魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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一日目 前半

「いっちばーん!!」

 

「あ、リオずるーい!!」

 

「待ってよー!」

 

と初等部三人娘が川に飛び込む中、アインハルトが

 

「あの、ノーヴェさん……私も訓練に行きたいんですが……」

 

と小声で、ノーヴェに言った。

だが、ノーヴェは

 

「いいから、行ってこい。それに、あいつらの水遊びは結構ハードだぞ?」

 

と言って、アインハルトを送り出した。

 

「アインハルトさーん!」

 

「水、気持ちいいですよー!」

 

ヴィヴィオ達に呼ばれたこともあり、アインハルトは水着の上に羽織っていたパーカーを脱いだ。

その時、ようやく剣士朗とディエチが来た。

剣士朗は普通のトランクスタイプの水着を履いていて、上には長袖タイプのTシャツを着ている。

そしてディエチは、水色を基調としたビキニで腰にパレオを巻いている。

 

「お、ディエチに剣士朗か。お前らも泳いできたらどうだ?」

 

とノーヴェが話している間に、アインハルトがヴィヴィオ達と泳ぎ始めたのだが

 

(あれ?)

 

アインハルトは、ヴィヴィオ達に、追い付けなかった。

 

「ん、気付いたか」

 

「……中々、速いですね」

 

「本当にね」

 

確かにアインハルトの身体能力は高く、総合的に見ればヴィヴィオ達より上だろう。

しかし、そのアインハルトですら水中ではヴィヴィオ達より一歩劣っていた。

そして、泳ぎ疲れたアインハルトが川岸の岩に腰かけて休んでいると

 

「あいつら、週に1度はプールに通って泳いでいてな。しなやかな筋肉が着いてるんだ」

 

とノーヴェが教えた。

 

「私も救助隊に入ってから知ったんだがな、陸上と水中では必要になる動きが全然違くて、その分使う筋肉もまた違う」

 

「なるほど……つまり、経験差ですか……」

 

アインハルトの言葉に頷くと、ノーヴェは遊んでいた三人に

 

「お前ら! 水切りを見せてくれ!」

 

と言った。

 

「はーい!」

 

「……水切り?」

 

三人は揃って片手を挙げて、アインハルトは不思議そうに首を傾げた。

すると、ノーヴェが

 

「まあ、水中用の遊びだが、ついでに打撃力のチェックも出来るんだ」

 

と教えた。

その時、最初にコロナが水中で拳を振るうと、約1.5m程の水柱が出来上がった。

次にヴィヴィオが、約2m程の。最後にリオが、約2.5m程の水柱を作った。

 

「……なるほど、回転させてるのか」

 

と呟いたのは、剣士朗だった。

すると、ヴィヴィオが

 

「アインハルトさんもやってみてくださーい!」

 

とアインハルトを呼んだ。

呼ばれたアインハルトは、川に入ると

 

(水中では、通常の動きは難しい……だから、足から腰、腕へと回転の力を伝えて!)

 

と考えながら、拳を振るった。

すると、約3m程の水柱が出来上がった。

 

「おー!!」

 

「凄い! 3mは行きましたよ!」

 

とヴィヴィオ達は喝采するが、アインハルトの水柱は三人とは違って直ぐに崩れた。

 

「……あれ?」

 

とアインハルトが不思議そうにしていると、ノーヴェがパーカーを脱いで

 

「あー……アインハルトは、最初から早すぎるんだな」

 

と言って、川に入った。

よく見れば、クリスも居る。

 

「いいか、最初はゆっくりから始まって、徐々に加速させながら振り抜くんだ……」

 

ノーヴェはそう説明しながら、分かりやすくするためかゆっくりと足を振り上げた。

そして

 

「んで、あとは一連の動作をやると」

 

ノーヴェの蹴りで、川底が見える程に水柱が出来上がった。

 

「さ、やってみ」

 

ノーヴェに促されて、アインハルトは川に入って、先のノーヴェの教えを反芻しながら拳を振るった。

すると、先ほどよりも高い水柱が出来上がった。

 

「おー凄い!」

 

「さっきより高ーい!」

 

「あ、あの、ノーヴェさん……まだやっても?」

 

「おう、いいぞ。体冷やすなよ」

 

アインハルトにそう言いながら、ノーヴェは川岸の岩に腰かけた。すると、自分の肩の上にクリスが居ることに気づき

 

「ん? お前も、遊んできたらどうだ?」

 

と薦めた。

しかし、クリスがジェスチャーをすると

 

「え? なになに?」

 

「入れ物がぬいぐるみだから、濡れたら飛べなくなる……だって」

 

「あー……お前も、苦労してるんだな」

 

ディエチの翻訳を聞いて、ノーヴェは苦笑いを浮かべながらクリスの頭を撫でた。

そんな最中、剣士朗は眩しそうに四人を見ていた。

その頃、アスレチックフィールドでは

 

「そっか、仲良くやってるみたいで良かったぁ」

 

「ですね」

 

「うむ」

 

なのはの言葉に、スバル、冬也、セッテ、祐也、レンヤが頷いていた。

今しがた、ノーヴェからの通信を聞いたのだ。

しかし、アスレチックフィールドに来ている筈の人数と比べると、半分程しか高台に居ない。

すると、なのは、冬也、スバルの三人が高台から下を見ながら

 

「それで、皆は大丈夫? 休憩時間伸ばそうかぁ?」

 

と問い掛けた。

 

「大丈夫でーす!」

 

「ば、バテてなんて、いないよ……!」

 

ティアナとフェイトがそう返答するが、説得力皆無だった。


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