一番最初に接敵したのは、裕也と剣士郎だった。
「さて……」
「参る……」
裕也が剣士郎を視認した直後、裕也は目を見開いた。剣士郎が消えた。否、消えたと誤認するほどの速度で動いたのだ。
だが裕也は、勘の域で刀を上に振り上げた。その直後、激しい金属音が鳴り響いた。
「飛天御剣流、龍墜閃……」
「速い……!」
驚きながらも裕也は、剣士郎の刀を弾いた。しかし剣士郎は、そこから
「飛天御剣流、龍巻閃・凩!」
「縱回転!?」
剣士郎は弾かれた勢いを利用し、縱回転の一撃を放った。その一撃で弾き飛ばされて、裕也はビルに激突した。
裕也LIFE3000→残LIFE2500
「なんという腕だ……まるで、戦争経験者だ……そうか……」
裕也は何かに気付いたのか、一気に剣士郎に突撃。刀を突き出した。が、その一撃を剣士郎は軽くいなして
「飛天御剣流、龍巻閃!」
自分の体をまるで独楽のように回転させて、裕也の首を狙って一撃を放った。その一撃を裕也は、前転するように回避し立ち上がった。
「やはりか……その剣は……戦乱を知っているか……その目も……」
「……」
裕也が指摘したのは、剣士郎の目だった。剣士郎の目は、光が感じられなかった。その目は、少し前の裕也や昔の冬也と同じだった。
戦いを駆け抜けて、希望を無くした目。
「……先祖から受け継いだ技だけでなく、記憶……それが、その目と気配を可能としているか……」
「行くぞ……!」
その宣言の直後、剣士郎の姿は裕也に肉薄していた。
ほぼ同時刻、ヴィヴィオとアインハルトも接敵。交戦を開始した。
「行きますよ、アインハルトさん!」
「お手合わせ願います」
(私とアインハルトさんの戦績は、2戦2敗……だけど、今度は魔法アリなら!)
今までは魔法を使えなかったヴィヴィオは、今回は魔法も使える。今回は肉薄してみせる。そう意気込んだヴィヴィオは
「はっ!」
まずは、右ストレートを繰り出してアインハルトの意識を割こうとした。だがアインハルトは、その一撃は軽く受け流し
「ふっ!」
ヴィヴィオの腹部を狙い、膝蹴りを繰り出した。だがその一撃に、ヴィヴィオは即座に反応。左手を膝に当てて防ぎつつ、素早く後退。
「ロック!」
アインハルトを狙い、バインドを発動した。しかし、アインハルトはそのバインドを跳躍して回避。
近くのビルに着地、それを狙い
「セイクリッド……バスター!」
ヴィヴィオは、速射砲を放った。
(速射砲!?)
辛うじて直撃を回避したアインハルトだったが、無傷ではなかった。
アインハルトLIFE3000→残LIFE2700
(よし、追撃!)
その隙を逃さず、ヴィヴィオは誘導弾を布陣させた。
それを見たアインハルトは、構えた。
「覇王流……」
(よし、防御にしろ回避にしろ、隙が生まれる!)
そう思ったヴィヴィオは、その誘導弾を一気に放った。
「エセリアルシフト……ファイア!!」
多数の誘導弾がアインハルトに迫るが、アインハルトは慌てずに
「覇王流……」
なんと、
「いぃっ!?」
まさか受け止められるとは思わず、ヴィヴィオは驚いた。しかし、既にヴィヴィオはアインハルトに向けて駆け出していた。
(まさか、この技は!?)
「旋衝破!」
ヴィヴィオが気付いた直後、アインハルトは受け止めていた誘導弾をヴィヴィオに投げた。
(反射技!?)
その誘導弾には耐えたヴィヴィオだったが、その隙に肉薄し拳を振り下ろした。
場所は変わり、観戦していたセインとメガーヌ達。
「うおお!? 今のは何!?」
「
困惑するセインにメガーヌはそう説明するが、内心では
(けど、あんな技を可能にするなんて……どれ程苛烈な修練をしたの……)
とゾッとしていた。
その時、アインハルトが苦しそうにして、バリアジャケットの右肩辺りが弾けた。
「うぇ!? 何が!?」
「あら、気付かなかった? さっき、アインハルトちゃんが拳を振り下ろした時、ヴィヴィオちゃんのカウンターの拳が当たってたのよ? 当たり所が違ったら、アインハルトちゃんも倒れてたわ」
メガーヌはそう説明しながら、アインハルトが拳を振り下ろした場面をスロー再生した。確かに、ヴィヴィオの拳が右肩に当たっていた。
すると、メガーヌが
「そういえば、帰らなくていいの?」
「お昼作ったら帰る!」
メガーヌの問い掛けに、セインはそう答えた。
場面を戻して、アインハルトとヴィヴィオ
(やはり、薄々分かっていましたが……ヴィヴィオさんは、
アインハルト残LIFE2400
アインハルトはヴィヴィオの戦闘スタイルに気付き、そしてヴィヴィオは
(凄い! まさか、あんな技が有るなんて!)
と興奮しながらも、更にアインハルトと戦おうとした。
そこに
『はい、ヴィヴィオ。一回後退して』
とルーテシアから、後退指示が出された。
「えー!?」
『残LIFE300しかないのに、追撃はしない! スリートップの一人が欠けたら、戦略上大変だから!』
「はーい!」
ルーテシアの指摘を受けて、ヴィヴィオはルーテシアの位置まで戻ることにした。そのヴィヴィオを追撃しようとしたが、通信ウインドウが開いて
『アインハルト、なのはさんをお願い。妨害するだけでいいから』
「承りました」
ティアナからの指示を受けて、アインハルトはなのはの方に走り出した。
試合はまだ、始まったばかりである。