新暦79年度、第27回インターミドルチャンピオンシップ。参加申請締め切り日から、数日後。ベルカ自治区外れ。
ダールグリュン邸。そこには、古代ベルカからその血を(ほんの僅かに)引く一家。ダールグリュン家が住んでおり、その一室で一人の少女。DSAAに於いて雷帝の二つ名を与えられた少女、ヴィクトーリア・ダールグリュン。愛称ヴィクターが一人で特訓していた。
そこに、専属の執事、エドガーが入室し
「お嬢様。大会委員会から、大会の出場枠通知が参りましたよ」
と伝えた。しかしヴィクターは、特訓を続行しながら
「開けてちょうだい」
と告げた。
「そう仰ると思って、既に開封を。お嬢様は地区予選6組。エリートシード第1枠ですよ」
「そう……ジークは出てる? それから、あの不良娘は何組?」
問い掛けながらヴィクターは、ようやく特訓を終えたらしく器具から離れた。それを見たエドガーは、持っていたタオルと飲料水の入ったボトルを手渡し
「ジークリンデ様は、去年途中欠場されていますからね。エクストラシードは無くなっていますが、それでも予選1組の第1枠です」
と説明した。それを聞いたヴィクターは、安堵した表情で
「そう。今年もちゃんと出るならいいのよ。あの子はあの子で、色々心配だったから」
と告げた。そこまで聞いたエドガーは、ヴィクターに見えやすいように、トーナメント表を掲げながら
「ハリー選手は、予選5組第1枠ですね」
とヴィクターが言った不良娘の位置を、指差した。
「よぉし! ちゃんと出てるのね! あのポンコツ不良娘との決着は、都市本戦でつけるわよ!」
エドガーの指先を見たヴィクターは、お嬢様らしからぬ声を挙げてから意気込んだ。それを聞いたエドガーは、ニコニコと笑みを浮かべながら
「勝ち抜いていかないといけませんねぇー」
と軽く受け流した。
ヴィクトーリア・ダールグリュン(17)
スタイル 雷帝式
希少技能 神雷
魔法 古代ベルカ・ダールグリュン式
DSAA参加履歴5回
最高戦績 都市本戦準決勝(3位入賞)
ミッド市街、ハリー・トライベッカ宅。
「リーダー、流石っす! 今年は第5組の第1枠っすよ!」
「凄くもねぇよ……それは、去年の順位で決まることだ」
後頭部で纏めた黒髪に小さなサングラスを着けた少女、ルカを背に乗せながら腕立て伏せをしている人物。
「あ、あのお嬢様は第6組の第1枠っすね」
「あ、バカ!?」
リンダの呟きを聞いた高い身長に、長い黒髪が特徴の少女、ミアがまるで失言を諌めるように声を漏らした。ハリーだが、喜怒哀楽が出やすい性格であり、些細な切っ掛けで泣いたりする。そして昨年のDSAAでハリーは、ヴィクターと当たり負けている。ミアはリンダの言葉でハリーが泣くと思ったのだ。
しかしハリーは、泣かずに
「……今年こそは勝つ……あんなズルズルの泥沼の末の敗北じゃなく、きっちりとな!」
と気合いの声を挙げながら、腕立て伏せを続行。それを見た三人は、顔を見合わせて
「やっぱ、リーダーはカッコいいわ」
「ホントホント」
「だよな」
と納得した様子で、頷いていた。
ハリー・トライベッカ(15)
市立学校高等科二年生
スタイル 我流魔導戦
スキル 近接射砲撃戦
魔法 ミッド式
参加履歴 3回
最高戦績 都市本戦5位入賞
ミッド市街地、公園の一角
「あ、居た居た」
「ん? ディエチ?」
ノーヴェ、オットー、ディードの三人が何やら会話していると、そこに籠を持ったディエチが現れた。
「どうしたんだ?」
「差し入れと……これを持ってきたの。早く見たいだろうからね」
ノーヴェが問い掛けると、ディエチは籠を掲げた後に懐から一通の便箋を取り出した。大きく、DSAA運営委員会と書かれてある。それを見たノーヴェは、溜め息混じりで
「んな、急がなくてもよかったのに」
と言って、ディエチから受け取った便箋を開けて、中からトーナメント表を見た。
『…………え』
トーナメント表を見た四人は、揃って驚いた。そこに
「ゴール!」
「リオ、ズルい!」
とヴィヴィオ達が、走ってきた。
「……元気だね」
「疲労抜きのスロージョグだって言ったのに……」
走ってきたヴィヴィオ達を見て、ディエチは呆然と。ノーヴェは額に手を当てて、呆れていた。
「そんなわけで、特訓を続けてもう一ヶ月。いよいよ、地区予選の始まりだ」
「あの、緋村先輩は……」
剣士郎が居ないことを不思議に思ったらしく、コロナが手を挙げた。すると、ディエチが
「剣士郎君なら、今はミカヤさんの所だよ」
と説明した。その頃、ミッド南部、天瞳流抜刀術、第4道場。
そこで師範代を勤めるのが、ミカヤ・シェベルである。
「まさか……師範から聞いていたあの飛天御剣流の使い手と出会うとはな……」
ミカヤはそう言いながら、剣士郎を見た。
「天瞳流抜刀術の始まりは、古代ベルカの時に見た飛天御剣流だったと聞く……隙の無い二段構えの抜刀術……まさか、この目で見れる機会に恵まれるなんてな……人斬り抜刀斉とは、抜刀術を極めたが故に与えられた二つ名と聞いている……さあ、私にその腕前を見せてくれ」
「……飛天御剣流、緋村剣士郎……行きます」
同じ抜刀術の使い手同士が、今邂逅した。
ミカヤ・シェベル(18)
天瞳流抜刀術 師範代
スタイル 抜刀居合
魔法 近代ベルカ
参加履歴 7回
最高戦績 都市本戦3位入賞
高町・S・ヴィヴィオ(10)
スタイル ストライクアーツ
スキル カウンターヒッター
魔法 近代ベルカ&ミッドハイブリット
コロナ・ティミル(10)
スタイル ゴーレム創成
スキル ゴーレム操作
魔法ミッド式
リオ・ウェズリー(10)
スタイル 春光拳&ストライクアーツ
希少スキル 炎雷変換資質
魔法 近代ベルカ
ルーテシア・アルピーノ(14)
スタイル 純魔導戦
スキル 召喚・治癒
魔法 ミッド&ベルカハイブリット
アインハルト・ストラトス(12)
スタイル 覇王流
スキル 断空
魔法 真正古代ベル
緋村剣士郎(12)
スタイル 飛天御剣流
スキル 抜刀術
魔法 真正古代ベルカ