魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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開幕

特訓開始から、数日後。

 

「だけど、コーチっていうのも、なかなか大変だね。トレーニングメニュー作りに、食事や休息の指導までするんだ」

 

「まーなー」

 

お茶を注いだディエチは、膨大な資料を見ながらメニュー作りに励んでいるノーヴェの前にカップを置いた。

 

「なにせ子供だからな。体に負担を与えて壊したら元も子もねぇ。健全な成長を邪魔しねぇように、なおかつ技術と根性はつくように、だ」

 

「なるほどね……うん、じゃあ私も手伝うね。差し入れとか」

 

「ありがとうな」

 

ノーヴェは感謝しながら、ディエチが淹れたコーヒーを飲んだ。すると、ノーヴェの後ろに居たウェンディがノーヴェに抱き付き

 

「アタシも手伝うッス!」

 

と宣言した。だがノーヴェは、そんなウェンディの頭を押さえて

 

「お前はいい、邪魔になる」

 

とにべもない。

 

「酷いッス!?」

 

「ノーヴェ、大丈夫。私がちゃんと見張るから」

 

「アタシの扱いの改善を要求するッスー!」

 

『却下、普段を省みなさい』

 

「なんでぇぇぇぇぇ」

 

二人の言葉に、ウェンディは両手両膝を突いた。そこに

 

「ウェンディ、五月蝿い!!」

 

「ぎゃふん!?」

 

ギンガが投げたフライパンが直撃し、ウェンディは沈黙したのだった。

更に数日後、ミッド空港にて

 

「さあて、お久しぶりのミッドチルダ! 暴れますよー!!」

 

ルーテシアが大会に参加するために、ミッドに来ていた。その迎えに来たのは、ウェンディとセインの二人だ。

 

「でもその前に、お世話になってる人への挨拶回りね」

 

「さすがルーお嬢様。しっかりしてるッスね!」

 

「んじゃ、車に乗ってー」

 

ルーテシアはセインの言葉を聞いて、セインの車の後部に荷物を乗せた。そして、翌日。地区予選当日。

 

「うわぁ……凄い人数……これ、全員参加者なんだ……」

 

「うー! 緊張してきたぁ!!」

 

ヴィヴィオ達は、地区予選が行われるドームに来ていた。もう少ししたら、大会開幕の宣言が始まるだろう。

 

「迷子にならないようにねぇ?」

 

「選手は、あっちから並ぶだとよ」

 

ディエチとノーヴェがそう言うと、ヴィヴィオとリオが他の選手が集まってる場所を見た。そこに

 

「ノーヴェ」

 

「旦那」

 

ザフィーラが現れた。

 

「いよいよ、予選も始まりだな」

 

「ああ、ホントに」

 

「ザフィーラ、ひさしぶり!」

 

ザフィーラに気付き、ヴィヴィオはザフィーラに近付いた。

 

「ああ、ちょうどいい。ミウラをちゃんと紹介したことはなかったな……ミウラ!」

 

「あ、はい!」

 

ザフィーラに呼ばれ、近くの席で荷物を確認していたミウラが駆けてきて

 

「あ! ヴィヴィオさん、ですよね? はじめまして、ミウラ・リナルディです!」

 

「はじめまして! お噂はかねがね!」

 

「本当ですか? ありがとうございます! ずっとお会いしたかったんです! ヴィヴィオさん、わたしの兄弟子の当たる方ですから!」

 

「いえいえいえ、ミウラさんのほうが年上ですし! わたしは、ザフィーラに教えてもらってたのも、ほんのちょっとだけですから」

 

そこから、ミウラとヴィヴィオが楽しそうに会話を始めた。それを見ていたザフィーラとノーヴェは

 

「うちのも大概だが、ミウラもテンション高いねぇ」

 

「ミウラも大きな大会は初めてだからな。まあ、いざ試合が始まったら緊張でガチガチに固まるだろうから、こうやってほぐしておかないとな」

 

「あ、そういうタイプか」

 

とコーチの視点で会話していた。そしてノーヴェは、はしゃいでいるリオと歩いてきているコロナ、アインハルト、剣士郎を見てから

 

「うちのは、全体的にはしゃぎ過ぎでねぇ。まあ、楽しんでるのはなによりなんだけど」

 

と肩を竦めた。

 

「覇王の子は落ち着いてるじゃないか」

 

ザフィーラはそう言いながら、平然とした様子で歩いているアインハルトを見た。

 

「ああ、アレ?」

 

とノーヴェが視線を向けた時。

 

「おい、アインハルト」

 

「え。ぶっ!?」

 

なんと、アインハルトは柱にぶつかった。

 

「アインハルトさんっ!?」

 

コロナはまさかアインハルトが柱にぶつかると思っておらず、驚いていた。

 

「表に出ないだけで、緊張はしてるんだよ。強さとこの手の舞台慣れは、また別物なんだよなぁ」

 

「よくわかる」

 

まさに実演があったからか、ザフィーラは腕組みしながら頷いていた。そしてノーヴェは、アインハルトに手を伸ばしているコロナと剣士郎を見て

 

「うちで落ち着いてるのは、コロナと剣士郎の二人だな。この手の度胸は、あの二人だろうな」

 

と言った。その時、スピーカーで

 

『参加選手の方々は、中央に集まって並んでください』

 

と放送があった。それに従い、参加選手達は中央に整列。それを確認したからか、スタッフが

 

『それでは、昨年度都市本選ベスト10選手、エルス・タスミン選手に、激励の挨拶をお願いしたいと思います』

 

と言って、檀上に上がったエルスに、マイクを渡した。

 

『エルス・タスミンです。年に一度のインターミドル。皆さん、練習の成果を十分に出して、全力で試合に臨んでいきましょう。私も頑張ります! みんなも、全力で頑張りましょう! えいえい!』

 

『おーーーーーー!!』

 

最後の掛け声に合わせて、選手達も気合いの声を上げながら拳を突き上げた。

こうして、大会は開幕した。


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