魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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和解と馳せる思い

「まったく……ダメだよ、セイン。お風呂場でこういうイタズラしちゃぁ。怪我したら大変なんだからね?」

 

「女の子同士でも、セクハラは犯罪なんだからね?」

 

と石畳に正座させたセインに注意しているのは、スバルとティアナである。

その三人を中心にして、女湯に入っていた全員が集まっている。

 

「私が営業妨害で訴えても、捕まるよ?」

 

「うぐっ……」

 

「こんなんがアタシより年上かと思うと、涙が出そうになるわ……」

 

「うぅっ……」

 

「すいません、セイン姉さん……フォロー出来ません」

 

ルーテシア、ノーヴェ、セッテの三人の言葉に、セインは体を震わせて

 

「うぁーん! アタシだって、怪我しないように配慮したっつーの! これでも聖王教会のシスターだぞ!? それに、皆が楽しそうにしてるのに、アタシだけ荷物を宅配したら帰るだなんて、寂しいじゃかいかよぉ! 自慢じゃないが、アタシはお前達ほど、精神的に大人じゃないんだからな!!」

 

と泣きながら、指を差した。

 

(開き直った……)

 

(本当に自慢じゃねぇよ……)

 

「セイン姉さん……」

 

そんなセインに、ティアナとスバルは内心で軽く驚き、ノーヴェは突っ込みをいれて、セッテは額に手を当てて呆れていた。

すると、キャロがリオを連れて

 

「セイン、リオに謝った方がいいと思うよ?」

 

「あ、そうだった」

 

キャロの言葉で思い出したようで、立ち上がった。

そして

 

「いや、おどかしてごめんな」

 

とリオに頭を下げた。

 

「ああ、いえ! アタシも、思いっきり蹴りを入れてしまって……」

 

リオも咄嗟とはいえ、技を思い出した直撃させたことを謝った。

それを見ながら、アインハルトが

 

「ヴィヴィオさん、あの方は……」

 

とヴィヴィオに問い掛けた。

するとヴィヴィオも、アインハルトが何を聞きたいのか気づいたらしく

 

「あの人は、聖王教会のシスター。ノーヴェのお姉さんに当たるセイン。イタズラ好きだけど優しい人です」

 

とセインのことを軽く教えた。

 

「ねえ、セイン。このことをシスターシャッハとシスターカリムに教えない代わりに、料理作らない? そうすれば、二人に掛け合って、今日は泊まれるようにしてあげるよ?」

 

「マジ!? その位なら、幾らでもやる!」

 

ルーテシアの出した交換条件を聞いて、セインはそう意気込んだ。それを見たノーヴェが

 

「ったく……お嬢は甘いなぁ……」

 

と溜め息混じりに言った。

 

「ふっふっふ。タダで良い料理人をゲットした」

 

そんなノーヴェに、ルーテシアはピースしながら自慢気に胸を張った。

 

「まあ、本当にセインの料理は美味しいからね」

 

「だね」

 

ティアナとスバルはそう話しながら温泉に浸かり、その後に水着を脱いで温泉に浸かったセインが

 

「あ、後でこの温泉貰ってもいい?」

 

とルーテシアに問い掛けた。

 

「その位ならいいけど、どうして?」

 

「ん? 教会で眠ってるイクスの体を拭いてあげようかなって。温泉の雰囲気だけでもね」

 

ルーテシアの問い掛けに、セインは笑みを浮かべながら教えた。

 

「そういやぁ、イクスの護衛は?」

 

「今日は、シャンテがしてる筈だよ」

 

とノーヴェとセインが会話している横で、ティアナが

 

「それにしても、リオも大人モード出来るんだ?」

 

と問い掛けた。

 

「ヴィヴィオやアインハルトさんのとはちょっと方式は違うんですが、一応同系の身体強化魔法なんです。格闘魔法戦用に、自己流で組んでみました」

 

『へー』

 

リオの説明に、話を聞いていた一同は感心の声を漏らした。すると、気になったことがあるらしいスバルが

 

「凄い蹴りだったけど、あれはストライクアーツ?」

 

と問い掛けた。

その問い掛けに、リオは

 

「うちの実家の方の格闘技なんです。子供の頃から習ってて」

 

と話した。

 

「へー」

 

「変換資質あるの? 炎と電気が、両方出てたけど……」

 

「一応、両方です……」

 

『えーーっ!?』

 

「それ、凄い!」

 

キャロの問い掛けにリオが恥ずかしそうに言うと、セイン、スバル、ティアナの三人は驚いた。

まず変換資質自体がレアスキルなのだが、リオは更に稀少な二属性変換資質保持者だった。

確率としては、約10万人に一人という確率らしい。

 

「リオさんも、凄いんですね……」

 

「変換資質は知ってましたが、大人モードは初めて見ました」

 

アインハルトの呟きに、ヴィヴィオは同意したように話した。すると、コロナが

 

「リオね、ヴィヴィオとアインハルトさんに触発されて、頑張って完成させたんだって。本当は、明日の練習会で見せて、びっくりさせる予定だったみたいだけど」

 

「いや、十分びっくりしたした!」

 

コロナの説明を聞いて、ヴィヴィオはそう言いながら思わず手を左右に振った。

すると、アインハルトが

 

「練習会……?」

 

とコロナの言った練習会という言葉に、あることを思い出した。

 

(そうだ。たしか、日程表に……)

 

それは、次元航行船で聞いた話。

 

「そうです、練習会! オフトレツアー二日目恒例行事! 大人も子供も皆混ざっての、陸戦試合(エキシビション)!!」

 

「なになに、明日の話ー?」

 

「そー!」

 

ヴィヴィオの声が聞こえたらしく、リオが近寄ってきた。

 

「あたしは初体験だから、すっごい楽しみ!」

 

「前回凄かったんだよ、八神司令達が大活躍!」

 

「今回はちょっと人数が少ないから、1on1の機会が増えそうだねー」

 

「チーム分け、どうなるのかな?」

 

「うーん、燃えてきたー!!」

 

リオ、コロナ、ヴィヴィオの三人が楽しそうに会話していると、アインハルトが

 

「試合で戦うんですか……? 皆さんや、ヴィヴィオさんのご両親達と」

 

と問い掛けた。

 

「はい! 二組に分かれてのチームバトルで、相手チームを全滅させるまでの勝負です」

 

「大人チームは最大出力に制限が付きますが、それ以外は全力です」

 

「純粋に、戦技と戦術の勝負です」

 

ヴィヴィオとコロナが交互に説明すると、アインハルトの脳裏に大人組の練習光景が甦り

 

(あの凄い人達と、闘える!)

 

と興奮した、

 

(あの人達に、覇王(わたし)の拳は届くのかな……いや違う、届かせるんだ! どんな相手にだって、私と彼の覇王流を)

 

アインハルトはそう意気込むと、拳を握り締めた。

そこに、ヴィヴィオ達が

 

「組み合わせはまだ分かりませんが、敵チームになっても負けませんよ!」

 

「あたしもです!」

 

「あたしもー!」

 

と宣言した。それに対して、アインハルトも

 

「望むところです」

 

と拳を掲げた。

その頃、訓練場ではフェイト、冬也、なのは、ユーノの四人が集まっていて

 

「これが、明日の組み合わせ?」

 

「うん、ノーヴェが作ってくれたの」

 

「ふむ、綺麗に割り振っているな。同ポジションか近ポジションの接戦になるな」

 

「だね」

 

青チーム

フルバック ルーテシア

センターガード なのは

ウィングバック ユーノ

ガードウィング エリオ リオ レンヤ

フロントアタッカー スバル ヴィヴィオ 剣士郎

 

赤チーム

フルバック キャロ

センターガード ティアナ

ウィングバック コロナ

ガードウィング フェイト 冬也 セッテ

フロントアタッカー ノーヴェ アインハルト 裕也

 

「負けないよ、なのは」

 

「私だって!」

 

振り分け表を見たフェイトとなのはは意気込み、冬也はユーノと何らかの確認をしていた。

その頃、ホテルアルピーノのキッチンでは

 

「ごめんね、エリオ君、剣士郎君。手伝ってもらっちゃって」

 

「いえ、女の子達はお風呂長いですから」

 

「この量を一人で作るのは、厳しいですよ」

 

料理をしていたメガーヌの手伝いを、エリオと剣士郎がしていたのだった。


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