魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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間に合わなかった、ごめんなさい


閑話 クリスマス

クリスマス。それは、地球のある聖人を奉る日がお祭りとなった日であり、地球の文化が多数入ってきているミッドでも、イベントと化している。

街路樹は様々なイルミネーションが施され、その街中をカップル達が練り歩く。その中を、一人の女性が歩いていた。

流れる金髪に、黒を基調とした服、掛け値なしの美女。フェイトだ。

フェイトの足取りは軽く、その表情からも今を楽しんでいることが伺える。

 

(久し振りに、休暇が取れたし……それに、冬也に出会える♪)

 

時空管理局執務官のフェイトは、執務官として非常に多忙である。それは、執務官の人数が少ないのも起因しているが、今は割愛する。

そんなフェイトは、実に2ヶ月振りに休暇が取れ、しかも旦那たる冬也も同じく2ヶ月振りに休暇が取れて、今日会うことになっている。

それが嬉しいから、御機嫌に歩いているのだ。

娘のアリシアは、今日は親友のなのはに預けており、心配することは無い。

 

(えっと、この先の公園で待ち合わせ……あ)

 

曲がり角を曲がった先の一つの少し大きめの公園、そこに、冬也は居た。フェイトと同じく黒を基調とした服を着ており、最近よく掛けるようになったメガネを掛けてベンチに腰掛けながら、本を読んでいた。

それが凄く様になっていて、フェイトは思わず見惚れて固まった。しかし、すぐに気を持ち直すと一歩足を踏み出した。すると冬也も気づいたらしく、本に栞を挟んでからメガネを外して懐にしまい、立ち上がって

 

「フェイト」

 

と手を振ってきた。

 

「冬也」

 

「行こうか」

 

「うんっ」

 

冬也が手を差し出すと、フェイトはその手を握った。クリスマスという日は、まだ始まったばかりだ。休日を楽しもう。フェイトはそう思った。

二人は歩き始めると、まずはあるショッピングモールに向かった。

 

「冬也、新しく服を買おうか」

 

「ふむ……そうだな、そうしよう」

 

フェイトの言葉を聞いた冬也は、少し悩んだ後に肯定するように頷いた。そして、ある服屋に入ると、二人は数着身繕い、試着。その中から、互いに似合うのを見付けると、それを購入した。

その後、近くのレストランに入ると、少し遅めの朝食を採ることにした。

雰囲気が地球の翆屋に少し似ていて、フェイトとしては少し懐かしいように思えた。

 

(最後に行ったのは……六課の出張の時か……また行きたいな)

 

もう約一年以上行っていないなのはの実家が営む、喫茶翆屋。近い内に行こうとフェイトは決めた。

朝食を終えた後、二人はまた街を歩き始めた。そこからは少し目的もなく歩き、ペットショップ、インテリアショップと巡って行った。近い内にペットを飼いたいという風に話し合い、インテリアショップでは新しくアリシア用の椅子でもと寄ったのだ。

ペットは現在考えてる最中で、椅子の方は見つけたものを配送してもらうように手配した。

それが終わると、二人はまた街中に繰り出すが

 

「すまんが、フェイト。俺に着いてきてくれるか?」

 

と冬也が首を傾げた。フェイトからしたら断る理由が無かったので、二つ返事で了承。フェイトは冬也の後に着いていった。そうして向かった先は、バス停。それもミッドの郊外に向かうバスのものだ。

 

「冬也、どこに行くの?」

 

「なにな……偶然見つけた場所でな」

 

フェイトの問い掛けに、冬也はそうぼかして言うだけで、明確には言わなかった。そして、バスに乗ってから十数分後。

 

「ここだ」

 

「ここは……水族館?」

 

降りたすぐ先に見えたのは、真新しい水族館だった。

 

「ああ……スバルから教えられてな……約2ヶ月程前にオープンしたばかりらしい」

 

「なるほど」

 

スバルが知った理由だが、スバルの所属する特別救助隊は大きな施設が出来た場合は、そこの防災設備がちゃんとしているか、どういった防災設備なのかを把握するために視察するのだ。そして、その水族館を知ったスバルは、その水族館のことを冬也に教えていたのだ。たまには、二人で行ってくださいと。

さらに、スバルは少し前に偶然にもその水族館のペアチケットを入手したのだが、予定が合わないために冬也に譲っていた。その好意に甘えて、冬也はその水族館。

セレスミュージアムに来たのだ。

 

「わあ……綺麗……」

 

「そうだな」

 

水族館だから当たり前だが、大小様々なサイズの水槽に、何百という種類の海の生き物が、優雅に泳いでいる。その水槽の中を見て、フェイトは素直に感嘆の言葉を漏らし、冬也は同意していた。

その時、スピーカーから

 

『只今より、外の第三水槽により、イルカ、オットセイ、シャチのショーを行います! 御覧になる御客様は、是非ご来場くださいませ』

 

と聞こえてきた。それを聞いた二人は、その水槽に向かった。すでにそこには、大多数の客が来ていて、ほぼ満席状態だったが、最上段の通路近くに二人で座れる場所が残っていたので、そこに着席した。

その直後、ショーが始まった。

 

「わあ……!」

 

「ほう」

 

ステージを滑って現れた二頭のオットセイに、水槽の中から現れた二頭のイルカと一頭のシャチ。そこに、ステージ下から現れるスタッフ。

 

『皆様、ようこそお越しくださいました! 只今より、当水族館の愉快な仲間達によるショーを披露します! 最後まで、ごゆっくりと御覧くださいませ!』

 

スタッフがそう言って頭を下げると、五頭も揃って頭を下げた。そこから、見事なショーが始まった。二頭のオットセイによる、キャッチボール。空中に次々と出される魔力の輪を、次々とくぐる二頭のイルカ。

シャチによるリフティングとスタッフと連携しての水上ショー。

それらを次々とこなしていく。

 

「イルカとシャチは頭が良いって聞くけど、オットセイもなんだね」

 

「そのようだな。きちんとスタッフの合図に従って動いている」

 

二人は五頭の頭の良さに驚きつつ、ショーを最後まで見た。その後、ふれあいスペースで亀を触ったりしながら、ゆっくりと過ごした。

そして夕方、セレスミュージアムから出てバスに乗り、帰路に付いた。そうして自宅の前で待っていたなのはから寝ていたアリシアを受け取り、家に入った。

そして、アリシアをベッドに寝かせると

 

「フェイト」

 

「なに?」

 

呼ばれたフェイトが振り向くと、冬也はフェイトの手を持ち上げて

 

「メリークリスマス」

 

と言いながら、一つの小さな箱をその手の上に置いた。

 

「これって……」

 

「クリスマスプレゼントだ……あまり、会えなかったからな」

 

フェイトが驚いている中、冬也はその箱の蓋を開けた。中には、ふたつのペンダントがある。片方は蒼く、もう片方は朱い。

 

「なんでも、ふたつで一つのペンダントらしくてな……フェイト、後ろを向け」

 

「う、うん」

 

フェイトが背中を向けると、冬也は朱いペンダントを首に掛けた。

 

「フェイトの眼が、綺麗な赤だからな……似合うと思って買った……」

 

「ありがとう、冬也……」

 

冬也の言葉に、フェイトは眼を潤ませながら感謝の言葉を述べた。そして入れ替わる形で、今度は冬也の首に蒼いペンダントをフェイトが着けた。

 

「蒼は、冬也が好きな色だよね。黒と並んで」

 

「ああ……落ち着く色だ……」

 

フェイトの言葉に、冬也は同意するように頷いた。

 

「改めて、今日はありがとうね、冬也」

 

「ああ……」

 

フェイトは幸せそうな表情をしながら冬也に抱き付き、冬也もフェイトを抱き締めた。

こうして、クリスマスは過ぎていった。


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