナカジマです。えっと、協力してくれるって言ってたけど……』

 

と会話を始めた。

 

「ふむ……あの子は、サポーターに向いているだろうな」

 

「魔力の流れ?」

 

「ああ……指先に集中しやすいみたいだな……」

 

「そういうのも分かるんだ」

 

「そこから、相手の戦闘スタイルを判断するのに重宝した」

 

と大人組が会話していると、ユミナが

 

「え、えっと。今度から、協力することになりました! よろしくお願いします!」

 

とヴィヴィオ達に頭を下げた。それを聞いたヴィヴィオが、ユミナの手を握り

 

「アンクレイブさん、一緒に頑張りましょう!」

 

「それじゃあ、乾杯しましょう!」

 

リオに引っ張られて、ユミナは手にカップを持った。その両隣に剣士朗とアインハルトが立った。それを確認したヴィヴィオが

 

「それじゃあ、チームナカジマ! 精一杯頑張りましょう!」

 

『おー!!』

 

ヴィヴィオの音頭の後に、五人はカップを掲げた。それを見て、ユーノが

 

「青春だねぇ」

 

と呟き、大人組は頷いた。

こうして、チームナカジマは新しいメンバーを迎えた。


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